婚約者の地位? 天才な妹に勝てない私は婚約破棄して自由に生きます

名無しの夜

文字の大きさ
82 / 149
連載

128 メルルの屋敷1

しおりを挟む
 メルルさんのお屋敷はルネラード病院から歩いて十分程の距離にある。周囲をグルリと塀が取り囲んだ木造のお屋敷。石造をベースに建てられたドロテアの屋敷とは全然違うその建物を眺めていると、中からメルルさんが出てきた。

「ドロシーさん。良かった。アリリアナちゃんの話しを聞いて心配してたのよ」
「メルルさん。その、今回はありがとね。黒帝王とシロに続いて、馬車まで置かせてもらって」
「気にしないで。弟も所属しているんだから」

 そういえばメルルさんはレオ君が冒険者になるの反対だったよね。

「今更だけど、レオ君を説得できなくてごめんね」
「そんな、ドロシーさんが謝ることじゃないわ。レオが勝手なのよ」

 そんなことないと思うけど、メルルさんは姉としてレオ君を心配してるんだよね。……な、何て言うべきかな? ううん。ここは余計なことを言わずに話題を変えちゃおう。

「えっと、ア、アリリアナとセンカさんは?」
「二人ならうちで預かってる二頭のところよ」
「あれ? 馬具の購入はまだだよね?」

 あっ、でもあれだけの馬車なら馬具くらいついてくるのかな?

「馬具は馬車と一緒に届いたけど、馬車を引かせるのが目的ではないの」
「? ならどうして二頭の所に?」

 ひょっとしてアリリアナがセンカさんに黒帝王とシロを紹介してるのかな?

「アリリアナちゃん。黒帝王に嫌われてるでしょ? そのこと話してたら突然今から仲良くなってみせるぞって言いだして、今それを実行しているところなの」
「ええっ!?」

 黒帝王に噛みつかれて、慌てふためいていたアリリアナの姿を思い出す。……し、心配だ。

「私は今から二人の所に行くけれど、ドロシーさんはどうする? 疲れていたら無理しないで中で休んでてね」
「ありがとう。でも私も二人の所に行きたいから、ついて行ってもいいかな?」
「勿論よ。こっちよ」

 メルルさんと並んで移動する。アリリアナやセンカさんとは違って、入院している時を除いてメルルさんと二人っきりになることってなかったから、何だか緊張した。

「ふふ」
「ど、どうしたの?」
「ああ、ごめんなさい。ただドロシーさんがうちにいることが嬉しくて。ドロシーさん、アリリアナちゃんやセンカちゃんとはどんどん仲良くなるのに、私とはあまり遊んでくれないでしょ?」
「そ、それは別に遊びたくないわけじゃなくてーー」
「勿論分かっているわ。ごめんなさい、意地悪な言い方して。時間を取れないのは私のせいなのにね」

 アリリアナは同じ部屋で生活しているので当然のように会える。国軍兵士のセンカさんは魔物被害や災害が起こらない限りシフトがキッチリ決まっている上、昼休みが意外と長いので、ランチを一緒にするくらいなら案外簡単だ。でも病院で働いているメルルさんはシフトが不規則な上、お昼休みもセンカさんほどに長いわけではないので、互いの都合を合わせるのが難しい。特に今はリトルデビル事件の被害者の回復に注力してて忙しい時期みたいだし。

「誰のせいとかではないと思うけど、私ももっとメルルさんと遊びたいと思ってるよ」
「本当? 嬉しい。それなら今度、以前約束したお買い物に行かない?」
「行く! 行こうよ。私すっごく楽しみにしてたんだから」
「私もよ」
「えへへ」
「うふふ」

 メルルさんが何気なく交わした約束を覚えていてくれて凄く嬉しい。

「あっ、そうだ。この後、ギルド街にお寿司食べに行くんだけど、メルルさんもどうかな?」
「ごめんなさい。特別に休憩時間を増やしてもらっているだけで、今仕事中なの。だからもうすぐ戻らないといけないの」
「そうなんだ。残念だけど、お仕事なら仕方ないよね」
「ええ。でもドロシーさんには悪いけど、今回ばかりは仕事が入ってて良かったかも」
「え? どうして?」

 メルルさんは自身の頬に片手を当てると、困ったようにため息をついた。

「私、お寿司ってちょっと苦手なの」
「メルルさんも?」
「私もってことはドロシーさんも?」
「うん。美味しいとは思うんだけど、生のお肉ってちょっと苦手で」
「そう、そうなのよ。私も一緒。火を通さないお肉って抵抗あって。魔法使いが食中毒になる可能性は常人に比べれば格段に低いことは分かっているんだけどーー」

「「それとこれとは話が別」」

 思わず言葉がハモってしまった私達は互いの顔を見合わせた。

「あはは」
「ふふ」

 何だろ? この感じ。アリリアナやセンカさんと一緒にいるとすごく楽しいって気持ちになるけど、メルルさんと話しているとすごい安心感がある。考え方が似てるのかな?

 そんなことを考えてるとーー

「本当にいいのか? やけに荒ぶってるぞ」
「だ~いじょうぶ。大丈夫。こっちが心を開けばきっと上手く行くはず。馬だけに」

 そんな、上手いこと言えてるようで全然上手くない言葉が聞こえてきた。

しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」  私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。 「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」  愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。 「――あなたは、この家に要らないのよ」  扇子で私の頬を叩くお母様。  ……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。    消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。