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129 メルルの屋敷2
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メルルさんのお屋敷、その裏庭にアリリアナとセンカさんの二人はいた。
「あっ、ドロシー。お帰り。大丈夫だった?」
「う、うん。私よりもアリリアナの方こそ大丈夫?」
アリリアナの前には黒い巨体を大きく振るわせて、見るからに気が昂っている様子の黒帝王。センカさんが横で手綱を握ってくれているから蹄で地面を叩くだけで済んでるけど、隙あらば今すぐにでもアリリアナに飛びかかりそうだ。
「見ててよ。今から黒帝王とマブダチになっちゃうから」
「えっと無理しない方が……」
マブダチになる前に被害者と加害者になりそうな雰囲気なんだけど。
「アハハ。ありがと。でも心配はご無用な感じ。よし。良いわよセンカ。手綱を離して」
「分かった」
見るからに危なそうなのに、センカさんは割とあっさりと手綱を離した。途端、黒帝王がアリリアナ目指して突撃する。
「大丈夫。私は敵じゃないから。ほら、見て! この無防備。何も怖くない感じでしょ」
無抵抗を示したいのか、アリリアナは迫る巨体を前に両手を広げた。でも黒帝王は突撃のペースを全く緩めない。
「落ち着いて。落ち着いて。怖くない。ほら、全然こわくな……いぃいいいい!?」
あわや激突というところでアリリアナは横に飛んで衝突を回避した。けど黒帝王はすぐに切り返して再度のアタックを試みる。
「ちょっと、もう嫌いを通り越して殺意入ってない?」
「ヒヒーン!」
「わっ、ヤッバ」
そして一人と一頭の追いかけっこが始まった。
「もう、なんでこんな恨まれてる感じなわけ?」
黒帝王から逃げながら大声をあげるアリリアナ。着物姿のセンカさんが腕を組んで不思議そうに小首を傾げた。
「理由が思い当たらないなら、前世でなんかしたんじゃないのか?」
「今の私を見て欲しいんですけど!?」
話している間にも一人と一頭の追いかけっこは続いてる。アリリアナの走る速度はかなり速いけど、相手は魔力種の馬。言わば走りのスペシャリストだ。距離はどんどん縮まり、黒帝王がいよいよアリリアナに追いつく、その寸前ーー
「あらよっと。へへん。残念でした」
風を纏ったアリリアナがヒラリと宙に舞い上がり、そのまま黒帝王の背中に着地。手綱を握った。
「ヒヒーン!!」
黒帝王は無断で己にまたがる不届き者を落とそうと暴れ回る。
「うわっと? ちょっと、レディを乗せてその反応って少しばかし失礼な感じじゃない?」
アリリアナは暴れ馬の上で器用にバランスをとっているけど、黒帝王の動きは激しくて、今にも振り落とされるんじゃないかって、見ててハラハラする。
どうしよう? 私だと上手く止められる自信がない。……そうだ。軍で馬の扱いに慣れているセンカさんなら。
「センカさん。早くアリリアナをーー」
「くっ、楽しそうだ」
「ええっ!?」
羨ましそうに拳を握りしめるセンカさん。楽しそうってあれが? 危なそうにしか見えないんだけど。
「センカちゃんは落ち着いてるように見えて、結構アグレッシブな性格しているから」
「そ、そうなんだ」
アグレッシブって、そう言う問題なのかな? いや、それよりもーー
「ねぇ、アレ、止めた方が良くないかな?」
「そうよね。アリリアナちゃんが怪我したら大変だわ」
メルルさんは一つ頷くと、死闘を繰り広げる一人と一頭に近付いていく。
「メルルさん、危ないよ」
「ありがとうドロシーさん。でも大丈夫よ。……アリリアナちゃん、黒帝王。怪我したら大変だからそのへんで止めときましょう。ねっ?」
「もうちょっと、もうちょっとやらせて。あと少しでマブダチになれそうな感じだから」
この状況でまだ仲良くなることを諦めないアリリアナはやっぱりすごいと思う。……思うんだけど、正直無理じゃないかな?
アリリアナを振り落とそうとしている黒帝王は鬼気迫るものを感じるほどだ。ほんと、何であんなに嫌われてるんだろ?
「急いで仲良くならなくてもアリリアナちゃんならきっと黒帝王とも友達になれるわ。だから今日はここまでにしましょう」
メルルさんの体が魔力で淡く発光する。
「生命の先駆者よ。その手を伸ばして。『ライフハンド』」
途端、地面から太い蔓が飛び出して、それが黒帝王とアリリアナを絡み取り、引き離した。
触媒もなしにいきなり植物を発生させた? ううん。これは……
「フィールドマジック?」
「流石ね、ドロシーさん。これはうちの屋敷だから使える魔法。触媒もなしに植物を生み出すことは私には出来ないけど、調律された土地の中でなら杖や触媒なしでもこんなことが可能なの」
メルルさんが手を振ればアリリアナと黒帝王が離れたところで解放される。
「あ~。ビックリした。メルルの魔法久しぶりに味わった感じ」
「私はメルルの魔法に運ばれるの嫌いじゃないぞ」
「確かに、何か面白い感触のベッドみたいよね。とうっ」
「わわっ!? もう、アリリアナちゃんったら」
アリリアナが地面に引っ込もうとしていた植物へとダイヴしたので、メルルさんが慌てて植物を操り、そんな友達を抱き止めた。そんな一連の流れを見て、
「くっ。着物でさえなければ」
センカさんが悔しそうに拳を握りしめるのだった。
「あっ、ドロシー。お帰り。大丈夫だった?」
「う、うん。私よりもアリリアナの方こそ大丈夫?」
アリリアナの前には黒い巨体を大きく振るわせて、見るからに気が昂っている様子の黒帝王。センカさんが横で手綱を握ってくれているから蹄で地面を叩くだけで済んでるけど、隙あらば今すぐにでもアリリアナに飛びかかりそうだ。
「見ててよ。今から黒帝王とマブダチになっちゃうから」
「えっと無理しない方が……」
マブダチになる前に被害者と加害者になりそうな雰囲気なんだけど。
「アハハ。ありがと。でも心配はご無用な感じ。よし。良いわよセンカ。手綱を離して」
「分かった」
見るからに危なそうなのに、センカさんは割とあっさりと手綱を離した。途端、黒帝王がアリリアナ目指して突撃する。
「大丈夫。私は敵じゃないから。ほら、見て! この無防備。何も怖くない感じでしょ」
無抵抗を示したいのか、アリリアナは迫る巨体を前に両手を広げた。でも黒帝王は突撃のペースを全く緩めない。
「落ち着いて。落ち着いて。怖くない。ほら、全然こわくな……いぃいいいい!?」
あわや激突というところでアリリアナは横に飛んで衝突を回避した。けど黒帝王はすぐに切り返して再度のアタックを試みる。
「ちょっと、もう嫌いを通り越して殺意入ってない?」
「ヒヒーン!」
「わっ、ヤッバ」
そして一人と一頭の追いかけっこが始まった。
「もう、なんでこんな恨まれてる感じなわけ?」
黒帝王から逃げながら大声をあげるアリリアナ。着物姿のセンカさんが腕を組んで不思議そうに小首を傾げた。
「理由が思い当たらないなら、前世でなんかしたんじゃないのか?」
「今の私を見て欲しいんですけど!?」
話している間にも一人と一頭の追いかけっこは続いてる。アリリアナの走る速度はかなり速いけど、相手は魔力種の馬。言わば走りのスペシャリストだ。距離はどんどん縮まり、黒帝王がいよいよアリリアナに追いつく、その寸前ーー
「あらよっと。へへん。残念でした」
風を纏ったアリリアナがヒラリと宙に舞い上がり、そのまま黒帝王の背中に着地。手綱を握った。
「ヒヒーン!!」
黒帝王は無断で己にまたがる不届き者を落とそうと暴れ回る。
「うわっと? ちょっと、レディを乗せてその反応って少しばかし失礼な感じじゃない?」
アリリアナは暴れ馬の上で器用にバランスをとっているけど、黒帝王の動きは激しくて、今にも振り落とされるんじゃないかって、見ててハラハラする。
どうしよう? 私だと上手く止められる自信がない。……そうだ。軍で馬の扱いに慣れているセンカさんなら。
「センカさん。早くアリリアナをーー」
「くっ、楽しそうだ」
「ええっ!?」
羨ましそうに拳を握りしめるセンカさん。楽しそうってあれが? 危なそうにしか見えないんだけど。
「センカちゃんは落ち着いてるように見えて、結構アグレッシブな性格しているから」
「そ、そうなんだ」
アグレッシブって、そう言う問題なのかな? いや、それよりもーー
「ねぇ、アレ、止めた方が良くないかな?」
「そうよね。アリリアナちゃんが怪我したら大変だわ」
メルルさんは一つ頷くと、死闘を繰り広げる一人と一頭に近付いていく。
「メルルさん、危ないよ」
「ありがとうドロシーさん。でも大丈夫よ。……アリリアナちゃん、黒帝王。怪我したら大変だからそのへんで止めときましょう。ねっ?」
「もうちょっと、もうちょっとやらせて。あと少しでマブダチになれそうな感じだから」
この状況でまだ仲良くなることを諦めないアリリアナはやっぱりすごいと思う。……思うんだけど、正直無理じゃないかな?
アリリアナを振り落とそうとしている黒帝王は鬼気迫るものを感じるほどだ。ほんと、何であんなに嫌われてるんだろ?
「急いで仲良くならなくてもアリリアナちゃんならきっと黒帝王とも友達になれるわ。だから今日はここまでにしましょう」
メルルさんの体が魔力で淡く発光する。
「生命の先駆者よ。その手を伸ばして。『ライフハンド』」
途端、地面から太い蔓が飛び出して、それが黒帝王とアリリアナを絡み取り、引き離した。
触媒もなしにいきなり植物を発生させた? ううん。これは……
「フィールドマジック?」
「流石ね、ドロシーさん。これはうちの屋敷だから使える魔法。触媒もなしに植物を生み出すことは私には出来ないけど、調律された土地の中でなら杖や触媒なしでもこんなことが可能なの」
メルルさんが手を振ればアリリアナと黒帝王が離れたところで解放される。
「あ~。ビックリした。メルルの魔法久しぶりに味わった感じ」
「私はメルルの魔法に運ばれるの嫌いじゃないぞ」
「確かに、何か面白い感触のベッドみたいよね。とうっ」
「わわっ!? もう、アリリアナちゃんったら」
アリリアナが地面に引っ込もうとしていた植物へとダイヴしたので、メルルさんが慌てて植物を操り、そんな友達を抱き止めた。そんな一連の流れを見て、
「くっ。着物でさえなければ」
センカさんが悔しそうに拳を握りしめるのだった。
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