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134 決闘
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思ったよりも速いな。
筋肉で膨れ上がった体躯。だが重さを感じさせない、スッとした動きでポットは俺の間合いに入って来た。
「歯を食いしばれぇええ!!」
俺のことを侮っているのかモーションが無駄に大きな右ストレート。……よし、体格差を利用するか。
「何!?」
懐に入り込んだ俺をポットは一瞬見失ったことだろう。奴がこちらを発見するよりも先に魔力を流した両の足で大きく跳躍する。その際、ポットの肩を掴み逆立ちのような形になることで素早く後ろに回り込もうとしたんだがーー
「小癪な!!」
独楽のようにクルリと回転されて奴の肩から手が外れた。同時にポットは空中にいる俺目掛けて裏拳を放ってきたがーー問題ない。横に振われるヤツの腕に空中で手を乗せ、そこを起点に体勢を整えつつも、奴の顎目掛けて蹴りを放つ。
「ぐおっ!?」
巨体が膝をつき、観客が沸いた。
「ルネラード、貴様」
「手加減はいらない。本気で来い」
「……良いだろう。母なる大地よ、我に刃を。『土流槍』」
地面が槍のように鋭く突き出して襲いかかってくる。宙に飛んでそれを回避。そして魔法を放とうと右手に炎を生み出してーー
「っと、いけねぇ」
慌ててそれを消した。打撃なら手加減できるが、炎の魔法だと一歩間違えたら大火傷させてしまう。
「どうした? 臆したか?」
ポットが魔法で作り出した巨大な斧を振るう。狙いは首。確かに本気でこいとは言ったが、こいつ俺を殺す気かよ?
そこではたと気が付く。
「馬鹿か俺は」
身代わり魔法が掛かってるんだった。相手が同級生だから決闘だという実感が薄い。信じられないうっかりだ。斧をかわしながら反省。それと同時に拳を二、三発巨体に叩き込んだ。
「無駄だ」
拳に当たる違和感。これは……砂?
「服の下……いや、中か?」
「その通りだ。私の服は特別性でな。中に魔力を込めた専用の砂を入れている。それが衝撃に応じて凝固し、いかなる攻撃も通さん。そして鍛えた私の肉体。もはや貴様に勝ちはないぞ、ルネラァ~~ドッ!!」
「人の名前を変に伸ばすなよ」
斧の連撃が襲いかかってくるが問題なく躱せる。口には出さないが、本気でやっているのか怪しいレベルだ。このような感覚はいつもあった。例えばどうしても受けなければいけない体術の授業の時などでも、相手をする同級生や指導する先生の動きがひどく緩慢で、やる気がないように感じた。俺はそれを自分と同じように皆本気を出してないだけだと思ってた。授業で力を出して怪我をさせるのが馬鹿らしいから。でも違うのか? 皆、本気でやっているのか? 本気でやって……この程度なのか?
「服が頑丈でも顔が丸出しだぞ」
ポットの攻撃を掻い潜って、何にも覆われていない顔面に拳を叩き込むーー瞬間。服の中から飛びたした砂が奴の顔を守った。いや、それだけではない。
「咄嗟に手を引いたか。良い判断だ。でなければ身代わり人形の手が飛んでいたところだぞ」
「なるほど。攻防一体ってやつか」
鋭利な刃物のように飛び出してきた砂が、ポットの首周りを蛇のように蠢いている。
「貴様、何を笑っている?」
「いや、安心してるんだよ」
戦闘教科では常に上位にいるポット。そうだよな。口煩いやつだが、決して口だけの男ではない。
「本気でやって、問題なさそうだな」
炎を纏った俺を前に、ポットはもう何も言わなかった。そしてーー
砕け散った身代わり人形が戦闘終了の合図を告げる。
盛り上がる闘技場。賭けの結果に大はしゃぎする生徒達をすり抜けてクルスの奴がやってきた。
「まさか本気で勝っちまうとな。治癒使いから、最強の魔法使いに転身か?」
「そんな簡単に最強になれるかよ」
もし俺が最強だったなら、ドロシーさんにあんな怪我させなかったのに。
「せっかく勝ったのに浮かない顔だな」
「いや、どうして倒すよりも治す方が難しいのかと思って」
どうやら俺には戦闘の才能があるみたいだ。心境としては複雑だが、才能があって悪い気はしない。でもどうしてこれが医療関係で発揮されないのか。もしも俺が治癒の天才ならドロシーさんの呪痕を消してみせるのに。
勉強を教えてもらう際、ロンググローブを外した彼女の手、そこに刻まれた痛々しい傷跡を見る度に胸が痛む。
「ったく、最近のお前、マジで意味分かんねーな。それよりも約束の飯だが、お前今日は夜間まで授業入れてるんだろ? だから次の休日あたりにでも奢ってやるよ」
「良いのか? 賭けに負けたんだろ?」
「は? んなわけないだろ。倍率が偏ってたんで大儲けだったぞ」
そう言って、クルスの奴は札束片手にニヤリと笑った。
筋肉で膨れ上がった体躯。だが重さを感じさせない、スッとした動きでポットは俺の間合いに入って来た。
「歯を食いしばれぇええ!!」
俺のことを侮っているのかモーションが無駄に大きな右ストレート。……よし、体格差を利用するか。
「何!?」
懐に入り込んだ俺をポットは一瞬見失ったことだろう。奴がこちらを発見するよりも先に魔力を流した両の足で大きく跳躍する。その際、ポットの肩を掴み逆立ちのような形になることで素早く後ろに回り込もうとしたんだがーー
「小癪な!!」
独楽のようにクルリと回転されて奴の肩から手が外れた。同時にポットは空中にいる俺目掛けて裏拳を放ってきたがーー問題ない。横に振われるヤツの腕に空中で手を乗せ、そこを起点に体勢を整えつつも、奴の顎目掛けて蹴りを放つ。
「ぐおっ!?」
巨体が膝をつき、観客が沸いた。
「ルネラード、貴様」
「手加減はいらない。本気で来い」
「……良いだろう。母なる大地よ、我に刃を。『土流槍』」
地面が槍のように鋭く突き出して襲いかかってくる。宙に飛んでそれを回避。そして魔法を放とうと右手に炎を生み出してーー
「っと、いけねぇ」
慌ててそれを消した。打撃なら手加減できるが、炎の魔法だと一歩間違えたら大火傷させてしまう。
「どうした? 臆したか?」
ポットが魔法で作り出した巨大な斧を振るう。狙いは首。確かに本気でこいとは言ったが、こいつ俺を殺す気かよ?
そこではたと気が付く。
「馬鹿か俺は」
身代わり魔法が掛かってるんだった。相手が同級生だから決闘だという実感が薄い。信じられないうっかりだ。斧をかわしながら反省。それと同時に拳を二、三発巨体に叩き込んだ。
「無駄だ」
拳に当たる違和感。これは……砂?
「服の下……いや、中か?」
「その通りだ。私の服は特別性でな。中に魔力を込めた専用の砂を入れている。それが衝撃に応じて凝固し、いかなる攻撃も通さん。そして鍛えた私の肉体。もはや貴様に勝ちはないぞ、ルネラァ~~ドッ!!」
「人の名前を変に伸ばすなよ」
斧の連撃が襲いかかってくるが問題なく躱せる。口には出さないが、本気でやっているのか怪しいレベルだ。このような感覚はいつもあった。例えばどうしても受けなければいけない体術の授業の時などでも、相手をする同級生や指導する先生の動きがひどく緩慢で、やる気がないように感じた。俺はそれを自分と同じように皆本気を出してないだけだと思ってた。授業で力を出して怪我をさせるのが馬鹿らしいから。でも違うのか? 皆、本気でやっているのか? 本気でやって……この程度なのか?
「服が頑丈でも顔が丸出しだぞ」
ポットの攻撃を掻い潜って、何にも覆われていない顔面に拳を叩き込むーー瞬間。服の中から飛びたした砂が奴の顔を守った。いや、それだけではない。
「咄嗟に手を引いたか。良い判断だ。でなければ身代わり人形の手が飛んでいたところだぞ」
「なるほど。攻防一体ってやつか」
鋭利な刃物のように飛び出してきた砂が、ポットの首周りを蛇のように蠢いている。
「貴様、何を笑っている?」
「いや、安心してるんだよ」
戦闘教科では常に上位にいるポット。そうだよな。口煩いやつだが、決して口だけの男ではない。
「本気でやって、問題なさそうだな」
炎を纏った俺を前に、ポットはもう何も言わなかった。そしてーー
砕け散った身代わり人形が戦闘終了の合図を告げる。
盛り上がる闘技場。賭けの結果に大はしゃぎする生徒達をすり抜けてクルスの奴がやってきた。
「まさか本気で勝っちまうとな。治癒使いから、最強の魔法使いに転身か?」
「そんな簡単に最強になれるかよ」
もし俺が最強だったなら、ドロシーさんにあんな怪我させなかったのに。
「せっかく勝ったのに浮かない顔だな」
「いや、どうして倒すよりも治す方が難しいのかと思って」
どうやら俺には戦闘の才能があるみたいだ。心境としては複雑だが、才能があって悪い気はしない。でもどうしてこれが医療関係で発揮されないのか。もしも俺が治癒の天才ならドロシーさんの呪痕を消してみせるのに。
勉強を教えてもらう際、ロンググローブを外した彼女の手、そこに刻まれた痛々しい傷跡を見る度に胸が痛む。
「ったく、最近のお前、マジで意味分かんねーな。それよりも約束の飯だが、お前今日は夜間まで授業入れてるんだろ? だから次の休日あたりにでも奢ってやるよ」
「良いのか? 賭けに負けたんだろ?」
「は? んなわけないだろ。倍率が偏ってたんで大儲けだったぞ」
そう言って、クルスの奴は札束片手にニヤリと笑った。
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