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135 夜の教室
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すっかり日の落ちた教室に彼女はいた。
「悪い。待ったか?」
「……」
「あの、アリアさん?」
窓から入る風が月光で淡く輝く銀髪を揺らす。彼女は読んでいた本をそっと閉じた。
「……別に」
それだけ言って、彼女は席を立つ。
「え? あの、話があったんじゃあ」
「話?」
「そう。違うのか?」
「一緒に帰ろ」
「うん。……うん? あれ? 用ってそれ?」
「そう。……変?」
「変っていうか……」
貴族街にあるドロテア家と一般区画にあるウチとじゃあ、全然道が違うんだが。そのことを指摘するべきか否か。
アリアさんは悩む俺をジーと見てる。その顔は美しいが何を考えているのか全く分からない。
……まっ、いっか。
「じゃあ帰るか」
コクン、と彼女の首が小さく縦に揺れた。
命の恩人がこんな時間までわざわざ俺を待っていたんだ。少し遠回りするくらいどうってことない。
「そういえば、今日決闘見に来てただろ? アリアさんでも、ああいうのに興味持つんだな」
世俗に関心なさそうなのに。彼女が闘技場に姿を現して驚いたのは俺だけではなかった。
「レオが戦うって聞いたから」
「へ? それって……ど、どういう意味だ?」
「意味?」
いや、そんな不思議そうな顔されても。彼女の行動が突飛なことはドロシーさんに聞いて分かってたが、何だか俺に気があるんじゃないかって誤解してしまいそうだ。
……って、何を考えてるんだ俺は。相手はドロシーさんの妹だぞ。
頭を振ってアホな考えを振り払う。
「いや、何でもないんだ。それよりも帰ろうぜ」
(コクン)
「荷物はあるかね? よければ私が持つよ」
「いや、学校の生徒金庫つかってるから……って、何でお前がいるんだよ!?」
いつの間にか、この世の者とは思えない美貌が一つ増えていた。王冠のように荘厳で美しい金色の髪に、すらりと伸びた長身。
「ガルド・セインクリアテッド」
「こんばんは。鮮烈な炎を宿す少年。今日は良い月夜だね。こんな日は特に私の月が映える。君もそう思わないかな?」
ガルドの指がアリアさんの銀の髪にそっと触れて、しかしすぐに離れた。
「アリアさんはお前のものなんかじゃないだろ。大体どうしてお前がここにいるんだよ」
「ふっ。どうしてなどと。理由など一つしかないだろう」
奴は不敵な笑みを浮かべると、懐から小瓶を取り出した。
「水だが、私の月よ。飲むかね?」
「いい。下がってて」
「仰せの通りに」
頭を下げて一歩下がる聖人。
「って、従者かよ!?」
こいつ、個人としても、組織人としてもこの大陸でトップに君臨してるくせに、何をやってるんだ? アリアさんはアリアさんで当然って顔で命令してるし。
「恋とは不思議だね。彼女の為ならばどんな些細なことでも至上の喜びとなる」
「喜ぶ前に常識を学べよ。この魔法学校は部外者立ち入り禁止だぞ」
「愛の前に越えられない壁はない。そうは思わないかな?」
「いや、法律は越えるなよ。人として」
「ふむ。随分と良識のあることを言う。事前調査の結果とはやや異なるな」
「はぁ? 何だよ、それ。人を危険人物のように言うなよな」
「国でも指折りの名家に剣一本で殴り込めば、危険人物ととられても仕方ないと思うがね」
「なっ!? なんでそれを!?」
公にはされてないはずなのに。
「この機会に聞いておきたいのだが、やはり君は私の夜空……ドロシー•ドロテアを愛してるのかね?」
「は、はぁ!? そんなのお前には関係ないだろ。ってか、ドロシーさんを私のとか言うなよな」
クソッ。なんかこいつと話してると心がざわつく。それに何故かアリアさんがこっちをジーと見てるし。
「すまない。怒らせるつもりはないのだよ。殴り込んだ件も気にする必要はない。あれは魔法使い同士の決闘と言うことで決着がついているからね。それよりも君に一つ頼みがあるのだが、いいかな?」
「頼み? アンタが?」
「そう。君の父上、メデオ•ルネラードに会わせてほしい」
「悪い。待ったか?」
「……」
「あの、アリアさん?」
窓から入る風が月光で淡く輝く銀髪を揺らす。彼女は読んでいた本をそっと閉じた。
「……別に」
それだけ言って、彼女は席を立つ。
「え? あの、話があったんじゃあ」
「話?」
「そう。違うのか?」
「一緒に帰ろ」
「うん。……うん? あれ? 用ってそれ?」
「そう。……変?」
「変っていうか……」
貴族街にあるドロテア家と一般区画にあるウチとじゃあ、全然道が違うんだが。そのことを指摘するべきか否か。
アリアさんは悩む俺をジーと見てる。その顔は美しいが何を考えているのか全く分からない。
……まっ、いっか。
「じゃあ帰るか」
コクン、と彼女の首が小さく縦に揺れた。
命の恩人がこんな時間までわざわざ俺を待っていたんだ。少し遠回りするくらいどうってことない。
「そういえば、今日決闘見に来てただろ? アリアさんでも、ああいうのに興味持つんだな」
世俗に関心なさそうなのに。彼女が闘技場に姿を現して驚いたのは俺だけではなかった。
「レオが戦うって聞いたから」
「へ? それって……ど、どういう意味だ?」
「意味?」
いや、そんな不思議そうな顔されても。彼女の行動が突飛なことはドロシーさんに聞いて分かってたが、何だか俺に気があるんじゃないかって誤解してしまいそうだ。
……って、何を考えてるんだ俺は。相手はドロシーさんの妹だぞ。
頭を振ってアホな考えを振り払う。
「いや、何でもないんだ。それよりも帰ろうぜ」
(コクン)
「荷物はあるかね? よければ私が持つよ」
「いや、学校の生徒金庫つかってるから……って、何でお前がいるんだよ!?」
いつの間にか、この世の者とは思えない美貌が一つ増えていた。王冠のように荘厳で美しい金色の髪に、すらりと伸びた長身。
「ガルド・セインクリアテッド」
「こんばんは。鮮烈な炎を宿す少年。今日は良い月夜だね。こんな日は特に私の月が映える。君もそう思わないかな?」
ガルドの指がアリアさんの銀の髪にそっと触れて、しかしすぐに離れた。
「アリアさんはお前のものなんかじゃないだろ。大体どうしてお前がここにいるんだよ」
「ふっ。どうしてなどと。理由など一つしかないだろう」
奴は不敵な笑みを浮かべると、懐から小瓶を取り出した。
「水だが、私の月よ。飲むかね?」
「いい。下がってて」
「仰せの通りに」
頭を下げて一歩下がる聖人。
「って、従者かよ!?」
こいつ、個人としても、組織人としてもこの大陸でトップに君臨してるくせに、何をやってるんだ? アリアさんはアリアさんで当然って顔で命令してるし。
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「いや、法律は越えるなよ。人として」
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「はぁ? 何だよ、それ。人を危険人物のように言うなよな」
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「は、はぁ!? そんなのお前には関係ないだろ。ってか、ドロシーさんを私のとか言うなよな」
クソッ。なんかこいつと話してると心がざわつく。それに何故かアリアさんがこっちをジーと見てるし。
「すまない。怒らせるつもりはないのだよ。殴り込んだ件も気にする必要はない。あれは魔法使い同士の決闘と言うことで決着がついているからね。それよりも君に一つ頼みがあるのだが、いいかな?」
「頼み? アンタが?」
「そう。君の父上、メデオ•ルネラードに会わせてほしい」
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