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4 強者の確信
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「な、なんだテメーは!?」
テントの中には三人の獣人と、獣人に囲まれた女が一人いた。女の年は多分俺と同じくらい。腰まで伸びた栗色の髪に美人というよりは可愛いと言われそうな顔立ち。衣服は旅人らしく袖の長い上下を着ていたようだが、その内ズボンの方は既に床に転がっていた。
「お前が……あっ、名前聞いてないな。とにかく向こうのテントにいる男の妹か?」
「に、兄さんの知り合いの方、ですか?」
俺の質問に女が大きくパッチリとした瞳を瞬けば、涙が粒となってその頬を伝った。女の手は自身の下着を半分ほど下ろしたところで止まっており、周囲の男達は恥辱に震える女を笑いものにして楽しんでいたようだ。
(悪趣味な。まぁ、そのお陰で未遂ですんだようだがな)
知らない女の貞操で傷付いてやれるほどお人好しではないが、あの男に恩を売るつもりの人間としては、女が無傷でいてくれたことにホッとする。
「おい、こいつ何か変だぞ。他の奴らを呼べ」
三人の中で一番体格の良い獣人がそう言って立ち上がった。だが他の二人は動く気配がない。
(酒でも入っているのか?)
突然現れた不審者を前にやけに重い腰だ。一応兵士なのだからもっと機敏な行動を見せると思っていたのだが、腰を下ろしたままの二人には警戒心の欠片も見えなかった。
(油断? 無手の俺を前に、獣人の自分達なら絶対に負けない自信があるのか?)
だとしたら丁度いい。俺は連中が何かする前に即行で片をつけるつもりだった行動を一時中断する。さっきはスキルを使った背後からの不意打ちだったが、今回は向き合ってからの戦闘ができる。より自分の力を確認しやすいというものだ。
「おい、今から攻撃をしかけるから全力で反撃してみろ」
俺が唯一警戒心を見せる獣人にそう言うと、座ったままの二人の肩が震えだした。
「ぷ、くく。おい、聞いたか? 商人ごときに舐められてんぞ、お前」
「ウルセェ! いいから早く他の連中を連れてこい」
「ビビんなよ情けねぇ。それよりも、この女もうヤッちまおうぜ」
「や、やめて! 触らないでください」
「うるせえ! いつまでもそんなダサいパンツ足に引っかけてないで、早いところ脱げや」
商人の妹の剥き出しの尻やら足やらに獣人の手が伸びる。
(見るからに雑魚そうな二人だし、こいつだけでいいか)
「テメェら、いい加減にしろ! こいつ多分商人じゃーー」
「おい、余所見するな。行くぞ」
「喧しい! 大方護衛の生き残りだろうが、人が下手に出てりゃ調子のんなよ」
俺はちょっと本気で動いてみた。
「はっ!? なっ!? き、消えた!?」
「後ろだ」
「へっ!?」
獣人が振り向いたとき、その首は既に胴と別れていた。
「は?」
「え?」
ポカンとアホ面を見せる二人の獣人にも手刀で切りかかる。俺は確信した。
「よし。やはり吸血鬼の身体能力は獣人らを圧倒的に上回っている」
獣人の中で唯一立ち上がっていた男の首が床に落ちるのに合わて、他の二人の首も床を転がった。
「あ、貴方は?」
「お前の兄と契約したものだ。……もうパンツ穿いていいぞ」
「え? あっ、きゃああああ!? す、すみません。い、いま穿きますね」
女は凄い勢いで膝の辺りまで下りていたパンツを上げると、着ている上着の丈を精一杯伸ばして簡素な白い下着を隠した。
(噴水のように飛び出した血を見ても動じなかったのに、女の基準ってよく分からないな)
俺は地面に落ちている女のズボンを拾ってやった。
「ほら、少し血で汚れたが、その姿でいるよりはマシだろ」
「へ? い、いや違いますよ? 私だってもっと良いパンツもってるんです。でも長旅でそんなの穿いてても仕方ないじゃないですか。だからあえて、あえて丈夫で長持ちするけど何の色気もないパンツを穿いているんです。私だって街とかではもっとちゃんとしたパンツ穿いてますから」
「いや、お前のパンツ事情はどうでもいいからな」
助かった安堵で緊張と共に頭のネジでも緩んだのだろうか? 突然助けた女が語りだすパンツ事情にちょっと引く。天幕の入口が捲れて先程助けた男が飛び込んできた。
「ショーナ。無事か? ショーナ!」
「兄さん」
ヒシリと二人は抱き合った。
「ああ、良かった。すまない、ショーナ。お前を助けてやれなくて」
「いいえ。兄さんは精一杯やってくれました。それに私は大丈夫。こちらのお方に助けて頂きましたから」
兄妹でよく似たブラウンの瞳がこっちを向いた。
「兄さん、こちらの方は? 兄さんと契約したと仰っていましたけど、いつの間にこんな凄い護衛さんを雇われたんですか?」
「それが、実は俺もついさっき助けられただけで、まだ名前も知らないんだ」
商人は妹であるパンツ女を離すと、背筋を伸ばしてから折り目正しく礼をしてきた。
「この度は危ないところをありがとうござ……あ、あの!?」
「まだ終わった訳じゃないだろう。契約内容は獣人の皆殺しだ」
テントの外が騒がしくなってきてる。やはり少しうるさかったか? それとも血の臭いでも察したのだろうか?
「残りを片付けてくる。お前らはここにいろ」
どのみち部隊を率いているナンバーズを倒すには集団戦は避けては通れない。ここらで獣人の集団戦法を体験しておくのも悪くないだろう。
既に俺には三十程度の獣人に負けない自信があった。
「待ってください。私の名前はトラオ・ネーア。妹はショーナ・ネーア。せめて貴方様のお名前をお教しえください」
「…………ロマ・バルトクライ」
背後で二人がバルトクライの名に息を呑むのが分かった。それかどういう意味なのか、考えると皇帝への怒りでキレそうになるので今は考えないことにする。
天幕を出れば丁度武装した獣人が四人程こちらにやって来るところだった。
「おいそこの、止まれ! ここの商人……には見えないが貴様は何者だ?」
「なぁ、テントの中から血の匂いがしないか?」
「ああ、それも俺達獣人の血の匂いだ」
「まさかコイツ……ヒニア法国の騎士か?」
四匹のケダモノ共が殺気立つ。
(ヒニア法国? ……ああ、確かこの大陸で最大の権勢を誇っていた国か)
今はどうか知らないが、俺がいた頃は大陸で最も影響力のある国家だと聞いた。恐らくここまで生物兵器を実用化させておきながらも、帝国が未だに大陸統一を成し遂げていないのもヒニア法国の力なのだろう。
「気をつけろ、もしも本当にヒニア法国の騎士ならばパートナーの魔術師がいるはずだ」
体内の気を操り超人的な身体能力を発揮する騎士。世界に満ちる魔力を操り超常的な現象を起こす魔術師。近接戦闘のスペシャリストと遠距離攻撃のスペシャリスト。騎士に比べて実戦レベルの魔術師が少ないせいで必ずしもというわけではないが、それでも両者を組ませるのはどこの軍部でもやっているセオリー…… だと昔母さんに聞いた。
(まぁ、本当は俺が魔術師なんだがな)
師匠の眷属である俺の身体能力を見た者は俺を騎士と誤解するだろうから、当面は魔術抜きでやってみるか。
(素手で簡単に殺れるんだから、魔術を試すまでもないよな。だとしたら次は……)
「よし、では次の実験に移ろうか」
「あ? 何ぶつぶつ言ってんだ?」
血気盛んな一人の獣人がナイフを投擲してくる。
「次元の壁を越えろ。スキル『影形成・シャドードッグ』
次の瞬間、俺の影が二次元から三次元へと跳躍、三次元に生息する猛犬となって飛来してくるナイフを補食した。
「は? ……は?」
「お、おい。なんだ? あれ?」
自分達も獣のくせして、六メートル近い巨大な影犬を前にビビる獣人達。
(群れてるこいつらを単独で殺せるだけの力をもったシャドードッグは六体が限界か)
一体に与える力を抑えればもっと多くのシャドーを出せるが、腐っても相手は帝国の生物兵器。これ以上影に与える力を抑えると逆に影が負けかねない。
(ひとまずこの六体に獣人を狩らしてみる……あれ? 五体?)
確かに六体作ったはずなのにもう一体が影から出てこない。不思議に思っているとーー
(ぬぎゃ~! だめっス、だめっス! 私はまだ寝ていたいんス。影を剥ぐのは止めるっス)
頭に響く声。どうやら俺の影に潜っているテレステアが影を取られるのを嫌がって抵抗しているようだ。
(影形成を使ってる間は影に入れないからな。一緒に出てくるのを嫌がったのか)
姉弟子が見せる布団を取られるのを嫌がる子供のような姿に頭痛を覚えていると、異変を察知した他の獣人達が次々に集まってきた。
「おい、なんだこれ?」
「テメーら無事か? 状況を説明しやがれ」
「敵だ! 敵が入り込んでるぞ!!」
集まってくる大勢の仲間を前に四人の獣人もすっかり気を持ち直したのか、その顔にセブンを彷彿とさせる下卑た笑みを浮かべる。
「へへ。妙な魔術を使うようだが、群となった俺達獣人に勝てる奴はいねぇ」
「その生意気な面、グチャグチャにしてやるぜ」
「集団戦法に自信ありか。いいだろう、見せてみろ」
息巻く獣人四人にシャドードッグを一匹けしかけてみる。するとーー
「ぬぎゃあああ!? おい、待て! やめーー」
バクン!
何と一噛みで四人とも死んでしまった。
「おいおい、マジかこれ」
(弱すぎる。いや、俺が強いのか?)
始元島には化物が沢山いたので実感しにくかったが、もう間違いないだろう。この大陸において……俺は強者だ。
「クックック……アッハハハ!! 殺してやる! 殺してやるぞ、ナンバーズ!」
俺は形を与えている全ての影に殺戮を命じた。
ケダモノ共の悲鳴が少しの間そこいらで上がって、そして直ぐに静かになった。
テントの中には三人の獣人と、獣人に囲まれた女が一人いた。女の年は多分俺と同じくらい。腰まで伸びた栗色の髪に美人というよりは可愛いと言われそうな顔立ち。衣服は旅人らしく袖の長い上下を着ていたようだが、その内ズボンの方は既に床に転がっていた。
「お前が……あっ、名前聞いてないな。とにかく向こうのテントにいる男の妹か?」
「に、兄さんの知り合いの方、ですか?」
俺の質問に女が大きくパッチリとした瞳を瞬けば、涙が粒となってその頬を伝った。女の手は自身の下着を半分ほど下ろしたところで止まっており、周囲の男達は恥辱に震える女を笑いものにして楽しんでいたようだ。
(悪趣味な。まぁ、そのお陰で未遂ですんだようだがな)
知らない女の貞操で傷付いてやれるほどお人好しではないが、あの男に恩を売るつもりの人間としては、女が無傷でいてくれたことにホッとする。
「おい、こいつ何か変だぞ。他の奴らを呼べ」
三人の中で一番体格の良い獣人がそう言って立ち上がった。だが他の二人は動く気配がない。
(酒でも入っているのか?)
突然現れた不審者を前にやけに重い腰だ。一応兵士なのだからもっと機敏な行動を見せると思っていたのだが、腰を下ろしたままの二人には警戒心の欠片も見えなかった。
(油断? 無手の俺を前に、獣人の自分達なら絶対に負けない自信があるのか?)
だとしたら丁度いい。俺は連中が何かする前に即行で片をつけるつもりだった行動を一時中断する。さっきはスキルを使った背後からの不意打ちだったが、今回は向き合ってからの戦闘ができる。より自分の力を確認しやすいというものだ。
「おい、今から攻撃をしかけるから全力で反撃してみろ」
俺が唯一警戒心を見せる獣人にそう言うと、座ったままの二人の肩が震えだした。
「ぷ、くく。おい、聞いたか? 商人ごときに舐められてんぞ、お前」
「ウルセェ! いいから早く他の連中を連れてこい」
「ビビんなよ情けねぇ。それよりも、この女もうヤッちまおうぜ」
「や、やめて! 触らないでください」
「うるせえ! いつまでもそんなダサいパンツ足に引っかけてないで、早いところ脱げや」
商人の妹の剥き出しの尻やら足やらに獣人の手が伸びる。
(見るからに雑魚そうな二人だし、こいつだけでいいか)
「テメェら、いい加減にしろ! こいつ多分商人じゃーー」
「おい、余所見するな。行くぞ」
「喧しい! 大方護衛の生き残りだろうが、人が下手に出てりゃ調子のんなよ」
俺はちょっと本気で動いてみた。
「はっ!? なっ!? き、消えた!?」
「後ろだ」
「へっ!?」
獣人が振り向いたとき、その首は既に胴と別れていた。
「は?」
「え?」
ポカンとアホ面を見せる二人の獣人にも手刀で切りかかる。俺は確信した。
「よし。やはり吸血鬼の身体能力は獣人らを圧倒的に上回っている」
獣人の中で唯一立ち上がっていた男の首が床に落ちるのに合わて、他の二人の首も床を転がった。
「あ、貴方は?」
「お前の兄と契約したものだ。……もうパンツ穿いていいぞ」
「え? あっ、きゃああああ!? す、すみません。い、いま穿きますね」
女は凄い勢いで膝の辺りまで下りていたパンツを上げると、着ている上着の丈を精一杯伸ばして簡素な白い下着を隠した。
(噴水のように飛び出した血を見ても動じなかったのに、女の基準ってよく分からないな)
俺は地面に落ちている女のズボンを拾ってやった。
「ほら、少し血で汚れたが、その姿でいるよりはマシだろ」
「へ? い、いや違いますよ? 私だってもっと良いパンツもってるんです。でも長旅でそんなの穿いてても仕方ないじゃないですか。だからあえて、あえて丈夫で長持ちするけど何の色気もないパンツを穿いているんです。私だって街とかではもっとちゃんとしたパンツ穿いてますから」
「いや、お前のパンツ事情はどうでもいいからな」
助かった安堵で緊張と共に頭のネジでも緩んだのだろうか? 突然助けた女が語りだすパンツ事情にちょっと引く。天幕の入口が捲れて先程助けた男が飛び込んできた。
「ショーナ。無事か? ショーナ!」
「兄さん」
ヒシリと二人は抱き合った。
「ああ、良かった。すまない、ショーナ。お前を助けてやれなくて」
「いいえ。兄さんは精一杯やってくれました。それに私は大丈夫。こちらのお方に助けて頂きましたから」
兄妹でよく似たブラウンの瞳がこっちを向いた。
「兄さん、こちらの方は? 兄さんと契約したと仰っていましたけど、いつの間にこんな凄い護衛さんを雇われたんですか?」
「それが、実は俺もついさっき助けられただけで、まだ名前も知らないんだ」
商人は妹であるパンツ女を離すと、背筋を伸ばしてから折り目正しく礼をしてきた。
「この度は危ないところをありがとうござ……あ、あの!?」
「まだ終わった訳じゃないだろう。契約内容は獣人の皆殺しだ」
テントの外が騒がしくなってきてる。やはり少しうるさかったか? それとも血の臭いでも察したのだろうか?
「残りを片付けてくる。お前らはここにいろ」
どのみち部隊を率いているナンバーズを倒すには集団戦は避けては通れない。ここらで獣人の集団戦法を体験しておくのも悪くないだろう。
既に俺には三十程度の獣人に負けない自信があった。
「待ってください。私の名前はトラオ・ネーア。妹はショーナ・ネーア。せめて貴方様のお名前をお教しえください」
「…………ロマ・バルトクライ」
背後で二人がバルトクライの名に息を呑むのが分かった。それかどういう意味なのか、考えると皇帝への怒りでキレそうになるので今は考えないことにする。
天幕を出れば丁度武装した獣人が四人程こちらにやって来るところだった。
「おいそこの、止まれ! ここの商人……には見えないが貴様は何者だ?」
「なぁ、テントの中から血の匂いがしないか?」
「ああ、それも俺達獣人の血の匂いだ」
「まさかコイツ……ヒニア法国の騎士か?」
四匹のケダモノ共が殺気立つ。
(ヒニア法国? ……ああ、確かこの大陸で最大の権勢を誇っていた国か)
今はどうか知らないが、俺がいた頃は大陸で最も影響力のある国家だと聞いた。恐らくここまで生物兵器を実用化させておきながらも、帝国が未だに大陸統一を成し遂げていないのもヒニア法国の力なのだろう。
「気をつけろ、もしも本当にヒニア法国の騎士ならばパートナーの魔術師がいるはずだ」
体内の気を操り超人的な身体能力を発揮する騎士。世界に満ちる魔力を操り超常的な現象を起こす魔術師。近接戦闘のスペシャリストと遠距離攻撃のスペシャリスト。騎士に比べて実戦レベルの魔術師が少ないせいで必ずしもというわけではないが、それでも両者を組ませるのはどこの軍部でもやっているセオリー…… だと昔母さんに聞いた。
(まぁ、本当は俺が魔術師なんだがな)
師匠の眷属である俺の身体能力を見た者は俺を騎士と誤解するだろうから、当面は魔術抜きでやってみるか。
(素手で簡単に殺れるんだから、魔術を試すまでもないよな。だとしたら次は……)
「よし、では次の実験に移ろうか」
「あ? 何ぶつぶつ言ってんだ?」
血気盛んな一人の獣人がナイフを投擲してくる。
「次元の壁を越えろ。スキル『影形成・シャドードッグ』
次の瞬間、俺の影が二次元から三次元へと跳躍、三次元に生息する猛犬となって飛来してくるナイフを補食した。
「は? ……は?」
「お、おい。なんだ? あれ?」
自分達も獣のくせして、六メートル近い巨大な影犬を前にビビる獣人達。
(群れてるこいつらを単独で殺せるだけの力をもったシャドードッグは六体が限界か)
一体に与える力を抑えればもっと多くのシャドーを出せるが、腐っても相手は帝国の生物兵器。これ以上影に与える力を抑えると逆に影が負けかねない。
(ひとまずこの六体に獣人を狩らしてみる……あれ? 五体?)
確かに六体作ったはずなのにもう一体が影から出てこない。不思議に思っているとーー
(ぬぎゃ~! だめっス、だめっス! 私はまだ寝ていたいんス。影を剥ぐのは止めるっス)
頭に響く声。どうやら俺の影に潜っているテレステアが影を取られるのを嫌がって抵抗しているようだ。
(影形成を使ってる間は影に入れないからな。一緒に出てくるのを嫌がったのか)
姉弟子が見せる布団を取られるのを嫌がる子供のような姿に頭痛を覚えていると、異変を察知した他の獣人達が次々に集まってきた。
「おい、なんだこれ?」
「テメーら無事か? 状況を説明しやがれ」
「敵だ! 敵が入り込んでるぞ!!」
集まってくる大勢の仲間を前に四人の獣人もすっかり気を持ち直したのか、その顔にセブンを彷彿とさせる下卑た笑みを浮かべる。
「へへ。妙な魔術を使うようだが、群となった俺達獣人に勝てる奴はいねぇ」
「その生意気な面、グチャグチャにしてやるぜ」
「集団戦法に自信ありか。いいだろう、見せてみろ」
息巻く獣人四人にシャドードッグを一匹けしかけてみる。するとーー
「ぬぎゃあああ!? おい、待て! やめーー」
バクン!
何と一噛みで四人とも死んでしまった。
「おいおい、マジかこれ」
(弱すぎる。いや、俺が強いのか?)
始元島には化物が沢山いたので実感しにくかったが、もう間違いないだろう。この大陸において……俺は強者だ。
「クックック……アッハハハ!! 殺してやる! 殺してやるぞ、ナンバーズ!」
俺は形を与えている全ての影に殺戮を命じた。
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