多種族保育園

ヒーローごっこ

ーーー4月18日、晴れ

　私立他種族保育園は今日も子どもたちの元気な声で溢れていた。

「「「せんせー！あーそーぼー！！」」」

　園庭遊びの時間にクラスの男の子たち三人から声をかけられる。

　翼と尻尾が生えているのが亜竜種のリュウトくん。その隣にいるミノタウロスの男の子がウカくんで、2人の少し後ろにいるのがサイクロプスのガイスくんである。

「もちろんっ、何して遊ぶ？？」
「ヒーローごっこ！」
「おれたちがヒーロー！」
「せんせーは敵ね！」
「いいよー。」

　彼らいつも三人で遊んでいて、特に日本の特撮ヒーローは大層気に入っているらしく、こうしてよく敵役を任される。

「…だぁ～っはっはっは！！！現れたなヒーローめ…！！」

　…自分たち保育士は子どもたちには常に全力だ。ヒーローの敵役でも、魔法使いのお姫様でも、子どもたちと向き合う以上は全力で演じきってみせる…！

「そうはさせない！」
「いくぞみんな！」
「おー！！」

　ここで補足。亜竜種、ミノタウロス、サイクロプスはそれぞれ力が秀でた種族だ。特に最近は、みんな成長していくにつれて体も大きくなり、ガイスくんに至ってはヒト種の10歳ほどの体格にまで成長している。

　そのため、ヒーローのなりきり遊びでも直接的な攻撃はしないようにお約束をしている。子どもたちには少し物足りないかもしれないが、保育士のいない、子どもたちだけの状況でのトラブルをなくす意図も含まれているため、仕方なく我慢してもらっている。

「ぐぅわぁぁぁ～！！！なんと言う強さだぁぁぁ！！！」

　だからこそ、その物足りなさを少しでも埋めてもらうためにも、迫真の演技で、敵役を全うする。

「これでおわりだぁ！」
「ひっさつ！！」
「とりぷるビーム！！」
「ぬぅわぁあああ！！！ヤァラァレェタァダァあああ！！！」

　三人の息のあった攻撃…の掛け声に合わせて、全力でのたうち回る26歳の成人男性。保育士で無ければ、ドン引きレベルの光景だろう。

　それでもいい。子どもたちが楽しく遊んでるなら、その気持ちを優先させるのが保育士だ。

　だから…、別に、恥ずかしくなんかないんだからね…！！！