星の堕ちた世界で~終末世界のエルフ~

黒幸

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「次はこことか、よくない?」
「いいね」
「悪くないと思うさ」
「バッチリですね」

 真っ赤な瞳が印象深い中性的なイケメンが一言発すると黒いうさぎの大きなぬいぐるみと見るからに恐ろしい怪奇! 蛇女が同意する。
 言葉を発していないけど、大きな熊さんのぬいぐるみも同意を示す意味で大きく頷いている。
 ちょっと空気を読めないバッチリ発言はわたしである……。

 どうやら結論を出すことに囚われすぎて、杞憂だった。
 バルディエルに宥められ、心が折れそうになること数度。
 それでもめげずにツアーのレイドを開いていたら、友人と呼べるような存在ができた。

 きっかけとなるツアーを主催したのはわたしだけど、リーダーの器ではない。
 率先して何かをやるのは苦手だし、音頭を取るなんてもってのほか。
 そんな人間がリーダーをしてはいけないと思う。

「ポータルは便利だねー」
 
 そこで自然な流れでリーダーになったのが、赤いおめめのカイトさんだ。
 話し方はフレンドリーで気さくな人柄がよく分かる。
 わたしと同じエルフ族で炎のサラマンドル氏族だから、瞳の色が赤系統らしい。
 線の細いイケメンだけど、背はあまり高くなくて、百六十七あるわたしと同じくらいか、ちょっと低い。
 オーストラリアに住んでいることを教えてくれただけで後は一切、ベールに包まれている。
 それでも人柄といい、まとめるカリスマ性といいリーダーに最適な人であるのは間違いない。

「何か、金目のもんあっかね?」

 見た目はぴょこんと二本の耳が立った灰色のうさぎさんのぬいぐるみにしか、見えないのがサイことサイレント。
 くりくりとした真っ黒なおめめは好奇心に輝いているし、名前がサイレントなのにお喋りだ。
 彼はイギリス在住のティーンエージャーだと言っているけど……。
 とにかく物欲の強さには定評があって、ティーンらしさはあまりない。

「きれいな景色を見るのも悪くはないさ」

 このちょっと斜に構えた言い方と見た目が毒蛇みたいな頭していて、図体も大きいので見るからに恐ろしいケイさんことケイルオンさんだ。
 何でもリザードマンという亜人の一種で爬虫類ぽい見た目が特徴なんだそうだ。
 見た目通り、喧嘩も強いけど、これは元々、拳法を習っていたからだと言っていた。
 そして、見た目と喋り方では分からないけど、実は女性……。
 人は見た目で判断してはいけないってこと。

「…………」

 ニコニコと笑顔を絶やさず、ただ頷いているけど、見た目は大きなテディベアみたいなのがブルさんことブルー・サージェントさん。
 サイやブルさんはぬいぐるみみたいな見た目でリアルな動物がそのまま二足歩行しているのとはちょっと違う感じがする。
 ただ、よくモフモフしていて、つい触りたくなってくる恐ろしい魔の力を秘めている。
 抗いがたい恐ろしい力なのだ……。
 まぁ、それはともかくとして、ブルさんはほとんど喋らない無口なぬい……もとい人なのである。

 わたしは日本でカイトさんはオーストラリア。
 サイはイギリスでケイさんは中国、ブルさんはアメリカ。
 まるで示し合わせたかのように気軽な気持ちで会いに行ける場所に住んでいないのは、偶然にしてもよくできた話だと思う。

 そうなのだ。
 リアルでは覆しようのない物理的に隔絶された距離がある。
 海外旅行に出るのは命懸けな世界で気軽に旅行なんてできない。
 それがVRの世界では、ポータルと呼ばれる転移装置を使うだけで観光旅行ができる。

 まさに夢の世界なのよね、このリトリー・オンラインって。
 あまりに居心地がよくて、錯覚がわたしを迷わせる。
 いっそ、このまま、心地良い夢から覚めなければいいのにと願う。
 それは決して、許されないことなのに……。
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