13 / 37
13 幸福はカエルの顔をしていない
しおりを挟む
リトリー・オンラインで冒険する世界オブリビオンは、剣と魔法とモンスターが存在するファンタジーだ。
いわゆる幻想世界なんだけど、奇妙なこともある。
世界地図がわたし達の住んでいる現実世界とよく似ているのだ。
似ているというよりもそっくり、そのままと言ってもいい。
まず、わたしが本拠地にしているところがどこかと言ったら、現実の地図上でH町のある場所になる。
ただ、見える景色が現実世界そのままではない。
違いは歴然としている。
あまりにも異なる風景はここが確かに異世界なのだと教えてくれる。
それに尽きると思う。
現実ではコンクリートジャングルと呼ばれる物質的な街並みが見える大都市ですら、オブリビオンでは単なる草原だったりするのだ。
この違いが何なのかは分からない。
だけど、現実世界と同じ感覚で世界を回れるのは大きい。
まるで世界旅行をしているような感覚を味わえる。
気軽に旅ができるのだ。
現実世界ではこうはいかない。
異常気象や天変地異が続いている。
不穏な噂が噂ですらなくなって、世の中は騒然としていた。
そして、人類が長年、夢見ながらも未だに空は飛べないまま。
神様がもしいるのであれば、怒っているのかもしれない。
太陽に近づこうとする傲慢な人間を……そんな宗教じみた考えをまくし立てる人までいるくらいだ。
でも、これはVRゲームであって。
人が夢見た仮想空間だから、ありえないことを実現しているのだ。
現実では不可能だった手軽な旅を可能にするのが、ポータルと呼ばれる不思議な施設。
簡単に言えば、テレポーテーションみたいなものと考えれば、分かりやすい。
あっという間に遠いところまで運んでくれる。
ただし、副作用があって、三半規管が弱い人は酔う可能性がある。
ある程度の慣れが必要だから、慣れてしまえばどうにかなるとは経験者かく語りきってところ。
かくいうわたしも酷い目に遭った。
初めてポータルに乗った時、それはそれは酷い目に遭ったのだ。
乙女の尊厳に関わるので割愛しておこうと思う……。
そして、注意すべき点がある。
ポータルの利用は決して、無料ではないってこと。
移動距離に応じて、それ相応の料金が必要だ。
そうは言っても実際に海外旅行をするとなれば、船旅しかない現実と比べるまでもない。
比較的、良心的な価格設定がされていると思う。
だから、世界各地にいる友人と出会えた。
偶にハイキング気分で冒険旅行にも出かけられるのだから、言うことはない。
海外在住の友人達は元々、日本びいきのところがあったのか、どうも日本のあちこちが気になるらしい。
そのせいか、彼らがわたしのいるエリアへと遊びに来る方が圧倒的に多い。
一度、フランスにある世界遺産の修道院を見に行った時、怖い思いをしたので思い付きや下調べもせずに旅をするのも考え物なのだ。
それは現実ではなく、オブリビオンでも同じ。
「お待たせ」
「ううん。待ってないけど?」
「それなら、いいけどさ」
現実のわたしにこんなやり取りをする相手はいない。
仲の良い友人はいてもどこか壁を作ってしまうのか、そこまで親しい関係にならないのだ。
オブリビオンでもわたしはわたしであって。
鏡を見れば、そこにはよく知る自分の顔があって、わたしが見ているようにあちらもわたしを見ている。
つまり、わたしであることは変わらないはず。
それなのになぜか、普段とは違う自分でいられるから、不思議だ。
「どこ行くんだっけ?」
「A湖でしょ?」
「そうだっけ?」
「そうよ。何か、面白そうだからって、ユーくんが言ったんじゃない?」
「ええ? そうだった?」
「うん。そう……だと思う」
わたしがユーくんと親し気に呼んでいる年下の彼。
真っ白なカエルさんだけど、まるでどこかの可愛らしい人気キャラクターでけろっとしたのに似ていて、可愛らしい人に出会ったのはちょっとした偶然とひょんな必然によるものだった。
いわゆる幻想世界なんだけど、奇妙なこともある。
世界地図がわたし達の住んでいる現実世界とよく似ているのだ。
似ているというよりもそっくり、そのままと言ってもいい。
まず、わたしが本拠地にしているところがどこかと言ったら、現実の地図上でH町のある場所になる。
ただ、見える景色が現実世界そのままではない。
違いは歴然としている。
あまりにも異なる風景はここが確かに異世界なのだと教えてくれる。
それに尽きると思う。
現実ではコンクリートジャングルと呼ばれる物質的な街並みが見える大都市ですら、オブリビオンでは単なる草原だったりするのだ。
この違いが何なのかは分からない。
だけど、現実世界と同じ感覚で世界を回れるのは大きい。
まるで世界旅行をしているような感覚を味わえる。
気軽に旅ができるのだ。
現実世界ではこうはいかない。
異常気象や天変地異が続いている。
不穏な噂が噂ですらなくなって、世の中は騒然としていた。
そして、人類が長年、夢見ながらも未だに空は飛べないまま。
神様がもしいるのであれば、怒っているのかもしれない。
太陽に近づこうとする傲慢な人間を……そんな宗教じみた考えをまくし立てる人までいるくらいだ。
でも、これはVRゲームであって。
人が夢見た仮想空間だから、ありえないことを実現しているのだ。
現実では不可能だった手軽な旅を可能にするのが、ポータルと呼ばれる不思議な施設。
簡単に言えば、テレポーテーションみたいなものと考えれば、分かりやすい。
あっという間に遠いところまで運んでくれる。
ただし、副作用があって、三半規管が弱い人は酔う可能性がある。
ある程度の慣れが必要だから、慣れてしまえばどうにかなるとは経験者かく語りきってところ。
かくいうわたしも酷い目に遭った。
初めてポータルに乗った時、それはそれは酷い目に遭ったのだ。
乙女の尊厳に関わるので割愛しておこうと思う……。
そして、注意すべき点がある。
ポータルの利用は決して、無料ではないってこと。
移動距離に応じて、それ相応の料金が必要だ。
そうは言っても実際に海外旅行をするとなれば、船旅しかない現実と比べるまでもない。
比較的、良心的な価格設定がされていると思う。
だから、世界各地にいる友人と出会えた。
偶にハイキング気分で冒険旅行にも出かけられるのだから、言うことはない。
海外在住の友人達は元々、日本びいきのところがあったのか、どうも日本のあちこちが気になるらしい。
そのせいか、彼らがわたしのいるエリアへと遊びに来る方が圧倒的に多い。
一度、フランスにある世界遺産の修道院を見に行った時、怖い思いをしたので思い付きや下調べもせずに旅をするのも考え物なのだ。
それは現実ではなく、オブリビオンでも同じ。
「お待たせ」
「ううん。待ってないけど?」
「それなら、いいけどさ」
現実のわたしにこんなやり取りをする相手はいない。
仲の良い友人はいてもどこか壁を作ってしまうのか、そこまで親しい関係にならないのだ。
オブリビオンでもわたしはわたしであって。
鏡を見れば、そこにはよく知る自分の顔があって、わたしが見ているようにあちらもわたしを見ている。
つまり、わたしであることは変わらないはず。
それなのになぜか、普段とは違う自分でいられるから、不思議だ。
「どこ行くんだっけ?」
「A湖でしょ?」
「そうだっけ?」
「そうよ。何か、面白そうだからって、ユーくんが言ったんじゃない?」
「ええ? そうだった?」
「うん。そう……だと思う」
わたしがユーくんと親し気に呼んでいる年下の彼。
真っ白なカエルさんだけど、まるでどこかの可愛らしい人気キャラクターでけろっとしたのに似ていて、可愛らしい人に出会ったのはちょっとした偶然とひょんな必然によるものだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる