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22 やれることをやる
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レイドで通称スライム退治と呼ばれるソレ。
日本人プレイヤーの間では通称で何となく、通じてしまうのはスライムが比較的、知られているモンスターだったからというもっともらしい理由だ。
しかし、スライム退治と言うものの、対象となっているのはブロッブという魔物。
これを駆逐するお仕事がスライム退治のレイドになる。
ブロッブは不定形のどろどろぶよぶよとした魔物なんだけど、ホラー映画に出てくる割と怖いモンスター。
そして、これがいわば本当のスライムであって、青くてぷるぷるした生き物はどうやら実在しないらしい。
もしかしたら、空想を具現化する特殊な力を持つプレイヤーがいて、そんな生き物と行動を共にしている可能性もあるという話だ。
何しろ、空想上の産物と考えられていたモノが闊歩しているんだから、何がいたっておかしくない。
ブロッブの危険性が低いとされているのはあくまで弱点があるのと近寄らなければ、安全だからが理由だからだ。
わたしとユーくんはどちらかといえば、不慣れなプレイヤーであって。
それでもどうにか、やれると判断されたのはその点が大きい。
「でも、いつも安全にやれるとは限らないのよね」
『その通りですよ、ミレイユ』
この性悪うさちゃん、わざと警告しなかったでしょ?
メルキセデクも知っていて、素知らぬふりをしていたんでしょうね。
「まあ。冒険には危険が付き物だよ。こういうのは経験しておいて、損しないと思うよ」
「それはそうなんですけどねっ」
相変わらず、レイさんは涼しい顔をしていて。
そう言いながらも音もなく、まさにサササと逃げの一手でブロッブとの間合いを取っている辺り、慣れているんだろうと思う。
ユーくんも慣れていないとはいえ、運動神経がいいから、難なく避けている。
わたしは一人、あくせくと逃げている。
いや、だってエルフだし……。
遠距離でしか戦いたくないし……。
運動神経悪いから、颯爽とは逃げられないのだ。
逃げるのも命懸け。
『その割にミレイユは逃げ足速いですよ』
「褒められていると思えないんだけど!」
『褒めていません!』
分かっているけど、バルディエルは相変わらず、口が悪い。
わたしが変に緊張しないようにと気を利かしているつもりなんだよね。
天邪鬼というか、ツンデレというか。
ちょっと面倒な性格だけど、相棒なんだし。
レイさんは逃げの一手かと思ったら、器用に処理までこなしているようだ。
尾羽みたいなのを手にして、さくさくと燃やしている。
さすが、慣れている人は違う。
「ユーくんはどうしているかな?」
『うまくやっているみたいです』
バルディエルの言葉通り、彼はわたしを追いかけないようにブロッブを上手に誘導していた。
けろけろけろっが関係しているのか、ぴょんぴょんと跳ねるように機敏な動きを見せている。
ブロッブは不定形だから、攻撃方法が自在。
どこから、どう体を伸ばしてくるのか、分かりにくいし、読みにくい。
それをいとも簡単に避けているのはもはや、才能よね。
「これくらい、離れたら大丈夫かな?」
『多分、大丈夫じゃないですか』
「多分って、何よ。多分って」
表情を確認する余裕がないけど、バルディエルは今、ものすごく悪い顔をしているに違いない。
うさちゃんの悪い顔って、どういうのか想像しにくいと思うけど、児童文学で有名なあのうさちゃんを想像すれば、分かりやすい。
そう。
あんな顔をして、わたしがどう動くのかが楽しみで仕方ないんだろうと思う。
「まぁ、いいわ。やれることをやるまでだし」
アーバレストを構えて、撃ち抜けばいいだけの話。
難しく考える必要はないし、派手に動く必要もないのだ。
わたしはわたしにできることを落ち着いて、やればいいだけ……。
「はい。一つ」
ユーくんに音もなく、忍び寄っていたブロッブを火だるまに変えた。
後ろには目がないから、そうなるよね。
それを補う為に仲間がいるんだし。
「ミレイユの癖にいいこと言いますね」とはバルディエルの言。
失礼な話ね!
さて、次の獲物を狙わなきゃ……。
何か、めっちゃポイントが入っている。
これ、ブロッブを倒しているからじゃないよね?
ポイントがおかしいわ。
もしかして、コニーさんが!?
あの鳴き声は相当にヤバイって話なのにどうなっているんだろう……。
日本人プレイヤーの間では通称で何となく、通じてしまうのはスライムが比較的、知られているモンスターだったからというもっともらしい理由だ。
しかし、スライム退治と言うものの、対象となっているのはブロッブという魔物。
これを駆逐するお仕事がスライム退治のレイドになる。
ブロッブは不定形のどろどろぶよぶよとした魔物なんだけど、ホラー映画に出てくる割と怖いモンスター。
そして、これがいわば本当のスライムであって、青くてぷるぷるした生き物はどうやら実在しないらしい。
もしかしたら、空想を具現化する特殊な力を持つプレイヤーがいて、そんな生き物と行動を共にしている可能性もあるという話だ。
何しろ、空想上の産物と考えられていたモノが闊歩しているんだから、何がいたっておかしくない。
ブロッブの危険性が低いとされているのはあくまで弱点があるのと近寄らなければ、安全だからが理由だからだ。
わたしとユーくんはどちらかといえば、不慣れなプレイヤーであって。
それでもどうにか、やれると判断されたのはその点が大きい。
「でも、いつも安全にやれるとは限らないのよね」
『その通りですよ、ミレイユ』
この性悪うさちゃん、わざと警告しなかったでしょ?
メルキセデクも知っていて、素知らぬふりをしていたんでしょうね。
「まあ。冒険には危険が付き物だよ。こういうのは経験しておいて、損しないと思うよ」
「それはそうなんですけどねっ」
相変わらず、レイさんは涼しい顔をしていて。
そう言いながらも音もなく、まさにサササと逃げの一手でブロッブとの間合いを取っている辺り、慣れているんだろうと思う。
ユーくんも慣れていないとはいえ、運動神経がいいから、難なく避けている。
わたしは一人、あくせくと逃げている。
いや、だってエルフだし……。
遠距離でしか戦いたくないし……。
運動神経悪いから、颯爽とは逃げられないのだ。
逃げるのも命懸け。
『その割にミレイユは逃げ足速いですよ』
「褒められていると思えないんだけど!」
『褒めていません!』
分かっているけど、バルディエルは相変わらず、口が悪い。
わたしが変に緊張しないようにと気を利かしているつもりなんだよね。
天邪鬼というか、ツンデレというか。
ちょっと面倒な性格だけど、相棒なんだし。
レイさんは逃げの一手かと思ったら、器用に処理までこなしているようだ。
尾羽みたいなのを手にして、さくさくと燃やしている。
さすが、慣れている人は違う。
「ユーくんはどうしているかな?」
『うまくやっているみたいです』
バルディエルの言葉通り、彼はわたしを追いかけないようにブロッブを上手に誘導していた。
けろけろけろっが関係しているのか、ぴょんぴょんと跳ねるように機敏な動きを見せている。
ブロッブは不定形だから、攻撃方法が自在。
どこから、どう体を伸ばしてくるのか、分かりにくいし、読みにくい。
それをいとも簡単に避けているのはもはや、才能よね。
「これくらい、離れたら大丈夫かな?」
『多分、大丈夫じゃないですか』
「多分って、何よ。多分って」
表情を確認する余裕がないけど、バルディエルは今、ものすごく悪い顔をしているに違いない。
うさちゃんの悪い顔って、どういうのか想像しにくいと思うけど、児童文学で有名なあのうさちゃんを想像すれば、分かりやすい。
そう。
あんな顔をして、わたしがどう動くのかが楽しみで仕方ないんだろうと思う。
「まぁ、いいわ。やれることをやるまでだし」
アーバレストを構えて、撃ち抜けばいいだけの話。
難しく考える必要はないし、派手に動く必要もないのだ。
わたしはわたしにできることを落ち着いて、やればいいだけ……。
「はい。一つ」
ユーくんに音もなく、忍び寄っていたブロッブを火だるまに変えた。
後ろには目がないから、そうなるよね。
それを補う為に仲間がいるんだし。
「ミレイユの癖にいいこと言いますね」とはバルディエルの言。
失礼な話ね!
さて、次の獲物を狙わなきゃ……。
何か、めっちゃポイントが入っている。
これ、ブロッブを倒しているからじゃないよね?
ポイントがおかしいわ。
もしかして、コニーさんが!?
あの鳴き声は相当にヤバイって話なのにどうなっているんだろう……。
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