星の堕ちた世界で~終末世界のエルフ~

黒幸

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33 諏訪湖の怪・後日談

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 想定外のアクシデントがあったから、思ったよりは稼げなかったのが残念だけど、当初予定していたお土産や記念写真は撮れた。
 だから、悪い旅ではなかったと思う。
 何よりも人脈なんて、ほぼ存在しないわたしにとって、貴重な同性で同年代の友人ができたのは非常に意味がある。
 N県くらいの距離なら、ポータルでの行き来でもそんなに財布が痛くないからだ。

 お土産に包んでもらったのが信州和牛のステーキだったけど、母は喜んでくれた。
 普段、あまりお肉を食べたがらない母にしては珍しく、完食した。
 母は果物の方が好みだから、どちらかと言えば、そっちのお土産の方が嬉しかったようだけど。



 騒がしかった一日が終わって、久しぶりに熟睡した翌日のことだった。
 まだ、日が昇ってから、そう経っていない早朝にスマホが鳴った。
 こんな時間に連絡してくる人は知り合いにまず、いない。
 考えられるのは一人だけだ。
 多分、ユーくんだろう。
 でも、緊急で掛かってくる用件は全く、思い当たらない。

「え? 何? ニュースを見ればいいの?」
「そうそう! 今、やってるからさ」
「分かった」

 慌てているのではなく、興奮しているように聞こえた。
 声の調子に落ち着きがなかったから……。

 しかし、超低血圧のわたしにとって、目覚めはエンジンの懸かりが悪い。
 頭の回転が鈍すぎて、どうにもならないのだ。
 それでも彼があまりに急かすから、仕方がない。

 寝ぼけまなこを擦りながら、のそのそと自室を出ると朝早くから、動き始める母がいつものようにテレビを付けている。
 ユーくんの伝えたかったニュースが丁度、流れていた。

『……んからの映像提供です』

 はっきりと聞き取れなかったけど、どうやら一般視聴者がスマホで撮影した動画を特ダネとして流したようだ。
 そこにはにわかには信じられないモノが映っていた。
 ピカッと目が眩むような発光を数度、繰り返した諏訪湖から、巨大な黒山のような物体が出現する様子だった。
 慌てて、自室に戻り、ユーくんに掛け直した。

「何、あれ?」
「怪獣だよ、怪獣! どう見たって、怪獣じゃん」
「う、うん? まぁ、こんなご時世だから怪獣みたいなのが出てきてもおかしくないと思うけど」
「でも、あんなの今まで見たことないよ」

 ユーくんは男の子だから、怪獣が出てくると何か、ロマンを感じるんだろうか。
 ヤバいのが出てきて、どうしようという心配をワクワクしてくる高揚感の方が強いみたいだ。
 ただ、気になるのはその映像が撮影された時間帯は、わたし達が想定外のアクシデントに遭遇した時と被っている。
 おまけに場所は諏訪湖。
 これは何か、関係があると思って、おかしくない。

「もしかして、あの怪獣みたいなのが蛇のお化けを退散させたんだったりしないよね?」
「そっか! そういう可能性もないとは言えないね。スゴイなあ」

 ラバーさんに聞いても多分、答えてはくれないと思うし、聞いてはいけない気がする。
 興奮冷めやらぬユーくんには悪いけど、この話題はあまり蒸し返さない方がいいのかもしれない。
 漠然とそう思った。

 その後、いつも通り、他愛のない話をちょっとだけして、お開きとなった。
 何より、朝食をとる前の時間だったから、そんなに長い時間は割けないのもあったし……。
 実はユーくんとこの後、すぐに会うのだ。

 待ち合わせ場所は隣町のJR逗子駅で時間は十時。
 なぜかって?
 彼には鎌倉の町でやりたいことがあるらしい。
 かねてから、それは聞いていたんだけど。
 急遽、鎌倉へ小旅行計画を実行に移したって訳。
 昨日、諏訪湖から一緒にこちらへ戻ってきて、Z市で宿を取ったのだ。
 だから、待ち合わせも自然とそうなった。

 わたしにとって、鎌倉は地元も同然なのでガイドも兼ねて、今日一日、一緒に行動するのだ。
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