契約勇者は自由を求める 〜勝手に認定された勇者なんて国王様に全てお返しいたします〜

夢幻の翼

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第2話 最北の街、ノスルバムタ

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 魔神王の転送魔法により気がつけば俺の身体は魔神王城の入口に立っていた。

 国境を越えると情報がばれる可能性が高いので俺は北の端にある町に行く事を決め、地図を取り出し最短ルートを模索する。

(普通ならばマリエイトの町を経由して乗り合い馬車でノスルバムタへ向かうのが現実的だが今は出来るだけ人に会わずに向かった方が正解だろう)

 ノスルバムタは王国の最北端に位置しており周りを険しい山に囲まれているため冬季は雪と氷に覆われ周囲の町との交易が止まる極寒の町として有名で春まで身を隠すには最適な場所だった。

(あとひと月もすれば本格的な冬が来る。今はまだ冬ごもりの準備のために他の町との交易が多いがすぐにそれも途絶えるだろう。そうなれば三ヶ月は王家の追跡を免れるだろうし運が良ければ探すのを諦めてくれるかもしれない)

 俺はそんな希望的観測つごうのいいことを想像しながらノスルバムタの町へ急ぎ向かった。

 ◇◇◇

「ここはノスルバムタの町だ。見たところ冒険者のようだが何の用事で来た? この時期に来てもあとひと月もすれば雪と氷に覆われて他の町への移動が制限されてしまうぞ」

 全体を高い壁で囲まれた町の門で人々の出入りを確認している門兵が聞いてきた。

「仕事を探しにきたんだ。この町にもギルドはあるんだろう?」

 この町を非難場所に選んだ理由のひとつにはいままで訪れたことが無かったことがあげられる。

 そうすることによって自分の事を知っている可能性が低いからだ。

 いくらそれぞれの町に長期滞在しなかったとはいえ、勇者であった時に多くの人に顔を見られているので勇者の首輪が無くなったとはいえ用心するにこした事はない。

 ギルドにて新人冒険者として登録して何か仕事の斡旋あっせんをして貰うつもりで聞いてみた。

「ああ、もちろんギルドはあるがこの時期の依頼は獣の狩りの護衛か冬ごもり用のまき作りくらいのものだぞ。まあ、運がよければ他の街までの商隊護衛があるかもしれんが……まあいいだろう行ってみるといい」

「ああ、ありがとう」

 俺は門兵に礼を言い街のギルドに向かった。

 ギルドは街の中心部にあり、地方のギルドにしては大きめの建物だったことに驚きながらドアを開けた。

 ――からんからん。

 ギルドのドア鐘の音が室内に響くと中にいるギルド職員や冒険者、依頼に訪れているのであろう人々が一斉にこちらを見たが、特徴のない男の事などすぐに興味を失い、各々自分の事を再開する。

「当ギルドへようこそ。初めてのご利用でしょうか? 宜しければ利用内容をお教え願います」

 いつの間にか若い女性が側に来ていた。ギルドの受付嬢なのだろう笑顔で質問しながら手に持った書類に何か記載していた。

「ああ、べつの町から来たばかりなのだが何か仕事がないかなと思ってな」

 俺は素直に来た理由を話すと受付嬢は「冒険者登録証はありますでしょうか? 持っているなら提示をお願いします」と微笑みながら言った。

「いや、今までフリーで仕事をしてきたのでギルドへの登録はした事はないんだ」

 俺の返答に受付嬢は少し困った顔をして「そうですか。では新規の登録となりますが、今の時期このギルドでは実績のない新規の方へ斡旋できる仕事はほとんどありませんがそれでも宜しいですか?」と残念そうに答えた。

「実績がないと仕事が受けられないのか?」

「申し訳ありません。ギルドの規定にありますので……それに冬ごもり前ですから仕事も少ないんです。そうだ、何か特殊な技能スキルでもお持ちならばもしかしたら募集があるかもしれません」

 そう言いながら対応してくれた受付嬢は俺を案内すると依頼の記載してあるファイルを数冊持ってきてくれた。

「では、あなたが出来る事をここに書いてください。それを元に仕事が斡旋出来るかを調べますので」

 俺は考えた。

(勇者であったから大抵の事は出来るけれど、出来れば戦闘系の事はやめておこう。強い冒険者が居ると噂になれば王家が情報を掴んで出張ってくるかもしれないし、それに魔神王討伐の旅でもう戦闘はやりたくない)

 そう決めた俺は用紙にある職業を書いて渡した。

 そこには『付与魔法士ふよまほうし』と書かれていた。

「『付与魔法士ふよまほうし』ですか? これはまたマイナーな職業を書かれましたね。具体的にはどのような事が出来るのでしょうか?」

 受付嬢は『付与魔法士ふよまほうし』はこの街ではあまり馴染みのない職業であると言い、実際にどういったことが出来るのかの確認をすることになった。

「そうですね。では何か手触りの良い石か布がありませんか? あったらひとつで良いので提供して貰えると助かりますが」

「石か布ですか? ならばこのハンカチをどうぞ使ってください」

 受付嬢はそう言うと懐から布のハンカチを取り出して渡した。

「ありがとうございます」

 俺は彼女に礼を言い左手にハンカチを持ち、右手でその上に魔法陣を描きながら魔法を唱えた。

温熱定着カイロ

 俺の言葉に反応して魔法陣がハンカチに溶け込んでいった。

 その様子を目を丸くして見つめる受付嬢だった。

「これで完成です。それではお返ししますね」

 俺はそう言うとハンカチを受付嬢に返した。それを受け取った彼女は「えっ!?」と小さく声をあげながら渡されたハンカチを握りしめた。

「そんな? 温かい……」

「これがカイロと言う付与魔法です。対象の物を温かく保つ事が出来ます。これはハンカチだけでなく、それこそその辺の石でも何でもかける事が出来ます。効果は大体一週間くらいは持続しますよ」

「凄いです……これから冬を迎えるノスルバムタでは暖房費がかさむのですがこれがあれば少しでも安く済むかもしれません」

 そう言いながら少し考えた受付嬢は個室の応接室へ俺を案内して「少しお待ちください」と言い、部屋を出ていった。

(それだけ凄い付与魔法じゃないと思うんだけどな)

 俺はそう呟いて急に不安になる。

 ――かちゃり。

 そこに現れたのは先ほどの受付嬢と立派な髭を蓄えた良く鍛え抜かれた体をしている壮年の男性だった。

「このギルドを任されているギルドマスターのガザルだ。サザリーから聞いたが君はかなり面白いスキルを持っているそうだね」

 どうやらギルドマスターに報告をしたようで彼も付与魔法に興味を持ったようだった。
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