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第43話【元勇者、また料理の腕をふるう】
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「こちらになります。今夜は他の商隊の方はおられませんので今のところは貸し切り状態になりそうですよ」
「へぇ、使われるかたはそれほど多くないのですか?」
俺が横からそう聞くと「波があるのでなんとも言えませんが今日は少ないですね。ですが、もしかすると急に増える可能性も無くはないです」と答えた。
「つまりは分からないってことですね。ならば野営は広場の端を使った方が良いですね?」
「いや、そこまで気をまわさなくても大丈夫ですので自由にお使いください。それと食事に関しては砦の食堂を使ってもいいですが料金は別途かかりますのでご了承ください」
案内してくれた女性は丁寧にそう言って説明をしてくれた。
「食事は食堂を使わせてもらうかい?」
俺がマリーにそう聞くと「多分ですけどアルフさんが作ったほうが美味しいと思います」とだけ答えてくれた。
「それは俺に作って欲しいと言ってるのかい?」
「さあ、どうでしょう? 私は正直に思った事を言っただけですよ」
少し照れたような表情を見せながらマリーがそう言う。
「仕方ないな。任せておけ」
俺はそう言うと食事は自分たちで準備すると伝えて野営の準備を始めた。
「時間的にはまだ早いが町とは違って他に見るところは無いし、少し手の込んだ料理を作ってみようと思うんだが馬車に積んである食料を使わせてもらってもいいか?」
明日か遅くとも明後日には目的地に到着する予定なので俺がマリーに料理を振る舞うのも最後になるかもしれないと思いとっておきの料理を作ることにした。
「何を作るつもりなんですか?」
「それは出来てからのお楽しみってことで。確か油はあったよな」
「油ですか? あるはずですけど入れ物が陶器ですからアルフさんのマジックバックに仕舞ってあると思いますよ」
「そう言えばそうだったな。確かこのあたりに……。ああ、あったあった。これがあればあれが作れるぞ」
俺はそう言って油の入った容器と以前狩ったボアの肉を取り出してまな板の上に乗せる。
「あとは少し固くなってきたパンを砕いて切ったボア肉に卵と一緒にまぶしておいて鍋に入れた油が煮立ってきたらコイツを投入する。色がついたらサッと皿に上げて風魔法で余分な油をきってやればボアのサクサク揚げの完成だ」
俺はさらに馬車に積んであった柔らかいパンとマジックバックに入れておいた葉物野菜を取り出してパンに置き特製のタレをたらしてからパンで挟み込んだ。
「こうすれば一度にパンも肉も野菜も食える。時間のない時や野営の時なんかだと便利なんだよ」
「うわっ! また美味しそうな物を作ってくれましたね。このままだと私はアルフさんの食事無しには生きられなくなるかもしれません」
マリーはそう言うとさらに俺の言葉にツッコミをいれた。
「それにアルフさんは時間の無いときや普通の野営時に揚げ物なんてするんですか?」
「ははは、確かにそうだな。その場では作るのは難しいよな。だが、そんなときは先に作ってマジックバックに入れておけばいつでも食えるって訳だ」
「そうですよね。マジックバックって本当に便利ですけどなかなか手に入らないですもんね。アルフさんも遺跡で見つけたって言ってましたし、もしまた遺跡で発見したら私に安く卸してください……って、ちょっと図々しいかな?」
「そうだな。そうしてやりたいが、そうそう見つかるものでもないからあまり期待はしないでいてくれよ」
そういえば以前、俺はマジックバックを説明した時に遺跡で発見したと言ってしまったことがあった事を思い出してそんな嘘をついてしまった。
「約束ですからね」
マリーの言葉に俺はまたひとつ嘘から出た約束を作ってしまったなと内心後悔をした。
(しかし、これは本格的に遺跡の調査をしないと駄目かもしれないな)
マジックバックは魔道具屋が作るもの以外に遺跡で発見されたとの報告もあるので不可能ではないのだろうがその確率は極めて低いものだと安易に予想できていたが当然買い与えるほどの金はあるはずもないし他人であるマリーにそれを施すのも違うだろう。そう考えた俺はマイルーンにある遺跡の調査を進めてみようと決めていた。
「そんなに真剣にとらなくてもいいんですよ? かなり無理なことを言っている自覚はありますから」
考え込む俺を見てマリーが心配してそう聞いてくる。
「あ、いや。どっちにしてもせっかくマイルーンに行くのだから大森林地区にある遺跡も行ってみたいなと考えていたんだ」
「遺跡かぁ。私も戦えたらついて行きたいですけど絶対に足手まといになるからなぁ」
「遺跡は危険がいっぱいだからな。俺も過去に何度か危ない目にあったこともあるしマリーさんみたいな女の子には難しいだろう。まあ、どちらにしても冒険者ギルドで話を聞いてから決めようと思ってるよ」
俺はそう言うと食事の片付けをしてから「明日はいよいのマイルーンだ。初めての国だし気を引き締めて行くから良く休んでおくんだぞ」と言って毛布を手渡した。
「へぇ、使われるかたはそれほど多くないのですか?」
俺が横からそう聞くと「波があるのでなんとも言えませんが今日は少ないですね。ですが、もしかすると急に増える可能性も無くはないです」と答えた。
「つまりは分からないってことですね。ならば野営は広場の端を使った方が良いですね?」
「いや、そこまで気をまわさなくても大丈夫ですので自由にお使いください。それと食事に関しては砦の食堂を使ってもいいですが料金は別途かかりますのでご了承ください」
案内してくれた女性は丁寧にそう言って説明をしてくれた。
「食事は食堂を使わせてもらうかい?」
俺がマリーにそう聞くと「多分ですけどアルフさんが作ったほうが美味しいと思います」とだけ答えてくれた。
「それは俺に作って欲しいと言ってるのかい?」
「さあ、どうでしょう? 私は正直に思った事を言っただけですよ」
少し照れたような表情を見せながらマリーがそう言う。
「仕方ないな。任せておけ」
俺はそう言うと食事は自分たちで準備すると伝えて野営の準備を始めた。
「時間的にはまだ早いが町とは違って他に見るところは無いし、少し手の込んだ料理を作ってみようと思うんだが馬車に積んである食料を使わせてもらってもいいか?」
明日か遅くとも明後日には目的地に到着する予定なので俺がマリーに料理を振る舞うのも最後になるかもしれないと思いとっておきの料理を作ることにした。
「何を作るつもりなんですか?」
「それは出来てからのお楽しみってことで。確か油はあったよな」
「油ですか? あるはずですけど入れ物が陶器ですからアルフさんのマジックバックに仕舞ってあると思いますよ」
「そう言えばそうだったな。確かこのあたりに……。ああ、あったあった。これがあればあれが作れるぞ」
俺はそう言って油の入った容器と以前狩ったボアの肉を取り出してまな板の上に乗せる。
「あとは少し固くなってきたパンを砕いて切ったボア肉に卵と一緒にまぶしておいて鍋に入れた油が煮立ってきたらコイツを投入する。色がついたらサッと皿に上げて風魔法で余分な油をきってやればボアのサクサク揚げの完成だ」
俺はさらに馬車に積んであった柔らかいパンとマジックバックに入れておいた葉物野菜を取り出してパンに置き特製のタレをたらしてからパンで挟み込んだ。
「こうすれば一度にパンも肉も野菜も食える。時間のない時や野営の時なんかだと便利なんだよ」
「うわっ! また美味しそうな物を作ってくれましたね。このままだと私はアルフさんの食事無しには生きられなくなるかもしれません」
マリーはそう言うとさらに俺の言葉にツッコミをいれた。
「それにアルフさんは時間の無いときや普通の野営時に揚げ物なんてするんですか?」
「ははは、確かにそうだな。その場では作るのは難しいよな。だが、そんなときは先に作ってマジックバックに入れておけばいつでも食えるって訳だ」
「そうですよね。マジックバックって本当に便利ですけどなかなか手に入らないですもんね。アルフさんも遺跡で見つけたって言ってましたし、もしまた遺跡で発見したら私に安く卸してください……って、ちょっと図々しいかな?」
「そうだな。そうしてやりたいが、そうそう見つかるものでもないからあまり期待はしないでいてくれよ」
そういえば以前、俺はマジックバックを説明した時に遺跡で発見したと言ってしまったことがあった事を思い出してそんな嘘をついてしまった。
「約束ですからね」
マリーの言葉に俺はまたひとつ嘘から出た約束を作ってしまったなと内心後悔をした。
(しかし、これは本格的に遺跡の調査をしないと駄目かもしれないな)
マジックバックは魔道具屋が作るもの以外に遺跡で発見されたとの報告もあるので不可能ではないのだろうがその確率は極めて低いものだと安易に予想できていたが当然買い与えるほどの金はあるはずもないし他人であるマリーにそれを施すのも違うだろう。そう考えた俺はマイルーンにある遺跡の調査を進めてみようと決めていた。
「そんなに真剣にとらなくてもいいんですよ? かなり無理なことを言っている自覚はありますから」
考え込む俺を見てマリーが心配してそう聞いてくる。
「あ、いや。どっちにしてもせっかくマイルーンに行くのだから大森林地区にある遺跡も行ってみたいなと考えていたんだ」
「遺跡かぁ。私も戦えたらついて行きたいですけど絶対に足手まといになるからなぁ」
「遺跡は危険がいっぱいだからな。俺も過去に何度か危ない目にあったこともあるしマリーさんみたいな女の子には難しいだろう。まあ、どちらにしても冒険者ギルドで話を聞いてから決めようと思ってるよ」
俺はそう言うと食事の片付けをしてから「明日はいよいのマイルーンだ。初めての国だし気を引き締めて行くから良く休んでおくんだぞ」と言って毛布を手渡した。
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