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第52話【元勇者、ラウの村へ向けて出発する】
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「それでは出発します。少々早めに進めますので索敵はしっかりとお願いします」
ガーネットは俺にそう伝えると馬に魔法をかける。どうやら強化系の魔法のようで馬車は通常の5割増しのスピードで走り出した。
「うおっ!? これは早いが本当に大丈夫なのか?」
スピードが早ければ早いほど当然のように馬車は揺れが大きくなる。道も整備はされているが舗装されているわけではないので時々小石をふんだりしては小さく跳ねることも珍しくなかった。
「後ろに乗っているリッツさんは大丈夫なのか?」
「ギルマスは自分に強化の魔法をかけてるから大丈夫です。もともとはギルマスがこの走行方法を提案してきたのですから対策はしてあるのが当然かと」
「もしかしてガーネットさんも自身に魔法を?」
「当然です。強化魔法無しでこの揺れに耐えられる人はそう居るとは思えません。そういえばアルフさんは何もしていないように見えましたが大丈夫なのでしょうか?」
「いや、何も聞いてないから何も対策してないよ。ガーネットさんが普通にしているからおかしいとは思っていたけどそういうことだったんだな」
「強化魔法無しで普通にしていられるなんてアルフさんは相当にお強いみたいですね。少しだけ評価を上げておきます」
(なんの評価だよ?)
思わずツッコミを入れたくなるが後が怖いので大人しくスルーして前方の索敵に集中する。
「今のところ大きな反応はないが道すがら小さい獣の死体が転がっているのがいくつか確認できるから直前に他の馬車が通ったばかりなのかもしれないな。急いでいるのかもしれないが剣で切り捨ててそのままなのはあまり褒めれたものじゃないと思うがどんな奴らなんだ?」
「普通ならば街道に他の獣が寄ってくるので片付けて進むのがマナーなのですが、剣士しか居ない護衛メンバーだと焼却処分が出来ないので放置するケースも多々あるようです」
ガーネットは冷静にそう説明をしてくれる。
「片付ける暇がないくらい急いでいるのかもしれんな」
「どんな理由にしても迷惑なのは変わりませんが……」
「確かにな」
そう話しながらラウの村までの道のり半分を過ぎたあたりで休憩をとることになった。
「なかなか順調に進めているようだね」
ガーネットが準備してくれた簡易な食事を食べているとリッツが話しかけてきた。
「道中の障害がほとんど無かったですからね。おそらく前に別の馬車が先行していると思いますよ」
「ほう。早朝に出発したとしてもこの馬車のスピードで追いつけないとは相当にとばしているようだね。一体どこの馬車なのかな?」
「それは分からないですけどこの馬車のように強化魔法をかけているんじゃないのですか?」
「馬に強化魔法をかけるのはありえない話ではないが君も身をもって体験しただろうが乗っている者への負担が増えるのと護衛が歩きの場合は彼らの疲労が半端ないからやれて2割増しってところだろう。それにしたって無茶な進め方なんだがね」
自分は5割増しで強行しているのに普通にそう言えるところはやはりこの人も常識人ではないのかもしれないと考えた時、「ん? 今、君は私が常識がないと思わなかったかい?」とリッツがいきなり聞いてきた。
(やばい、表情に出ていたのか? やはりこの人は油断ならないな)
少し焦る俺だったが「いえ、べつにそんなことは無いですよ」ととぼけておいた。
「――もう1時間もすればラウの村に到着します」
ガーネットがそう言った時、俺の索敵魔法に反応があった。
「前方に複数の人の反応がある。おそらく商隊などの馬車で獣の反応も多数あることから戦闘中であると予測する」
「前方どのくらいですか?」
「このまま進めば数分後には接触する距離だな」
「一旦馬車を止めて私も索敵魔法を発動してみます」
ガーネットはそう言うと馬車を止めて魔法発動に集中するため目を閉じた。
「――間違いなさそうですね。ギルマス、どうされますか?」
たとえ馬車が襲われていたとしても目の前での事ならば助けに入るのが普通だが索敵魔法で分かった場合はこちらが被害を覚悟してまで救助する義務はない。本来の護衛たちが引き受けて当然だからだ。
「私は商業ギルドのマスターであって冒険者ギルドのマスターではない。今、別の依頼を遂行している冒険者に対して襲われている者を助けに向えと命令することは出来ない。だが、襲われているのが商隊ならば見捨てるわけにもいかんのだよ」
「つまり、助けに向かうって事ですね」
「仕方あるまい、知ってしまったからな。ただ、君たちふたりが参戦したからと言って戦況が変わるかは私にはわからんがな」
「まあ、相手次第ですかね。普通の獣程度ならばガーネットさんがリッツさんの傍に残っても俺がなんとかするつもりだ」
「それは頼もしいかぎりだな。ぜひ助けてやってお礼をガッポリ貰うがいい」
「あ、お礼は請求していいんだ?」
「当然だろう。私が証人となってあげるから存分にふっかけるがいい。但し、無事に助けた場合だがな」
「まあ、当然だな」
「では、急ぎ現場に急行しますのでしっかりと馬車につかまっていてください」
ガーネットはそう言うと馬車を全速力で走らせ始めた。
ガーネットは俺にそう伝えると馬に魔法をかける。どうやら強化系の魔法のようで馬車は通常の5割増しのスピードで走り出した。
「うおっ!? これは早いが本当に大丈夫なのか?」
スピードが早ければ早いほど当然のように馬車は揺れが大きくなる。道も整備はされているが舗装されているわけではないので時々小石をふんだりしては小さく跳ねることも珍しくなかった。
「後ろに乗っているリッツさんは大丈夫なのか?」
「ギルマスは自分に強化の魔法をかけてるから大丈夫です。もともとはギルマスがこの走行方法を提案してきたのですから対策はしてあるのが当然かと」
「もしかしてガーネットさんも自身に魔法を?」
「当然です。強化魔法無しでこの揺れに耐えられる人はそう居るとは思えません。そういえばアルフさんは何もしていないように見えましたが大丈夫なのでしょうか?」
「いや、何も聞いてないから何も対策してないよ。ガーネットさんが普通にしているからおかしいとは思っていたけどそういうことだったんだな」
「強化魔法無しで普通にしていられるなんてアルフさんは相当にお強いみたいですね。少しだけ評価を上げておきます」
(なんの評価だよ?)
思わずツッコミを入れたくなるが後が怖いので大人しくスルーして前方の索敵に集中する。
「今のところ大きな反応はないが道すがら小さい獣の死体が転がっているのがいくつか確認できるから直前に他の馬車が通ったばかりなのかもしれないな。急いでいるのかもしれないが剣で切り捨ててそのままなのはあまり褒めれたものじゃないと思うがどんな奴らなんだ?」
「普通ならば街道に他の獣が寄ってくるので片付けて進むのがマナーなのですが、剣士しか居ない護衛メンバーだと焼却処分が出来ないので放置するケースも多々あるようです」
ガーネットは冷静にそう説明をしてくれる。
「片付ける暇がないくらい急いでいるのかもしれんな」
「どんな理由にしても迷惑なのは変わりませんが……」
「確かにな」
そう話しながらラウの村までの道のり半分を過ぎたあたりで休憩をとることになった。
「なかなか順調に進めているようだね」
ガーネットが準備してくれた簡易な食事を食べているとリッツが話しかけてきた。
「道中の障害がほとんど無かったですからね。おそらく前に別の馬車が先行していると思いますよ」
「ほう。早朝に出発したとしてもこの馬車のスピードで追いつけないとは相当にとばしているようだね。一体どこの馬車なのかな?」
「それは分からないですけどこの馬車のように強化魔法をかけているんじゃないのですか?」
「馬に強化魔法をかけるのはありえない話ではないが君も身をもって体験しただろうが乗っている者への負担が増えるのと護衛が歩きの場合は彼らの疲労が半端ないからやれて2割増しってところだろう。それにしたって無茶な進め方なんだがね」
自分は5割増しで強行しているのに普通にそう言えるところはやはりこの人も常識人ではないのかもしれないと考えた時、「ん? 今、君は私が常識がないと思わなかったかい?」とリッツがいきなり聞いてきた。
(やばい、表情に出ていたのか? やはりこの人は油断ならないな)
少し焦る俺だったが「いえ、べつにそんなことは無いですよ」ととぼけておいた。
「――もう1時間もすればラウの村に到着します」
ガーネットがそう言った時、俺の索敵魔法に反応があった。
「前方に複数の人の反応がある。おそらく商隊などの馬車で獣の反応も多数あることから戦闘中であると予測する」
「前方どのくらいですか?」
「このまま進めば数分後には接触する距離だな」
「一旦馬車を止めて私も索敵魔法を発動してみます」
ガーネットはそう言うと馬車を止めて魔法発動に集中するため目を閉じた。
「――間違いなさそうですね。ギルマス、どうされますか?」
たとえ馬車が襲われていたとしても目の前での事ならば助けに入るのが普通だが索敵魔法で分かった場合はこちらが被害を覚悟してまで救助する義務はない。本来の護衛たちが引き受けて当然だからだ。
「私は商業ギルドのマスターであって冒険者ギルドのマスターではない。今、別の依頼を遂行している冒険者に対して襲われている者を助けに向えと命令することは出来ない。だが、襲われているのが商隊ならば見捨てるわけにもいかんのだよ」
「つまり、助けに向かうって事ですね」
「仕方あるまい、知ってしまったからな。ただ、君たちふたりが参戦したからと言って戦況が変わるかは私にはわからんがな」
「まあ、相手次第ですかね。普通の獣程度ならばガーネットさんがリッツさんの傍に残っても俺がなんとかするつもりだ」
「それは頼もしいかぎりだな。ぜひ助けてやってお礼をガッポリ貰うがいい」
「あ、お礼は請求していいんだ?」
「当然だろう。私が証人となってあげるから存分にふっかけるがいい。但し、無事に助けた場合だがな」
「まあ、当然だな」
「では、急ぎ現場に急行しますのでしっかりと馬車につかまっていてください」
ガーネットはそう言うと馬車を全速力で走らせ始めた。
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