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第二章 初デートのはずなのになんでこうなった??
第三話*side衛
しおりを挟む活動写真は音声のない白黒ムービーだ。スクリーンの横に弁士と呼ばれる人がいて一人で声を変え役を演じる。
テンポよい語り口調は落語家を彷彿とさせた。
「……あの、少、陽真様」
「ん?」
「俺でなく画面を見ませんか?」
親切なのか俺のほうがスクリーン側に座ったのは良いが、隣に座る少尉が明らかに横向きで俺をガン見してくる。
「気にしないで、僕は初めてではないから。今日は衛を見ていたいんだ」
いや、気にしないとか無理ですが?? と、素直に言えればよかったが、にこりと甘く微笑まれてしまえば、まぁそれくらいいいか、とか思ってしまう俺なのである。
ぐっ、全ては一条寺少尉がかっこいいのがいけない。
少女漫画の中でも当て馬ながらその見た目と立ち居振る舞いで常に人気のあったキャラだ。
所詮雑魚モブキャラの俺が勝てるわけがないのである。
精神統一して活動写真に意識を向けようとした時、なにか違和感を感じた。
「衛?」
「少尉……なにか、変です」
「……っ! 妖魔か?」
「来ます!」
弁士の声がプツッと途切れたかと思えば、視界がグニャリと歪み薄暗かったホールの中は蛍光色でデタラメに塗りたくられた空間へと変化した。
妖魔により作られた異空間である。彼らはここに閉じ込めた人間を餌として屠る。
それに対抗できる力が退魔の力だ。
突然のことに観客たちの悲鳴があちこちから聞こえる。結構な人数が囚われてしまったようだ。
状況を確認しようと視線を走らせれば、スクリーンだったものがもぞりと動き一斉に飛び立つのが見えた。
カラスのように見えるが鳥の形をした無数の妖魔だ。
とっさに俺は退魔武器である拳銃を宙空から取り出し発砲する。
「飛行型か、数が多いな。抑えられるか?」
一条寺少尉の問いかけに鳥型妖魔を撃ち落としつつ、自分の実力や敵の状況を確認する。
「これ以上数が増えなければ俺だけで抑えられます」
甘く見積もってしまえば全員を危険に晒すことになる。
俺の銃は実物とは違い、弾の充填は地面に一発空打ちするというゲームセンターのシューティングゲームのような作りだ。しかも二丁使いのため基本的に連射し放題で弾切れがない。
一気に襲いかかられると撃ち落としきれないが、今いる数なら対応可能と判断した。
「分かった。一般人の強制送還は僕が行う。妖魔の方は任せたよ」
「承知いたしました」
俺の隣りにいた少尉が離れていくのを感じながら、視線は妖魔の群れから離すことなく狙いを定める。
一条寺少尉の退魔武器はサーベルだ。状況的に見ても俺が妖魔に対応し、少尉は囚われてしまった非戦闘員を異空間から逃がす方が効率的である。
「……せっかくの、デートだったのに!」
積極的すぎる一条寺少尉の態度に戸惑っていたのは確かだが、これでも今日を楽しみにしていたのだ。
モブキャラでなんの取り柄もない俺が、イケメンキャラの一条寺少尉と仕事以外でご一緒するなどありえないと思っていたのに、恋人になり、任務以外でも一緒にいることを許された。
その記念すべき日なのである。
俺は待ち受けるだけでなく、鳥型妖魔へ近寄りつつ一体、また一体と的確に撃ち落とし数を減らしていった。
あと数匹、というところでカラスのような妖魔が突然水のようなモノを吐き出した。
「……なっ!」
とっさに顔を庇ったが、攻撃を受けた服が蒸気を発しつつ溶けていく。その一瞬の隙を妖魔たちは見逃さず、四方から囲まれ水のようなモノを浴びせられた。
皮膚がただれたら動けなくなる! 染み込む前に終わらせなければ!
水を吐くときは止まっている妖魔たちを端から狙い撃つ。
あと、三匹。
狙いを定めてトドメを刺そうとした俺の両手首が、背後から突然誰かに掴まれた。
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