まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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それでも「好き」が止まらない

4.「早く会いたかったから」

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 特に変化もない日々を過ごしていれば、いつの間にかテレビの話題はハロウィンからクリスマスに移っていた。

 そんな中、各務くんからメッセージが届く。実に一ヶ月ぶりである。

 そういえば暦は既に十一月に入っている。やっぱり学祭で忙しかったのだろう。「来週ならいつでも平気」との連絡に、即座に「俺も!」と返信しかけて手を止めた。
 はやる気持ちを抑えて深呼吸をする。落ち着け俺。これではまるで待ち構えていたみたいじゃないか。今はまだ午前中で、普通に仕事中である。スマートな大人の男なら焦りは禁物だ。

 俺は高まる気持ちを抑えつつ、昼休みに返事をすることにした。

 連絡を取り合い四日後の日曜日。
 久しぶりに各務くんとの食事会である。
 食べたいものを聞いたところ、何でもいいがウチで食べたいというのでカレーにすることにした。おうちカレーである。俺はこだわらないので味付けは市販のルーにお任せだ。この間の各務くんが作ったカレーと比べるとシンプルだが、ちょっとお高いステーキ肉を使うことでグレードアップすことにする。美味しい肉ならカレーにしても美味しいだろう。たぶん。

 それにしても……と鍋を準備して思う。あんなにやる気にならなかった食事の準備が楽しくて仕方ないのは何故なのか。
 浮かれた気分で昼から支度を始め、玉ねぎを刻んでいたら涙が出てきた。

「うっ、目に染みる……」

 ポロポロ、ポロポロと後から後から涙が出てくる。俺の涙あふれすぎじゃないだろうか。思わず苦笑していればスマホが鳴った。

「いらっしゃい、かがみくん」
「は? え、なに……どうした……え」

 扉を開けて俺を見た各務くんがオロオロしている。スマホは夕方に来ると思っていた各務くんからの「着いた」というメッセージだった。慌てて玄関に出たため、泣いていたのを忘れてそのまま出迎えてしまった。

「あっごめ、これ……玉ねぎ切ってて」
「あー……なんだ、ビビった」

 俺が答えれば心底安堵したように各務くんが呟く。確かに訪ねた相手が泣きながら出てきたらビビるよね。ごめん。

「今日って夜だと思ってたんだけど、お昼に約束したっけ?」
「いや、夜。…………早く会いたかったから」
「!!! そ、う、そうか。えっと」

 いつになく真面目な顔で見つめられ、ドキンと心臓が高鳴る。こういう場合はなんと返すのが正解なんだろう。見つめ合うこと数秒。

「入っていい? ケーキ買ってきたから冷蔵庫入れたいんだけど」
「え、ああ、うん、もちろん。どうぞどうぞ!」

 落ち着いた各務くんと入れ替わるように俺がオロオロしていれば、各務くんが小さく微笑んだ。睨んでくることが多いけど、極希に柔らかい表情を浮かべる時があって正面から見てしまうと呼吸が止まりそうになる。

 俺、もしかしなくても各務くんのこと好きすぎなんじゃないだろうか……。
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