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もののけとの出会い

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 私の質問に泣きそうになっていた葉子ちゃんだったが、緑寿庵清水の金平糖でご機嫌になった。チョロいね。……いや、素直な子だよね。本当に妖狐として100年も生きているのかと不安になるくらい素直だわ。

「ダギニ・バザラ・ダトバン・ダキニ・アビラ・ウンケン・オン・キリカク・ソワカ!」

 そんな葉子ちゃんが机の上から飛び降りるとなにかを唱えだした。昔に読んだ漫画で書かれていたやつかな? 妖怪退治をしてた気がする。そんな呪文を唱えてどうするんだろう? 私が軽く考えていると、葉子ちゃんの身体が淡く光って包み込み、光が落ち着くと可愛らしい幼女がいた。ケモミミと尻尾が付いてる。

 どうしたら良い?

「どうじゃ! 妾の真の姿を見て驚いたであろうが!」

 葉子ちゃんが胸を張ってドヤ顔してるけど。それよりも! そんな事よりも! ケモミミと尻尾がピコピコと動いてるのよ! なにこの可愛い生き物! いや、可愛いもののけ! どうしたらいいのかな!?

「ふふん。妾の真の姿をみて言葉もないか。うむうむ、分かるぞ。この妖力を感じ取ったのなら、さもあらん。今までの非礼を詫びて、ひれ伏すが良いぞ、美裕」

 違うのだよ葉子ちゃん。そのケモミミと尻尾なのだよ。そして、その幼女の姿なのだよ。ふふふ。本当に可愛いよね。その姿が私を狂わせるのだよ。ふっふっふ。

「ちょっと待て! なぜ息が荒い? 来るな! 近付くでないわ! 怖い!」

 酷いなー。人を変態を見る目で怯えないで欲しいなー。私が葉子ちゃんに変な事をするわけないじゃん。え? 洗濯機で回すとか、水責めにするって言ってただろうって?

 誰だよ! そんな奴! この私が退治してくれるわ!

「お主じゃ! さっきまでお主が言っておったのじゃ!」

 えー。私がそんな事を言うわけないじゃん。こんなに! こんなにだよ。本当に可愛い幼女な妖狐の葉子ちゃんに対して酷い事を言うわけないじゃん。だからこっちにおいでよー。なにもしないよー?

「ほーら、怖くない。怖くないからねー。ふふふ、安心して良いよー」

「怖いのじゃ! 来るでない! 離せ! にゃー! こ、こりゃ! 耳を触るでない! 尻尾を撫でるでない! やめんか! 頬ずりするでない! 離せー。離すのじゃー」

 無理むり。こんな素敵なモフモフを目の前に、ましてや可愛い幼女ちゃんを愛でないなんて選択肢は私の中にはないのだよ。捕まえたからには30分は思う存分に愛でさせてもらうからね。

「30分ももてあそばれてたまるものか!」

 あれ? 心の声が漏れてる?

「ダダ漏れじゃー。はっきりと喋っておるわー。みゃー。そこを触るでない! にゃ! ダメじゃ! やめるのじゃー」

 大丈夫だよー。全てを私に任せれば良いのだよー。

 やっぱりテンションがおかしくなっている私は、本当に葉子ちゃんを30分間で続けたのであった。
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