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難題クリア
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キリウスの所作がおかしくてハーベストとティナはコロコロと笑った。
ドアがノックされリアがお茶を運んできた。
小さなティーテーブルにトレイを置くと礼儀正しい所作で下がっていく。
これも訓練の賜物だ。
ティナが淹れたカモミールティーのカップを受取ながらハーベストが言った。
「レディティナ。ランバーツ伯爵夫人は私の遠縁に当たるのでしたね?申し訳ないがお名前を教えていただけますか?」
「はい。義母はベルーシュと申します。詳しくは存じませんがアルベッシュ王家の末端の家系だと聞き及んでおります。旧姓は確かスぺクトだったかと・・・」
「ああ・・・スぺクト家なら確かに親戚ですね。曾祖父の何番目かの弟が大公として治めた地域がスぺクトだったような‥‥随分前に途絶えた家名だったような・・・」
「そうなのですか?父と義母は二人の娘を連れて実家に向かったはずなのですが・・・」
「それはおかしいですね。お気になるようでしたら調べてみましょうか?」
「ええ、父は重い病で・・・気がかりですわ」
ハーベストの目配せに小さく頷いたキリウスが部屋を出た。
遠縁とはいえ未婚の男女が部屋に二人だけというわけにはいかないので、ドアを開けたままにして護衛の騎士が立ちふさがった。
少し不安げな顔をするティナをハーベストは見詰めていた。
目線を合わせないように配慮しながらも様子を伺うティナは、ハーベストの表情から悪印象は無いと感じた。
(よっしゃ!難題クリア!)
絶妙なタイミングでビスタが夕食の準備が整ったことを告げに来た。
食堂はロビー全体を使うことにしている。
没落したとはいえ仮にも伯爵家だ。
二人一部屋であれば部屋数も十分ある。
ハーベストはティナをエスコートしてくれた。
ロビーに降りると騎士たちは全員立って待っていた。
(はぁぁ・・・さすがねぇ・・・うふふふハンサムさんの多い事!眼福だわ)
ティナの手をとったままハーベストはロビーの中央まで進みまわりを見回した。
「こちらは快く私達を受け入れて下さったティナロア・ランバーツ伯爵令嬢だ。ランバーツ家は私の遠縁にも当たる家柄であることを忘れず敬意をもって過ごしてほしい」
「はっ!」
「それとレディティナは畏まった呼び方は好まれないとの事なので、みなにティナロア嬢と呼ぶことを許可して下さった。ちなみにレディティナと呼んでいいのは私だけだからな!」
「はっ!」
「みな疲れたことだろう。今夜はご厚意に甘えてゆっくりと寛いでくれ。以上だ」
「はっ!ありがとうございます!」
ハーベストがティナに向かって極上の微笑を向けた。
少しはにかむような笑顔で返すティナ。
騎士たちはそれぞれのテーブルについて談笑を始めた。
一気に場が和んだようでティナはホッと息を吐いた。
若い騎士たちはビスタとリアを手伝って料理やワインを運んでいる。
ティナも手伝うためその場を離れようとしたが、ハーベストはティナの手を離さない。
「殿下・・・あの・・・ハーベスト様・・・私もお運びをいたしますので、お手を・・・どうか・・・」
まだ自分がティナの手を持っていたことに驚いてハーベストがビクッとした。
「あっ・・・失礼。レディ?今お運びをすると仰いましたか?」
「はい。いつもしておりますし、この屋敷の使用人はあの二人だけでございますので」
「この屋敷をここまで快適に保っている使用人が二人だけですと?」
「はい・・・本当にお恥ずかしいですわ・・・」
キリウスがチーズとワインを焼きたてのパンと一緒に二人の前に並べた。
ハーベストはティナにワイングラスを渡して三人で乾杯する。
ドアがノックされリアがお茶を運んできた。
小さなティーテーブルにトレイを置くと礼儀正しい所作で下がっていく。
これも訓練の賜物だ。
ティナが淹れたカモミールティーのカップを受取ながらハーベストが言った。
「レディティナ。ランバーツ伯爵夫人は私の遠縁に当たるのでしたね?申し訳ないがお名前を教えていただけますか?」
「はい。義母はベルーシュと申します。詳しくは存じませんがアルベッシュ王家の末端の家系だと聞き及んでおります。旧姓は確かスぺクトだったかと・・・」
「ああ・・・スぺクト家なら確かに親戚ですね。曾祖父の何番目かの弟が大公として治めた地域がスぺクトだったような‥‥随分前に途絶えた家名だったような・・・」
「そうなのですか?父と義母は二人の娘を連れて実家に向かったはずなのですが・・・」
「それはおかしいですね。お気になるようでしたら調べてみましょうか?」
「ええ、父は重い病で・・・気がかりですわ」
ハーベストの目配せに小さく頷いたキリウスが部屋を出た。
遠縁とはいえ未婚の男女が部屋に二人だけというわけにはいかないので、ドアを開けたままにして護衛の騎士が立ちふさがった。
少し不安げな顔をするティナをハーベストは見詰めていた。
目線を合わせないように配慮しながらも様子を伺うティナは、ハーベストの表情から悪印象は無いと感じた。
(よっしゃ!難題クリア!)
絶妙なタイミングでビスタが夕食の準備が整ったことを告げに来た。
食堂はロビー全体を使うことにしている。
没落したとはいえ仮にも伯爵家だ。
二人一部屋であれば部屋数も十分ある。
ハーベストはティナをエスコートしてくれた。
ロビーに降りると騎士たちは全員立って待っていた。
(はぁぁ・・・さすがねぇ・・・うふふふハンサムさんの多い事!眼福だわ)
ティナの手をとったままハーベストはロビーの中央まで進みまわりを見回した。
「こちらは快く私達を受け入れて下さったティナロア・ランバーツ伯爵令嬢だ。ランバーツ家は私の遠縁にも当たる家柄であることを忘れず敬意をもって過ごしてほしい」
「はっ!」
「それとレディティナは畏まった呼び方は好まれないとの事なので、みなにティナロア嬢と呼ぶことを許可して下さった。ちなみにレディティナと呼んでいいのは私だけだからな!」
「はっ!」
「みな疲れたことだろう。今夜はご厚意に甘えてゆっくりと寛いでくれ。以上だ」
「はっ!ありがとうございます!」
ハーベストがティナに向かって極上の微笑を向けた。
少しはにかむような笑顔で返すティナ。
騎士たちはそれぞれのテーブルについて談笑を始めた。
一気に場が和んだようでティナはホッと息を吐いた。
若い騎士たちはビスタとリアを手伝って料理やワインを運んでいる。
ティナも手伝うためその場を離れようとしたが、ハーベストはティナの手を離さない。
「殿下・・・あの・・・ハーベスト様・・・私もお運びをいたしますので、お手を・・・どうか・・・」
まだ自分がティナの手を持っていたことに驚いてハーベストがビクッとした。
「あっ・・・失礼。レディ?今お運びをすると仰いましたか?」
「はい。いつもしておりますし、この屋敷の使用人はあの二人だけでございますので」
「この屋敷をここまで快適に保っている使用人が二人だけですと?」
「はい・・・本当にお恥ずかしいですわ・・・」
キリウスがチーズとワインを焼きたてのパンと一緒に二人の前に並べた。
ハーベストはティナにワイングラスを渡して三人で乾杯する。
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