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番の意味
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気を取り直してティナが明るい口調でジュリアに言う。
「ジュリア・・・私ね、今はちょっとお金持ちなの。だからこの教会を買おうと思うわ。建て直しましょう。そしてあなたが管理してくれるとうれしいわ」
「えっ?そんなことができるの?」
「ええ、今の私なら可能よ。しかも可及的速やかに着手できるわ。だから安心してここで暮らしてほしいの。マダムマリアンの意志は私が継ぐわ。これも神の思し召しよ。ねえ?アル?」
「ああ、神がそう望んでいる。そして新たに赴任してくる神官は神の意志を確実に受け継ぐ天使のような人物だ。その者の下で神官としての修行を積めば良い。神官は二人だ。女性と男性のな」
「すでにそんなに細かいところまで?」
「ああ、今伝えたから絶対に実現するさ」
「・・・?」
ティナが慌てて口をはさんだ。
「とにかく!全部上手くいくから。姉さんに任せておきなさい!」
「は・・・はい・・・」
「じゃあ今日のところは帰るわね。シェリーや子供たちによろしく伝えてちょうだい。それとマダムマリアンのお墓の場所知ってる?」
「ええ、ローレンス教会の墓地です」
「ああ、あのバラ園のきれいな教会ね?マダムらしい場所ね・・・明日にでも報告してくるわ。それと・・・母さんのお墓は?」
「町営墓地です。東側の端にありますよ・・・私は仕事があるのでご一緒できませんが」
「わかったわ。お互いに今できることを精一杯頑張って生き抜きましょうね」
「はい。姉さん。お会いできて本当にうれしかった・・・どうぞまた来てくださいね」
「ええもちろんよ。でもなかなかこちらに来ることができないの。仕事というか重大な使命があってね・・・代理人を寄こすから。教会の件は心配しなくていいわ。詳しいことは手紙を書くわね」
「はい。わかりました。どうぞお元気で。義兄さんも・・・姉さんをよろしくお願いします」
「おっ・・・おう!安心してくれ。神の名に賭けて誓う」
「神の名・・・義兄さんって楽しい方ですね。それになんというか・・・不思議と心が安らぎます」
「うん。よく言われる。まあ俺を信じてまっすぐ正直に生きてくれ」
「はい!」
ティナは苦笑いをしながらそっとジュリアに近づき財布を渡した。
「姉さん!これはダメですよ」
「いいの。役立ててちょうだい。あまり入ってないから気にしないで。子供たちの食費の足しにして。あなたもきちんと食べること!欠食はダメよ?わかった?」
「うん・・・ありがとう姉さん。甘えるね」
「私こそありがとう。あなたという存在がいるだけで今日まで生きてきた意味があったわ」
二人はしっかりと握手を交わし別れを惜しんだ。
動き出した車の中でティナは静かに泣き続けた。
アルフレッドはティナの手を強く握ったまま何も言わなかった。
車は静かに二人を運ぶ。
車窓を流れる都会の光がティナの顔に光と陰を交互に映していた。
「ねえアル。この街は美しいでしょう?」
「ああそうだな」
「でもね・・・私は夜になると真っ暗で、星の光だけが美しいあの時代の方が懐かしい」
「そうだな。あの時代は善と悪がわかりやすいから、お前に合っているかもしれないな」
「善と悪か・・・私はどっちなのかしら。あの人たちにとって私は偽物でしょう?」
「偽物などではないさ。それに善と悪など表裏一体だ。ある者にとっては善でも他者にとっては悪となる。そしてお前はそのどちらでもないが、これだけは言える」
「何?」
「お前はこの上なく美しい魂を持っている」
「アル・・・神に言われると恥ずかしくていろいろ懺悔したくなるわ」
「ははは。懺悔ならいくらでも聞くぞ。お前は俺が惚れた女だ。もっと自信を持てよ」
「でもあなたにはナサーリアという番がいるじゃない」
「そうだな。ナサーリアは間違いなく俺の大切な大切な番だ。ところでお前って神の番の意味わかってる?」
「夫婦になるって事でしょう?」
「ああ・・・やっぱり誤解していたか」
「どういうこと?」
「神の番というのはな、夫婦のようで夫婦ではない。わかりやすく言うと唯一無二の存在だが、ただそれだけなんだ」
「ジュリア・・・私ね、今はちょっとお金持ちなの。だからこの教会を買おうと思うわ。建て直しましょう。そしてあなたが管理してくれるとうれしいわ」
「えっ?そんなことができるの?」
「ええ、今の私なら可能よ。しかも可及的速やかに着手できるわ。だから安心してここで暮らしてほしいの。マダムマリアンの意志は私が継ぐわ。これも神の思し召しよ。ねえ?アル?」
「ああ、神がそう望んでいる。そして新たに赴任してくる神官は神の意志を確実に受け継ぐ天使のような人物だ。その者の下で神官としての修行を積めば良い。神官は二人だ。女性と男性のな」
「すでにそんなに細かいところまで?」
「ああ、今伝えたから絶対に実現するさ」
「・・・?」
ティナが慌てて口をはさんだ。
「とにかく!全部上手くいくから。姉さんに任せておきなさい!」
「は・・・はい・・・」
「じゃあ今日のところは帰るわね。シェリーや子供たちによろしく伝えてちょうだい。それとマダムマリアンのお墓の場所知ってる?」
「ええ、ローレンス教会の墓地です」
「ああ、あのバラ園のきれいな教会ね?マダムらしい場所ね・・・明日にでも報告してくるわ。それと・・・母さんのお墓は?」
「町営墓地です。東側の端にありますよ・・・私は仕事があるのでご一緒できませんが」
「わかったわ。お互いに今できることを精一杯頑張って生き抜きましょうね」
「はい。姉さん。お会いできて本当にうれしかった・・・どうぞまた来てくださいね」
「ええもちろんよ。でもなかなかこちらに来ることができないの。仕事というか重大な使命があってね・・・代理人を寄こすから。教会の件は心配しなくていいわ。詳しいことは手紙を書くわね」
「はい。わかりました。どうぞお元気で。義兄さんも・・・姉さんをよろしくお願いします」
「おっ・・・おう!安心してくれ。神の名に賭けて誓う」
「神の名・・・義兄さんって楽しい方ですね。それになんというか・・・不思議と心が安らぎます」
「うん。よく言われる。まあ俺を信じてまっすぐ正直に生きてくれ」
「はい!」
ティナは苦笑いをしながらそっとジュリアに近づき財布を渡した。
「姉さん!これはダメですよ」
「いいの。役立ててちょうだい。あまり入ってないから気にしないで。子供たちの食費の足しにして。あなたもきちんと食べること!欠食はダメよ?わかった?」
「うん・・・ありがとう姉さん。甘えるね」
「私こそありがとう。あなたという存在がいるだけで今日まで生きてきた意味があったわ」
二人はしっかりと握手を交わし別れを惜しんだ。
動き出した車の中でティナは静かに泣き続けた。
アルフレッドはティナの手を強く握ったまま何も言わなかった。
車は静かに二人を運ぶ。
車窓を流れる都会の光がティナの顔に光と陰を交互に映していた。
「ねえアル。この街は美しいでしょう?」
「ああそうだな」
「でもね・・・私は夜になると真っ暗で、星の光だけが美しいあの時代の方が懐かしい」
「そうだな。あの時代は善と悪がわかりやすいから、お前に合っているかもしれないな」
「善と悪か・・・私はどっちなのかしら。あの人たちにとって私は偽物でしょう?」
「偽物などではないさ。それに善と悪など表裏一体だ。ある者にとっては善でも他者にとっては悪となる。そしてお前はそのどちらでもないが、これだけは言える」
「何?」
「お前はこの上なく美しい魂を持っている」
「アル・・・神に言われると恥ずかしくていろいろ懺悔したくなるわ」
「ははは。懺悔ならいくらでも聞くぞ。お前は俺が惚れた女だ。もっと自信を持てよ」
「でもあなたにはナサーリアという番がいるじゃない」
「そうだな。ナサーリアは間違いなく俺の大切な大切な番だ。ところでお前って神の番の意味わかってる?」
「夫婦になるって事でしょう?」
「ああ・・・やっぱり誤解していたか」
「どういうこと?」
「神の番というのはな、夫婦のようで夫婦ではない。わかりやすく言うと唯一無二の存在だが、ただそれだけなんだ」
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