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リベンジ計画

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ハーベストに抱かれたアーレントは、皇帝のクラバットを涎とビスケットでどろどろにして、縁どられたレースをちゅぱちゅぱと口に入れている。
そんな状況など一切気にせず四人の復讐計画は纏まりつつあった。

「あの女の長女を夜会に連れてきている方はキリウス様のご友人ですか」

リリアンがキリウスに聞いた。

「はい、近衛騎士時代の友人でレナード・オルガ伯爵といいます。信頼できる奴ですし、実はティナロア嬢とも面識がありますので、この計画にすぐに賛同してくれましたよ」

「私と面識が?ではあの時に滞在されていた方ですの?」

驚いた顔でティナが言った。

「そうです。あなたのフィッシュバーガーを一番多く食べたのは彼じゃないかな」

「許せんな・・・」

ハーベストが変なところに引っかかる。

「いやいや・・・お前はもっと凄いものを食べたじゃないか。あっ!母君の前で失言でした」

リリアンが扇で口元を隠しながら笑った。

「いいえ?我が娘をお気に召して戴けたのがハーベスト様で光栄ですわ」

「お恥ずかしい・・・」

ハーベストとティナが真っ赤になった。
こほんと咳払いをしてキリウスが続ける。

「レナードはご両親と兄上を流行り病で亡くして、家督を継ぐために騎士を辞めました。もともと次男でしたし騎士という職業柄、婚約者もいなかったので白羽の矢を立てたのです」

「ああ、ベラの彼氏(偽)の設定は結婚願望がない大金持ちの伯爵だったな?」

「そうそう、実はそこそこの家柄でそこそこの財産ですけどね。顔と体は折り紙付きです」

ティナが驚いたように口を開いた。

「なんだか人権を無視したような設定のようですが・・・二人はもうそういう関係に?」

「いえいえ、さすがに奴も女神であるティナロア嬢を虐待していたような女には勃起しない・・・いえ、心が動かないようで、のらりくらりと気だけ引いている状態です」

ティナが笑いをかみ殺した。

「宝石とかドレスとかで胡麻化しています。勿論資金はこちらで出していますから大丈夫ですよ。せいぜい自分に夢中なお坊ちゃんとベラには思わせておきましょう」

「なるほど・・・それでカジノへ誘いこむのですね?」

「はい、これも我々の仕込んだ店ですから失敗はありません。まずは勝たせて夢中にして、抜けられないほどのめり込ませたら一気につぶして娼館に売り飛ばします」

「なかなか大がかりな仕掛けですのね・・・母親の方は?」

「ああ、あの痴女は若い男に夢中です。もう抜け出せないでしょうね。娘の彼氏(偽)に借金してまで男娼に狂ってますよ」

「男娼ですか・・・」

「ええ、その男もこちらの手駒です。そろそろトドメの一撃を放とうかと思っています」

「トドメの一撃?」

「そろそろ借金の返済請求をね」

「まあ!借金ってどれくらいありますの?」

「ティナロア嬢があんなに苦労して渡したお金など一年で使い切っていましたからね。そろそろ城くらい買える程度には膨らんでいるんじゃないかな」

「城・・・」

「その金を立て替えると申し出るのが、貴族の中では有名なババ専変態サディスト、ヌーベル男爵です」

「ババ専・・・変態・・・サディスト・・・」

ティナは眉間にしわを寄せた。
ハーベストはアーレントの耳を塞いでキリウスを睨んだ。

「お前・・・もう少し言葉を選べ」

「ハーベスト、大丈夫だ。三歳児にはわからない」

「それにしてもだ!」

「・・・続けますね。ヌーベル男爵は大金持ちなのですよ。まあ親のお陰ですがね。彼の父親が男爵位を買っただけのまがい物の貴族です。べルーシュを嬲れるのなら喜んで払うと約束しましたからね、我々の出費も回収できます」

リリベルが笑い声をあげた。

「さすがですわ。抜かりがありませんのね」

「おほめ戴き光栄です。しかし、これもすべてあの母娘の動向を追い続けておられたリリアン様のお陰です。我々は借金返済を迫られて絶望して売られるベラと、変態に首輪をされて連れていかれるべルーシュを見送ってやりましょう」

「なるほど・・・お母様が情報源・・・」

ティナは横目でリリアンを見た。
キリウスが人の悪い顔で言う。

「ティナをあんなゲスヤロウに売り飛ばした奴らですからね。百倍返しです」

ティナが肩を竦めながらキリウスに言った。

「心の底からキリウス様がお味方でよかったと思いましたわ」

「・・・誉め言葉と受け取っておきましょう。それでご相談したいのが次女です」

「ベニスですわね」

「あの子ブタちゃんは・・・どうしましょうね?あれだけ大きく育ってしまうと売るに売れずというところです」

リリアンが頬に手を添えて小首をかしげる。。

「私がいなくなってからできた子かしら?・・・ティナロアの思うようにすればいいわ。その娘もあなたに酷いことをしたの?」

「そうですわね・・・母親と姉の模倣という行動でした。それにしてもベニスはそんなに立派に大きく育っていますの?昔から口が動いていない時が無いほどではありましたが・・・食事かおやつかおしゃべりで」

「う~ん・・・今の彼女をどう表現すれば良いでしょう」

ハーベストが笑いながら言った。

「ティナの太ももより太い腕をしているぞ?前から見ても横から見てもシルエットが変わらない。理想体型がボンッキュッボンなら、あの娘はバンッドカーンドーンだな」

ハーベストとキリウスは思い出したのかぷっと吹き出した。

「そんなにですか・・・」

「ええ、そんなにです」

「それなら痩せさせてあげましょう」

「痩せさせる?」

「ええ、適度な運動と質素な食事。いま進めている治山工事に送って麓からの物資運搬係など良さそうではありませんか?」

「あの体ではすぐに膝を壊しそうですが・・・役に立ちますかね?」

「役に立たなければ修道院行きですわね」

ハーベストが不思議そうな顔をした。

「そんなに軽くて良いのですか?」

「ええ、あの子はただ無知な子供だっただけです。それにあの子に階段から突き落とされたお陰で私は性格が変わったのですわ。そう・・・生まれ変わったのです」

「ティナがそういうなら・・・」

キリウスが続けた。

「では姉と一緒にカジノに何度か行かせて、まあまあの借金を作らせましょう。その上でお前は娼館にも買ってもらえないから肉体労働だと告げてやればいいでしょう」

「それはなかなかにプライドも傷つきますわね・・・本気で痩せる気にもなるかも」

四人は口角を上げてニヤッとした。
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