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不穏な動き
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徐々に目立ってきたお腹のこともあり、ティナはほとんどの時間を自室で過ごしていた。
それでも毎日分科会からの報告書は回ってくるし、来客も絶えない。
しかもこれ以上無いほどに過保護に扱うハーベスト。
ハーベストはどんなに遅くなっても、どんなに疲れていても毎日ティナのもとに帰り、愛をささやき抱きしめて一緒に眠った。
あとひと月で産み月となる頃、懐かしい顔がティナのもとを訪れた。
「まあ!キアヌ殿下!」
「ティナロア嬢!あっ今はアルベッシュ帝国皇后陛下だったな・・・」
「そんなこと!キアヌ殿下お元気そうで何よりですわ。それに鬼神のごときご活躍、耳に入らぬ日はございません」
「ありがとう・・・そろそろだね?」
キアヌはティナのお腹に視線を移して明るく言った。
「はい。来月には」
「そうか。君が幸せそうで嬉しいよ・・・そうそう今日はね、とっても良い報告があるんだよ。連合軍の総責任者にシルバー卿が就任してくれることになった」
「シルバー卿・・・辺境伯様ですか?」
「うん。爵位の返上はどうしても譲らないんだ。だからシルバー卿」
「そうですか。それはとても良いお話ですわ」
「そうだろう?最後はナサーリアとララージュの泣き落としだったけどね」
「まあ!さすがのシルバー卿も聖女様と初孫様には勝てませんでしたのね」
「うん。そういうこと」
二人は楽しそうに笑いあった。
「そう言えば来週の条約調印式と私の事務総長就任式には君は出ないのだね?」
「ええ、このような体ですし・・・でもアドバイザリーとしては今後も関わらせていただきますので」
「うん。頼りにしているよ」
キアヌはティナに許可を得た後、そっとティナの腹を撫でた。
「この子が無事に産まれますように」
ティナはキアヌの心遣いに胸が熱くなった。
「かあさま!」
ノックもせずにアーレントが駆け込んできた。
皇太子教育も始まり、言葉遣いもしっかりしてきたアーレントにしては珍しい行動だ。
「まあ!アーレント、お行儀が悪いわ!」
「あ・・・申し訳ございません。キアヌ殿下、ご挨拶が遅くなりましたこと、そして嬉しさのあまり不躾な態度をとったこと、心よりお詫び申し上げます。えっと・・・ご無沙汰しております。殿下におかれましてはご健勝そうで何よりです」
アーレントが習ったばかりの礼を披露した。
キアヌは嬉しくてたまらないという表情を浮かべている。
「ご丁寧なご挨拶をいただき恐縮です、皇太子殿下。ふふふ・・・畏まるのはここまでだ。さあおいでアーレント」
アーレントがキアヌに抱きついた。
アーレントを抱き上げたキアヌが驚いて言う。
「やあ!重たくなったなぁ。それに筋肉も付いてきたんじゃないか?」
「はい!毎日訓練を欠かしておりません」
「それは素晴らしいね。お勉強も進んでいるかい?」
「はい!お勉強も楽しいです。でも終わった後のお茶の時間が一番好きです」
「ははは!私と同じだな」
コンコンという音が響きドアが開いた。
「これはキアヌ殿下、ご無沙汰しております」
キアヌがアーレントを降ろし最敬礼の姿勢をとった。
「アルベッシュ帝国の太陽、ハーベスト皇帝陛下にご挨拶申し上げます。この度も調印式会場をご用意いただき、関係者を代表して心より感謝の意を捧げます」
二人は固い握手を交わした。
「父さ・・・父上、調印式での盛装が届きましたので母上に見ていただこうと思い、急いで来たところです」
「そうか、父にもよく見せてくれ・・・うん!とてもよく似合う」
「ありがとうございます」
ティナもキアヌも嬉しそうに頷いた。
「さあ、アーレント。宰相殿にも見せてやってくれ。ああ、騎士を連れて行くんだぞ」
「はーい」
アーレントは楽しそうに手を振りながら部屋を出た。
ティナが侍女に新しいお茶を頼み、ソファーを勧める。
香り高いお茶がそれぞれの前に置かれた後、ハーベストが人払いをした。
「何か掴めましたか」
真剣な表情を浮かべたキアヌの言葉にハーベストが小さく頷いた。
それでも毎日分科会からの報告書は回ってくるし、来客も絶えない。
しかもこれ以上無いほどに過保護に扱うハーベスト。
ハーベストはどんなに遅くなっても、どんなに疲れていても毎日ティナのもとに帰り、愛をささやき抱きしめて一緒に眠った。
あとひと月で産み月となる頃、懐かしい顔がティナのもとを訪れた。
「まあ!キアヌ殿下!」
「ティナロア嬢!あっ今はアルベッシュ帝国皇后陛下だったな・・・」
「そんなこと!キアヌ殿下お元気そうで何よりですわ。それに鬼神のごときご活躍、耳に入らぬ日はございません」
「ありがとう・・・そろそろだね?」
キアヌはティナのお腹に視線を移して明るく言った。
「はい。来月には」
「そうか。君が幸せそうで嬉しいよ・・・そうそう今日はね、とっても良い報告があるんだよ。連合軍の総責任者にシルバー卿が就任してくれることになった」
「シルバー卿・・・辺境伯様ですか?」
「うん。爵位の返上はどうしても譲らないんだ。だからシルバー卿」
「そうですか。それはとても良いお話ですわ」
「そうだろう?最後はナサーリアとララージュの泣き落としだったけどね」
「まあ!さすがのシルバー卿も聖女様と初孫様には勝てませんでしたのね」
「うん。そういうこと」
二人は楽しそうに笑いあった。
「そう言えば来週の条約調印式と私の事務総長就任式には君は出ないのだね?」
「ええ、このような体ですし・・・でもアドバイザリーとしては今後も関わらせていただきますので」
「うん。頼りにしているよ」
キアヌはティナに許可を得た後、そっとティナの腹を撫でた。
「この子が無事に産まれますように」
ティナはキアヌの心遣いに胸が熱くなった。
「かあさま!」
ノックもせずにアーレントが駆け込んできた。
皇太子教育も始まり、言葉遣いもしっかりしてきたアーレントにしては珍しい行動だ。
「まあ!アーレント、お行儀が悪いわ!」
「あ・・・申し訳ございません。キアヌ殿下、ご挨拶が遅くなりましたこと、そして嬉しさのあまり不躾な態度をとったこと、心よりお詫び申し上げます。えっと・・・ご無沙汰しております。殿下におかれましてはご健勝そうで何よりです」
アーレントが習ったばかりの礼を披露した。
キアヌは嬉しくてたまらないという表情を浮かべている。
「ご丁寧なご挨拶をいただき恐縮です、皇太子殿下。ふふふ・・・畏まるのはここまでだ。さあおいでアーレント」
アーレントがキアヌに抱きついた。
アーレントを抱き上げたキアヌが驚いて言う。
「やあ!重たくなったなぁ。それに筋肉も付いてきたんじゃないか?」
「はい!毎日訓練を欠かしておりません」
「それは素晴らしいね。お勉強も進んでいるかい?」
「はい!お勉強も楽しいです。でも終わった後のお茶の時間が一番好きです」
「ははは!私と同じだな」
コンコンという音が響きドアが開いた。
「これはキアヌ殿下、ご無沙汰しております」
キアヌがアーレントを降ろし最敬礼の姿勢をとった。
「アルベッシュ帝国の太陽、ハーベスト皇帝陛下にご挨拶申し上げます。この度も調印式会場をご用意いただき、関係者を代表して心より感謝の意を捧げます」
二人は固い握手を交わした。
「父さ・・・父上、調印式での盛装が届きましたので母上に見ていただこうと思い、急いで来たところです」
「そうか、父にもよく見せてくれ・・・うん!とてもよく似合う」
「ありがとうございます」
ティナもキアヌも嬉しそうに頷いた。
「さあ、アーレント。宰相殿にも見せてやってくれ。ああ、騎士を連れて行くんだぞ」
「はーい」
アーレントは楽しそうに手を振りながら部屋を出た。
ティナが侍女に新しいお茶を頼み、ソファーを勧める。
香り高いお茶がそれぞれの前に置かれた後、ハーベストが人払いをした。
「何か掴めましたか」
真剣な表情を浮かべたキアヌの言葉にハーベストが小さく頷いた。
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