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「先ほど言った百年前のことだが……」
イースがウサキチの言葉に従い、家系図をたどる。
「ああ、これだな?」
イースの指先にジェネスという名前があった。
「この方も第二王子殿下だったのですね」
「うん、しかも生母は側妃で、出産後ほどなく亡くなっている」
「シューン殿下はこの方の生まれ変わりということですか?」
「生まれ変わりとは少し違うが、同じ宿命を持っているのだ。ジェネスも勇者だった。ジェネスの前はアーバンという王子だが、これも第二王子で側妃腹だ」
「不思議ですね」
「そして今回はシューンだが、この家系図を見てどう思う?」
「そうって?」
サリーが身を乗り出した。
イースもサムも一生懸命共通点を探している。
「なるほど、数年違いはあっても概ね百年単位で生まれているな」
「そうなのだ。あの邪神は息の根を断っても、百年したら復活するんだ。その命は間違いなく終わらせているのに、復活する……このメカニズムを解明しない限り、また百年後には姿を現すと言うことだ」
「もしや……」
イースがボソッと言った。
サリーはイースの顔を見た。
心持ち青ざめているようだ。
「イース殿下?」
「これはあくまでも予測だが、イースの考えはあながち間違ってはいないと思う」
「疫病……」
サリーはビクッと肩を震わせた。
「そうだ。百年単位で疫病が流行り、その翌年に邪神が誕生している」
「疫病ってどんなものなのですか?」
トーマス医師がサリーを見た。
「いつも同じというわけでは無いんだ。四百年前は体中にできものが出て、高熱と下痢によって体力が奪われる死病だった。三百年前は咳が止まらなくなって吐血、二百年前は体中に真っ赤な痣が浮きびあがって死に至った。そして百年前……野生の猿が持ち込んだとされる熱病が発生したよ」
イースが話し終えた瞬間、サリーのポケットからスローロリスが顔を出した。
「ひっ!」
サム隊長が仰け反った。
「それは?」
イースの声にサリーが慌てて答えた。
「シューン殿下です。お部屋に一人で残すのが不安で……でもこの種の猿は夜行性ですから、この時間帯はほとんど動きませんし、もし逃げても恐ろしいほど動きが緩慢ですから大丈夫です」
「そ……そうか……まあ、そうだな。一人で部屋に置いておくのは不安だものな。話を続けよう」
トーマスが発言する。
「その疫病が流行った後に邪神が復活するのだろうか? それともその前?」
「流行った後だったな。疫病で疲弊したところに、追い打ちを掛けるような形だ」
「ということは、まだ復活していない? でも奴らは生贄を捧げているのでしょう? 間近ということかな」
「恐らくまだ生まれていないのだと思う。人間でいると臨月辺りなのかもしれない。それで今はせっせと栄養を送り込んでいるのだろう」
「なるほど……」
その時、部屋の外から声がかかり、サムが臨戦態勢をとった。
「誰だ!」
「……あの……ライラです」
サムがドアを開けた。
「どうしたの? ライラ、休んでないとダメじゃないの」
サリーの声にライラが困ったような顔で答えた。
「うん、でも私が聞き知ったことを早く伝えた方が良いと思って……」
イースが頷いた。
「何か聞こえたことがあったのか?」
「はい、殿下。両親と神殿から来ていた男が話していたことをお伝えします」
「ああ、聞こう」
「はい、何でももうすぐやってくる悪魔の使いがこの国を病で満たすと言っていました。その使いは高熱と喉の痛みを発症させ、肺をダメにして死に至らせるのだと……」
「高熱と喉の痛み?」
「ええ、それに罹りたくなければ生贄を捧げるのと同時に、殿下を……シューン殿下の命を捧げよと……」
「なんと!」
イースは苦々しい顔でウサキチを見た。
イースがウサキチの言葉に従い、家系図をたどる。
「ああ、これだな?」
イースの指先にジェネスという名前があった。
「この方も第二王子殿下だったのですね」
「うん、しかも生母は側妃で、出産後ほどなく亡くなっている」
「シューン殿下はこの方の生まれ変わりということですか?」
「生まれ変わりとは少し違うが、同じ宿命を持っているのだ。ジェネスも勇者だった。ジェネスの前はアーバンという王子だが、これも第二王子で側妃腹だ」
「不思議ですね」
「そして今回はシューンだが、この家系図を見てどう思う?」
「そうって?」
サリーが身を乗り出した。
イースもサムも一生懸命共通点を探している。
「なるほど、数年違いはあっても概ね百年単位で生まれているな」
「そうなのだ。あの邪神は息の根を断っても、百年したら復活するんだ。その命は間違いなく終わらせているのに、復活する……このメカニズムを解明しない限り、また百年後には姿を現すと言うことだ」
「もしや……」
イースがボソッと言った。
サリーはイースの顔を見た。
心持ち青ざめているようだ。
「イース殿下?」
「これはあくまでも予測だが、イースの考えはあながち間違ってはいないと思う」
「疫病……」
サリーはビクッと肩を震わせた。
「そうだ。百年単位で疫病が流行り、その翌年に邪神が誕生している」
「疫病ってどんなものなのですか?」
トーマス医師がサリーを見た。
「いつも同じというわけでは無いんだ。四百年前は体中にできものが出て、高熱と下痢によって体力が奪われる死病だった。三百年前は咳が止まらなくなって吐血、二百年前は体中に真っ赤な痣が浮きびあがって死に至った。そして百年前……野生の猿が持ち込んだとされる熱病が発生したよ」
イースが話し終えた瞬間、サリーのポケットからスローロリスが顔を出した。
「ひっ!」
サム隊長が仰け反った。
「それは?」
イースの声にサリーが慌てて答えた。
「シューン殿下です。お部屋に一人で残すのが不安で……でもこの種の猿は夜行性ですから、この時間帯はほとんど動きませんし、もし逃げても恐ろしいほど動きが緩慢ですから大丈夫です」
「そ……そうか……まあ、そうだな。一人で部屋に置いておくのは不安だものな。話を続けよう」
トーマスが発言する。
「その疫病が流行った後に邪神が復活するのだろうか? それともその前?」
「流行った後だったな。疫病で疲弊したところに、追い打ちを掛けるような形だ」
「ということは、まだ復活していない? でも奴らは生贄を捧げているのでしょう? 間近ということかな」
「恐らくまだ生まれていないのだと思う。人間でいると臨月辺りなのかもしれない。それで今はせっせと栄養を送り込んでいるのだろう」
「なるほど……」
その時、部屋の外から声がかかり、サムが臨戦態勢をとった。
「誰だ!」
「……あの……ライラです」
サムがドアを開けた。
「どうしたの? ライラ、休んでないとダメじゃないの」
サリーの声にライラが困ったような顔で答えた。
「うん、でも私が聞き知ったことを早く伝えた方が良いと思って……」
イースが頷いた。
「何か聞こえたことがあったのか?」
「はい、殿下。両親と神殿から来ていた男が話していたことをお伝えします」
「ああ、聞こう」
「はい、何でももうすぐやってくる悪魔の使いがこの国を病で満たすと言っていました。その使いは高熱と喉の痛みを発症させ、肺をダメにして死に至らせるのだと……」
「高熱と喉の痛み?」
「ええ、それに罹りたくなければ生贄を捧げるのと同時に、殿下を……シューン殿下の命を捧げよと……」
「なんと!」
イースは苦々しい顔でウサキチを見た。
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