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「人間の食事ができる羽虫になれぇ~! まはりくまはりたやんばらやんやんや~ん!」
ボンッと霞がかかり、何も見えなくなった。
二人の服だけが脱ぎ散らかされた様に床に散らばっている。
「成功したのか?」
「見えませんね……お~い、どうなんだ?」
ぷぅぅぅぅんという音が耳元でした。
思わず手で払おうとしたトーマスが、慌てて手を降ろす。
「危ないところだった。愛弟子を殺してしまいそうになった」
なかなか笑えないジョークを飛ばし、トーマスが苦笑いをした。
「さすがに羽虫の声は聞こえないな」
イースが口を開く。
「それこそコレですね」
お守り袋を手に握る。
羽虫たちもそれぞれがお守り袋にしがみついた。
「聞こえますか?」
マーカスの声だ。
「おー! 成功したのか?」
「わかりません。ちょっと確認してみますから、動かないでください」
ぷぅぅぅぅぅんという音が遠ざかり、そしてまた近づいた。
鏡でも見に行ったのだろう。
「成功してますね。羽虫で良かったです。この姿はお見せしたくありません」
ロバートの声だ。
「後は食事ができるかだな……。これなら運べるか?」
トーマスがテーブルにあったクッキーを粉状に砕いた。
羽虫が飛び移り、両手で持てるだけ抱え込んだ……たぶん。
再びお守り袋の上にとまる。
「クッキーの粉って重たいですね。でも手足全てに付着させれば大丈夫だと思います」
ロバートが答えた。
「口の中の水分が全部持っていかれちゃいますね……善し悪しだな」
王が口を開いた。
サリーがそそくさと、二人の服を衝立の向こうに運んだ。
「戻しましょう。問題は残りますが時間はあります」
ぷぅぅぅぅぅんという音が再び遠ざかり、衝立の向こうから二人が姿を現した。
「どうだ? 虫になった気分は」
マーカスが答える。
「なかなか楽しいですよ」
場の空気が少しだけ軽くなった。
王が口を開く。
「他の方法も考えてみよう」
全員が頷いた。
ウサキチが言う。
「洗脳が終わったら戻るんだ。そう何日も変身している必要は無いだろう? 二日程度なら食いだめしたから変身しろよ」
「ああ、そうか……」
ふっと誰かが息を吐いた。
それが合図となって、全員が笑い出した。
「みんな、ありがとう。今まではウサキチと二人だけだったから、とても心強いよ。なんだか嬉しい。本当にありがとうね」
シューンがニコニコしながら言う。
イースがシューンに話しかけた。
「今までは二人だけだったのか?」
「そうだよ? みんなには隠れてもらってたからね。できるだけ人がいないところでやりたかったけど、あいつら急に来るから。お城の正門の前ってものすごく広いでしょ? 前の時はあそこを使ったんだ。広い方が迷惑掛らないと思ったから」
「迷惑などと……邪神はどのような姿なのだ?」
「毎回同じだけど、始めは兄上くらいの大きさかなぁ。人の形をしてるんだけど、いきなり舞い上がって小さな粒になる。その粒が人々の上に降り注いで洗脳してしまうんだよ。だから奴が粒になった瞬間に、僕が取り込むんだ」
「人の形か……不気味だな」
「うん、真っ黒だしね。しかも人の形の時は恐ろしく強い。ウサキチが相打ち覚悟で戦ってくれるんだけど、致命傷を与えることはできないんだって、そうだよね?ウサキチ」
「あいつは微粒子の塊のようなものだ。分かり易く言うと、水を切っているような状態だよ。痺れを切らして分散するまで切り続けるしかない」
「厄介だな……」
サムが言う。
「今回は私とウサキチ殿の二人がかりですな」
「ああ、よろしく頼むよ。あいつに取り込まれないように、間合いは重要だ。体中に巻き付かれると一瞬で魂を奪われる」
「それはまた……距離をとると言っても、そのような形態なら矢を射かけても意味も無いでしょうし。本当に厄介ですなぁ」
サリーが顔を上げた。
ボンッと霞がかかり、何も見えなくなった。
二人の服だけが脱ぎ散らかされた様に床に散らばっている。
「成功したのか?」
「見えませんね……お~い、どうなんだ?」
ぷぅぅぅぅんという音が耳元でした。
思わず手で払おうとしたトーマスが、慌てて手を降ろす。
「危ないところだった。愛弟子を殺してしまいそうになった」
なかなか笑えないジョークを飛ばし、トーマスが苦笑いをした。
「さすがに羽虫の声は聞こえないな」
イースが口を開く。
「それこそコレですね」
お守り袋を手に握る。
羽虫たちもそれぞれがお守り袋にしがみついた。
「聞こえますか?」
マーカスの声だ。
「おー! 成功したのか?」
「わかりません。ちょっと確認してみますから、動かないでください」
ぷぅぅぅぅぅんという音が遠ざかり、そしてまた近づいた。
鏡でも見に行ったのだろう。
「成功してますね。羽虫で良かったです。この姿はお見せしたくありません」
ロバートの声だ。
「後は食事ができるかだな……。これなら運べるか?」
トーマスがテーブルにあったクッキーを粉状に砕いた。
羽虫が飛び移り、両手で持てるだけ抱え込んだ……たぶん。
再びお守り袋の上にとまる。
「クッキーの粉って重たいですね。でも手足全てに付着させれば大丈夫だと思います」
ロバートが答えた。
「口の中の水分が全部持っていかれちゃいますね……善し悪しだな」
王が口を開いた。
サリーがそそくさと、二人の服を衝立の向こうに運んだ。
「戻しましょう。問題は残りますが時間はあります」
ぷぅぅぅぅぅんという音が再び遠ざかり、衝立の向こうから二人が姿を現した。
「どうだ? 虫になった気分は」
マーカスが答える。
「なかなか楽しいですよ」
場の空気が少しだけ軽くなった。
王が口を開く。
「他の方法も考えてみよう」
全員が頷いた。
ウサキチが言う。
「洗脳が終わったら戻るんだ。そう何日も変身している必要は無いだろう? 二日程度なら食いだめしたから変身しろよ」
「ああ、そうか……」
ふっと誰かが息を吐いた。
それが合図となって、全員が笑い出した。
「みんな、ありがとう。今まではウサキチと二人だけだったから、とても心強いよ。なんだか嬉しい。本当にありがとうね」
シューンがニコニコしながら言う。
イースがシューンに話しかけた。
「今までは二人だけだったのか?」
「そうだよ? みんなには隠れてもらってたからね。できるだけ人がいないところでやりたかったけど、あいつら急に来るから。お城の正門の前ってものすごく広いでしょ? 前の時はあそこを使ったんだ。広い方が迷惑掛らないと思ったから」
「迷惑などと……邪神はどのような姿なのだ?」
「毎回同じだけど、始めは兄上くらいの大きさかなぁ。人の形をしてるんだけど、いきなり舞い上がって小さな粒になる。その粒が人々の上に降り注いで洗脳してしまうんだよ。だから奴が粒になった瞬間に、僕が取り込むんだ」
「人の形か……不気味だな」
「うん、真っ黒だしね。しかも人の形の時は恐ろしく強い。ウサキチが相打ち覚悟で戦ってくれるんだけど、致命傷を与えることはできないんだって、そうだよね?ウサキチ」
「あいつは微粒子の塊のようなものだ。分かり易く言うと、水を切っているような状態だよ。痺れを切らして分散するまで切り続けるしかない」
「厄介だな……」
サムが言う。
「今回は私とウサキチ殿の二人がかりですな」
「ああ、よろしく頼むよ。あいつに取り込まれないように、間合いは重要だ。体中に巻き付かれると一瞬で魂を奪われる」
「それはまた……距離をとると言っても、そのような形態なら矢を射かけても意味も無いでしょうし。本当に厄介ですなぁ」
サリーが顔を上げた。
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