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18 助っ人登場
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「おはよう!」
今日も元気なルイザさんがお店に入ってきた。
「おはようございます。今日も早いですね」
「うん、あなたにお客さんよ」
ティアナが顔をあげると、どこかでお会いした覚えのある紳士がニコニコしていた。
「あの……どこかでお会いしましたよね?」
「はい、先日サミュエル様に同道しておりました、オース家の執事でクレマンと申します」
「ああ、サミュエル様の。それで? 今日はどのような?」
「サミュエル様より『商売は立ち上げる時が一番難しいから、手伝って来い』と申しつけられまして」
「まあ! そんなご迷惑をお掛けするわけには参りませんが……実はわからないことだらけで、自分の常識の無さに落ち込んでいたのです」
「サマンサ様も随分心配をしておられました」
「そうでしたか。いつまでもお気にかけていただきありがたいことです」
ニコッと笑ってクレマンが振り返る。
「お美しいマダム。お忙しい時間にお手間をかけて申し訳ございませんでした」
さすがのルイザさんもイケオジの笑顔に当てられたようだ。
「あ……いえ、私は……ティアナは可愛いし、お隣さんだから」
すかさずクレマンが言う。
「あなたのような方が隣で見守って下さっているのなら、我が主人も安心するでしょう。本日はどうもありがとうございました」
暗にというより、かなりはっきり帰れと言っている。
ルイザさんはどぎまぎしながら戻って行った。
「ティアナ様、オース家の皆さんはとてもあなたのことを心配しています。当分の間、私が通ってまいりますので、何なりとお申し付けください」
「ありがとうございます。厚かましいとは思いますが、とても助かります。頼りにしますね、クレマンさん」
「どうぞクレマンと呼び捨ててください」
「私は平民のティアナです。それはできません」
「では可愛い姪を心配してやってきた叔父というのはどうですか? それなら自然だと思いますが」
ティアナが笑顔で同意し『ティアナちゃん』『おじさま』と呼び合うことになった。
お近づきの印にと、ティアナが朝食を準備していたら、トマスが顔を覗かせた。
「おはよう、ティアナちゃん」
「おはようございます。トマスさん」
トマスは知らない顔の男性を見て焦っている。
「ああ、こちらはクレマンおじさんよ。開店までの間いろいろと相談に乗ってもらうことになったの」
トマスは胡散臭そうな顔でクレマンを観察している。
クレマンはそんな視線をもろともせず、トマスに握手の手を差し出した。
「やあ、姪がお世話になっているようだね。叔父として礼を言うよ」
「あ、いや、お世話というほどのことは……」
「君はこの近くに住んでいるのかな?」
「ええ、西大通りにあるシェリーというパン屋に住んでいます」
「そうかい、これからも姪をよろしく頼むよ。君は既婚者かな?」
「いいえ、僕は結婚していません」
ティアナの顔が曇る。
あれほど仲も良く、一緒に暮らしてまでいるのに結婚していないとは……
ティアナの中でトマスの評価がダダ下がった。
「そうか、でも私の可愛い姪に手は出さないでくれよ?」
「ははは……」
トマスは両手を胸の前にあげて掌を見せる。
どうやら圧倒的にクレマンの迫力勝ちというところだ。
ティアナが声を掛ける。
「朝早くからどうしたの?」
「ああ、シェリーが朝一で焼いたパンを持って行けって言うから。朝めしまだだろ?」
「今から作ろうと思っていたところよ。トマスさんも食べていく?」
「いや、僕は良いよ。仕事に行かなくちゃ」
トマスが後退るように扉を出た。
「じゃあ、また来るよ」
返事も聞かずに走り去るトマス。
クレマンがポツリと言った。
「調査対象ですな」
不穏な単語を聞いたような気もしたが、追求することは止めて茹でたソーセージを焼くことに集中した。
「実においしいです。元の御身分を考えると信じられないほどの腕前ですね」
「身分はそうでしたが、母と私はこの辺りの方達よりずっと貧しい暮らしをしていましたからね。得意料理は雑草サラダです」
「それはそれは。ぜひ一度お相伴に預かりたいものです」
「苦いだけですよ?」
二人は笑い合った。
今日も元気なルイザさんがお店に入ってきた。
「おはようございます。今日も早いですね」
「うん、あなたにお客さんよ」
ティアナが顔をあげると、どこかでお会いした覚えのある紳士がニコニコしていた。
「あの……どこかでお会いしましたよね?」
「はい、先日サミュエル様に同道しておりました、オース家の執事でクレマンと申します」
「ああ、サミュエル様の。それで? 今日はどのような?」
「サミュエル様より『商売は立ち上げる時が一番難しいから、手伝って来い』と申しつけられまして」
「まあ! そんなご迷惑をお掛けするわけには参りませんが……実はわからないことだらけで、自分の常識の無さに落ち込んでいたのです」
「サマンサ様も随分心配をしておられました」
「そうでしたか。いつまでもお気にかけていただきありがたいことです」
ニコッと笑ってクレマンが振り返る。
「お美しいマダム。お忙しい時間にお手間をかけて申し訳ございませんでした」
さすがのルイザさんもイケオジの笑顔に当てられたようだ。
「あ……いえ、私は……ティアナは可愛いし、お隣さんだから」
すかさずクレマンが言う。
「あなたのような方が隣で見守って下さっているのなら、我が主人も安心するでしょう。本日はどうもありがとうございました」
暗にというより、かなりはっきり帰れと言っている。
ルイザさんはどぎまぎしながら戻って行った。
「ティアナ様、オース家の皆さんはとてもあなたのことを心配しています。当分の間、私が通ってまいりますので、何なりとお申し付けください」
「ありがとうございます。厚かましいとは思いますが、とても助かります。頼りにしますね、クレマンさん」
「どうぞクレマンと呼び捨ててください」
「私は平民のティアナです。それはできません」
「では可愛い姪を心配してやってきた叔父というのはどうですか? それなら自然だと思いますが」
ティアナが笑顔で同意し『ティアナちゃん』『おじさま』と呼び合うことになった。
お近づきの印にと、ティアナが朝食を準備していたら、トマスが顔を覗かせた。
「おはよう、ティアナちゃん」
「おはようございます。トマスさん」
トマスは知らない顔の男性を見て焦っている。
「ああ、こちらはクレマンおじさんよ。開店までの間いろいろと相談に乗ってもらうことになったの」
トマスは胡散臭そうな顔でクレマンを観察している。
クレマンはそんな視線をもろともせず、トマスに握手の手を差し出した。
「やあ、姪がお世話になっているようだね。叔父として礼を言うよ」
「あ、いや、お世話というほどのことは……」
「君はこの近くに住んでいるのかな?」
「ええ、西大通りにあるシェリーというパン屋に住んでいます」
「そうかい、これからも姪をよろしく頼むよ。君は既婚者かな?」
「いいえ、僕は結婚していません」
ティアナの顔が曇る。
あれほど仲も良く、一緒に暮らしてまでいるのに結婚していないとは……
ティアナの中でトマスの評価がダダ下がった。
「そうか、でも私の可愛い姪に手は出さないでくれよ?」
「ははは……」
トマスは両手を胸の前にあげて掌を見せる。
どうやら圧倒的にクレマンの迫力勝ちというところだ。
ティアナが声を掛ける。
「朝早くからどうしたの?」
「ああ、シェリーが朝一で焼いたパンを持って行けって言うから。朝めしまだだろ?」
「今から作ろうと思っていたところよ。トマスさんも食べていく?」
「いや、僕は良いよ。仕事に行かなくちゃ」
トマスが後退るように扉を出た。
「じゃあ、また来るよ」
返事も聞かずに走り去るトマス。
クレマンがポツリと言った。
「調査対象ですな」
不穏な単語を聞いたような気もしたが、追求することは止めて茹でたソーセージを焼くことに集中した。
「実においしいです。元の御身分を考えると信じられないほどの腕前ですね」
「身分はそうでしたが、母と私はこの辺りの方達よりずっと貧しい暮らしをしていましたからね。得意料理は雑草サラダです」
「それはそれは。ぜひ一度お相伴に預かりたいものです」
「苦いだけですよ?」
二人は笑い合った。
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