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【第二章】恋愛ゲーム、壊します宣言
12 戸惑いの夜と「本音の在処(ありか)」
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アレクシスの手によって舞踏会場を後にした私は、宮殿の奥まった一室――客間なのか、彼専用の控室なのか――へと連れ込まれた。重厚な扉が閉まると、外の喧騒はうそのように遠のき、静まり返った空気が広がる。
壁には格式高い装飾が施され、窓辺に下がるカーテンは深紅のビロード布。シックで落ち着いた室内だが、この状況で気を休められるわけがない。アレクシスの肩で上下する呼吸音が、妙にはっきりと耳に届く。
私も息を詰めたまま黙り込む。――どうしてこんなことになったのか。頭が追いつかないのだが、とにかく彼と二人きりになっているのは事実だ。
「お前は……なぜ、あんなにも冷淡なんだ?」
先ほどまでとは打って変わって、アレクシスは声を落として言った。問いの内容自体は厳しいが、その調子はどこか戸惑い混じりだ。
あの舞踏会場での“断罪ショー”の途中、私は「どうでもいいわ」と呟いてしまった。それが彼を傷つけたことは、薄々感じている。だけど、だからといってどう答えればいいか分からない。
「私、あなたに何も期待していなかったし……そもそも転生したばかりで混乱してて、頭の整理がつかないんです。……なんて、本当のこと言えるわけないわよね」
そう思いながらも口をつぐんでいると、アレクシスが気まずそうに視線をそらす。そして、言いづらそうに言葉を継いだ。
「すまない。さっきは、公衆の面前であんな形にしてしまった。お前にとっても辛かっただろう。だが俺は――」
苦しげに吐かれる謝罪。それを聞いて、胸の中で何かがちくりと痛む。私は首を振りつつ、心の声を無理矢理押し殺した。
「――いいえ。婚約破棄なら、もう宣言してしまえばいいんじゃなくて?」
素っ気なく返したつもりだったが、アレクシスの表情が曇る。彼は唇を噛み、「俺がそれをためらっていることを、お前はわかっているのか?」と低く言った。
「ええ……さっきから、そんな感じがします」
私の回答は冷静すぎるくらい冷静だ。だけど内心は嵐のように揺れている。政略婚約なのに、王子はどうしてこんなにも苦しむのか。ゲームの筋書きとどうしてこうも違うのか。私の胸の奥も、ざわざわと騒ぎ立てていた。
――結局、私はその場で何も言い返せなかった。アレクシスはさらに何か言いたげにしていたが、ふいにドアがノックされ、侍従が小声で「殿下、あちらが騒ぎになっております」と報告に来る。
そこで私たちは“取り急ぎ解散”という形になった。アレクシスは宮殿内部の混乱を収拾するため、私をひとまず実家の馬車で送り返すとのこと。その場で断罪を強行するわけでもなく、かといって関係が改善されたわけでもない――モヤモヤを抱えたまま、私の舞踏会デビューの夜は幕を下ろしたのだった。
壁には格式高い装飾が施され、窓辺に下がるカーテンは深紅のビロード布。シックで落ち着いた室内だが、この状況で気を休められるわけがない。アレクシスの肩で上下する呼吸音が、妙にはっきりと耳に届く。
私も息を詰めたまま黙り込む。――どうしてこんなことになったのか。頭が追いつかないのだが、とにかく彼と二人きりになっているのは事実だ。
「お前は……なぜ、あんなにも冷淡なんだ?」
先ほどまでとは打って変わって、アレクシスは声を落として言った。問いの内容自体は厳しいが、その調子はどこか戸惑い混じりだ。
あの舞踏会場での“断罪ショー”の途中、私は「どうでもいいわ」と呟いてしまった。それが彼を傷つけたことは、薄々感じている。だけど、だからといってどう答えればいいか分からない。
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そう思いながらも口をつぐんでいると、アレクシスが気まずそうに視線をそらす。そして、言いづらそうに言葉を継いだ。
「すまない。さっきは、公衆の面前であんな形にしてしまった。お前にとっても辛かっただろう。だが俺は――」
苦しげに吐かれる謝罪。それを聞いて、胸の中で何かがちくりと痛む。私は首を振りつつ、心の声を無理矢理押し殺した。
「――いいえ。婚約破棄なら、もう宣言してしまえばいいんじゃなくて?」
素っ気なく返したつもりだったが、アレクシスの表情が曇る。彼は唇を噛み、「俺がそれをためらっていることを、お前はわかっているのか?」と低く言った。
「ええ……さっきから、そんな感じがします」
私の回答は冷静すぎるくらい冷静だ。だけど内心は嵐のように揺れている。政略婚約なのに、王子はどうしてこんなにも苦しむのか。ゲームの筋書きとどうしてこうも違うのか。私の胸の奥も、ざわざわと騒ぎ立てていた。
――結局、私はその場で何も言い返せなかった。アレクシスはさらに何か言いたげにしていたが、ふいにドアがノックされ、侍従が小声で「殿下、あちらが騒ぎになっております」と報告に来る。
そこで私たちは“取り急ぎ解散”という形になった。アレクシスは宮殿内部の混乱を収拾するため、私をひとまず実家の馬車で送り返すとのこと。その場で断罪を強行するわけでもなく、かといって関係が改善されたわけでもない――モヤモヤを抱えたまま、私の舞踏会デビューの夜は幕を下ろしたのだった。
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