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二章「奴隷との初めての冒険」
大変な事態が発生しています
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「どうされたんで……、っあれは!」
「あれは魔物の大群に見えるよな」
「私にたくさんの魔物が見えます。数えられません」
小高い場所から俺たちが見たのは魔物の大群だ。数えることなど到底出来ない。しかも同じ方向に進んでいる。
「これで違和感の謎が解けた……」
「違和感、ですか?」
この森に入ってから感じ続けていた小さな違和感。それら一つ一つの点がこの光景を見たことで線となってつながった。
「俺たちが森に入ってから、魔物の気配こそ感じたけど、向かってくる魔物はなんだか少なかったんだ。そしてその魔物はなんだか一定の方向に向かっていたともいえるけど、その原因はこの魔物の大群だったんだ。おそらくだけど、あの魔物は俺たちを避けていたんじゃなくて、この大群から逃げようとしていた魔物たちだったんだ。それで、それが連鎖的に起こっていたから森に入ってすぐにもあったということか」
これは魔物たちがどこに向かっているかにもよるけど、基本的にヤバい。大量発生の域を超えている。これは戦うにしても個人の力じゃ不可能だ。ひとまず、落ち着いて連中が向かっている方角を調べよう。
「奴らが向かおうとしている方角を調べよう。とにかく情報がなくちゃ話にならない」
「分かりました。でもここは安全な距離がありますけど、それでも恐怖を感じます。なんか寒気が止まらないです……。だからできることなら早くここを離れたい」
ルナの恐怖は過去のトラウマによるものだ。メンタルの安定のためにさっさと終わらせよう。太陽の向きやら、地図やらスキルなど様々なものを駆使して向かっている方角を割り出していく。
「これは……だいぶまずいな」
「ルナ、あっちを見て、どこまで魔物がいるか見えたりするか?」
ルナは種族的にも資力が良かったりする。そもそもこの世界の住人は、地球に住まう人間と違い、デジタル画面がないため視力が非常によい。そのため、俺が見るよりもルナが見たほうがより遠くまで見ることができるのだ。
「少なくとも、見える限りは続いています。数は膨大で数えるなんてこと、砂を数えるみたいな感じだ思います」
「ヤバい。これがヤバすぎる!」
「どうヤバいんですか。ちゃんと説明してください」
俺がルナの見えた景色を伝えられ勝手にパニックになってしまった俺に対してルナは非常に冷静だった。
「方角の計算が間違っていなければ、あの大群、街に向かっている。このままだと街が強襲されるのも時間の問題だろう」
「……!! そんなことあり得るんですか!?」
魔物は普通ここまで統率のとれた行動はしない。とにかく異常事態が起こっていることは間違いない。すぐに街に戻らないといけない。
「ご主人様、きっと街は大丈夫ですよね」
「それはこれから決まることだ。それよりもすぐ街に帰るぞ。魔法で帰るから俺につかまれ」
「魔法で帰れるんですか⁉」
そんな驚いた表情をしないでくれよ。使えるのだからしょうがないじゃないか。色々とチートをもらっているのは助かっている。最強とまではいかないものの、それなりには強いのも神様のおかげだ。
「帰れるけどな、さすがに二人だと魔力の消費量も膨大だ。多分、かなりギリギリだろうな」
魔力を回復させるポーションを口に突っ込み、飲み干してその空瓶をしまい、意識を集中させる。街のマーキング点に飛べるように魔法を練り上げていく。俺とルナの直下で魔法陣が浮かび上がり、光を放ち始める。準備はできた。この時点で、魔力が大量に消費されている感覚がある。これは飛んだらどれだけ消費されるのか想像もつかない。でもやるしかない。早く、急がないと!
「いくぞ!! 転移!!」
俺とルナの身体が激しい光に包まれた。あまりの眩しさにルナも、俺も目を閉じる。しかし眩しさは一瞬で終わり、耳には喧騒が入ってくる。どうやら成功はしたようだ。
「無事か、ルナ……」
「はい、問題はないと思います。ご主人様大丈夫ですか!」
ルナは無事だったようだが、魔力がかなり持っていかれてしまった。ふらつきがひどくて、膝と手を地面についてしまった。
「ただ魔力消費が激しいだけだ。俺のことは大丈夫だから早くギルドに行くぞ」
ルナの手を借りながら立ち上がり、ポーションを取り出して飲んだ。少しは体が楽になったのでギルドに急ぐ。さっきのことを早く報告して対処を考えなくてはならない。一応、この世界にきて数か月過ごしていた街だ。それなりに愛着もある。
ギルドは日中ということもあって、賑わっている。しかしこの情報を持って、受付の列に並ぶわけにもいかない。割り込みにはなるが、仕方がない。それは事情を聴けば冒険者たちは納得してくれる。
「すまない緊急の報告が必要だ。先に頼む」
「お、おいあんた大丈夫
並んでいた冒険者がフラフラの俺のことを心配しながらも、列を譲ってくれる。さすがに今、対応している人はやらせないとまずいのでそれは待とうとした。
「緊急のことなら、早く報告しろ。俺の換金なんかよりよっぽど大事だ」
「すまない」
もう換金をしている冒険者も俺に譲ってくれた。これが冒険者の礼儀というかマナーのようなものなのだろう。
「緊急の報告ですね。何があったのでしょうか」
「先日、森奥の生態調査に関する依頼を受けて向かった森奥で魔物が大量発生していて、その魔物の大群がこの街に向かって進んでいる。数は数えきれない」
「それは事実で間違いないですか?」
受付嬢は冷静を装っているが、動揺しているのがわかる。周囲の冒険者たちも一斉にざわつき始める。
「俺以外にもここにいるルナも見ている。見間違いということはないし、方角が間違っているということもない。いつ見えてくるかは分からないが、数日のうちには見えてくる可能性が高いと思う」
「……分かりました。翔太さん、お疲れのようですので、2時間ほどしたらこちらへまたお越し下さい。そこでギルド長含め、関係者に詳細の説明をお願いします」
「分かった。少し休ませてもらう」
受付嬢は即座に立ち上がり、奥へと消えていく。宿屋に戻って仮眠をとるためにギルドを出ようとすると、周囲の冒険者が本当のことなのかと俺に詰め寄ってくる。本当のことだと手短に答えて、ルナの助けも借りながら、その囲い込みを抜け出して宿屋に行く。
「大変な騒ぎになりましたね。でも、この緊急事態で二時間後って遅くないですか?」
確かに遅く感じるが、仕方のない時間設定でもあるだろう。
「重大性からギルド長だけでなく、街のお偉方の協力を仰がなければならないということだろう。そのセッティングに2時間と考えれば、むしろ短いと言えるかもしれないぞ」
宿屋に入ると、オヤジが食事処のテーブルで帳簿を開いて計算をしていた。
「おい、オヤジ、部屋はもう大丈夫か?」
「おお、あんちゃんか戻ったんだな。部屋の方はもちろん大丈夫だ。鍵を渡すからちょっと待ってろ」
オヤジはテーブルから立ち上がり、カウンターの奥に行き、俺たちの部屋の鍵を取ってきて、渡してくれた。
「随分と疲れているな。ゆっくりと休むんだぞ」
「そうする。ありがとう」
こういう優しさは身に染みる。部屋に入ると、剣を卸してベッドに横たわった。
「ルナ、1時間半位したら起こしてくれ」
「は、はい」
時計はそこら辺にあるし大丈夫だろう。
「あれは魔物の大群に見えるよな」
「私にたくさんの魔物が見えます。数えられません」
小高い場所から俺たちが見たのは魔物の大群だ。数えることなど到底出来ない。しかも同じ方向に進んでいる。
「これで違和感の謎が解けた……」
「違和感、ですか?」
この森に入ってから感じ続けていた小さな違和感。それら一つ一つの点がこの光景を見たことで線となってつながった。
「俺たちが森に入ってから、魔物の気配こそ感じたけど、向かってくる魔物はなんだか少なかったんだ。そしてその魔物はなんだか一定の方向に向かっていたともいえるけど、その原因はこの魔物の大群だったんだ。おそらくだけど、あの魔物は俺たちを避けていたんじゃなくて、この大群から逃げようとしていた魔物たちだったんだ。それで、それが連鎖的に起こっていたから森に入ってすぐにもあったということか」
これは魔物たちがどこに向かっているかにもよるけど、基本的にヤバい。大量発生の域を超えている。これは戦うにしても個人の力じゃ不可能だ。ひとまず、落ち着いて連中が向かっている方角を調べよう。
「奴らが向かおうとしている方角を調べよう。とにかく情報がなくちゃ話にならない」
「分かりました。でもここは安全な距離がありますけど、それでも恐怖を感じます。なんか寒気が止まらないです……。だからできることなら早くここを離れたい」
ルナの恐怖は過去のトラウマによるものだ。メンタルの安定のためにさっさと終わらせよう。太陽の向きやら、地図やらスキルなど様々なものを駆使して向かっている方角を割り出していく。
「これは……だいぶまずいな」
「ルナ、あっちを見て、どこまで魔物がいるか見えたりするか?」
ルナは種族的にも資力が良かったりする。そもそもこの世界の住人は、地球に住まう人間と違い、デジタル画面がないため視力が非常によい。そのため、俺が見るよりもルナが見たほうがより遠くまで見ることができるのだ。
「少なくとも、見える限りは続いています。数は膨大で数えるなんてこと、砂を数えるみたいな感じだ思います」
「ヤバい。これがヤバすぎる!」
「どうヤバいんですか。ちゃんと説明してください」
俺がルナの見えた景色を伝えられ勝手にパニックになってしまった俺に対してルナは非常に冷静だった。
「方角の計算が間違っていなければ、あの大群、街に向かっている。このままだと街が強襲されるのも時間の問題だろう」
「……!! そんなことあり得るんですか!?」
魔物は普通ここまで統率のとれた行動はしない。とにかく異常事態が起こっていることは間違いない。すぐに街に戻らないといけない。
「ご主人様、きっと街は大丈夫ですよね」
「それはこれから決まることだ。それよりもすぐ街に帰るぞ。魔法で帰るから俺につかまれ」
「魔法で帰れるんですか⁉」
そんな驚いた表情をしないでくれよ。使えるのだからしょうがないじゃないか。色々とチートをもらっているのは助かっている。最強とまではいかないものの、それなりには強いのも神様のおかげだ。
「帰れるけどな、さすがに二人だと魔力の消費量も膨大だ。多分、かなりギリギリだろうな」
魔力を回復させるポーションを口に突っ込み、飲み干してその空瓶をしまい、意識を集中させる。街のマーキング点に飛べるように魔法を練り上げていく。俺とルナの直下で魔法陣が浮かび上がり、光を放ち始める。準備はできた。この時点で、魔力が大量に消費されている感覚がある。これは飛んだらどれだけ消費されるのか想像もつかない。でもやるしかない。早く、急がないと!
「いくぞ!! 転移!!」
俺とルナの身体が激しい光に包まれた。あまりの眩しさにルナも、俺も目を閉じる。しかし眩しさは一瞬で終わり、耳には喧騒が入ってくる。どうやら成功はしたようだ。
「無事か、ルナ……」
「はい、問題はないと思います。ご主人様大丈夫ですか!」
ルナは無事だったようだが、魔力がかなり持っていかれてしまった。ふらつきがひどくて、膝と手を地面についてしまった。
「ただ魔力消費が激しいだけだ。俺のことは大丈夫だから早くギルドに行くぞ」
ルナの手を借りながら立ち上がり、ポーションを取り出して飲んだ。少しは体が楽になったのでギルドに急ぐ。さっきのことを早く報告して対処を考えなくてはならない。一応、この世界にきて数か月過ごしていた街だ。それなりに愛着もある。
ギルドは日中ということもあって、賑わっている。しかしこの情報を持って、受付の列に並ぶわけにもいかない。割り込みにはなるが、仕方がない。それは事情を聴けば冒険者たちは納得してくれる。
「すまない緊急の報告が必要だ。先に頼む」
「お、おいあんた大丈夫
並んでいた冒険者がフラフラの俺のことを心配しながらも、列を譲ってくれる。さすがに今、対応している人はやらせないとまずいのでそれは待とうとした。
「緊急のことなら、早く報告しろ。俺の換金なんかよりよっぽど大事だ」
「すまない」
もう換金をしている冒険者も俺に譲ってくれた。これが冒険者の礼儀というかマナーのようなものなのだろう。
「緊急の報告ですね。何があったのでしょうか」
「先日、森奥の生態調査に関する依頼を受けて向かった森奥で魔物が大量発生していて、その魔物の大群がこの街に向かって進んでいる。数は数えきれない」
「それは事実で間違いないですか?」
受付嬢は冷静を装っているが、動揺しているのがわかる。周囲の冒険者たちも一斉にざわつき始める。
「俺以外にもここにいるルナも見ている。見間違いということはないし、方角が間違っているということもない。いつ見えてくるかは分からないが、数日のうちには見えてくる可能性が高いと思う」
「……分かりました。翔太さん、お疲れのようですので、2時間ほどしたらこちらへまたお越し下さい。そこでギルド長含め、関係者に詳細の説明をお願いします」
「分かった。少し休ませてもらう」
受付嬢は即座に立ち上がり、奥へと消えていく。宿屋に戻って仮眠をとるためにギルドを出ようとすると、周囲の冒険者が本当のことなのかと俺に詰め寄ってくる。本当のことだと手短に答えて、ルナの助けも借りながら、その囲い込みを抜け出して宿屋に行く。
「大変な騒ぎになりましたね。でも、この緊急事態で二時間後って遅くないですか?」
確かに遅く感じるが、仕方のない時間設定でもあるだろう。
「重大性からギルド長だけでなく、街のお偉方の協力を仰がなければならないということだろう。そのセッティングに2時間と考えれば、むしろ短いと言えるかもしれないぞ」
宿屋に入ると、オヤジが食事処のテーブルで帳簿を開いて計算をしていた。
「おい、オヤジ、部屋はもう大丈夫か?」
「おお、あんちゃんか戻ったんだな。部屋の方はもちろん大丈夫だ。鍵を渡すからちょっと待ってろ」
オヤジはテーブルから立ち上がり、カウンターの奥に行き、俺たちの部屋の鍵を取ってきて、渡してくれた。
「随分と疲れているな。ゆっくりと休むんだぞ」
「そうする。ありがとう」
こういう優しさは身に染みる。部屋に入ると、剣を卸してベッドに横たわった。
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