盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第十伍話

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 竜王が耳を真っ赤にして消え入りそうな声で、お腹が空いた、と言ったので、仕方なしにとカイは持ってきていた鍋を持ち出し火にかけた。

 ここで食事を取ることにしたのだ。

 さっきまでのことを忘れたかのように竜王とカイ、ダルドの三人は仲良く焚火を囲んで腰を下ろしていた。

 風に揺らめく炎の温かさは眠気を誘う居心地良さだ。うとうとしてしまう。

 急遽、料理をすることになったカイには持ち合わせがなく、鞄の中にあるのは硬いパンくらいだ。

手に取ってはみたがため息が出る。

柔らかく、かつパリパリとする食感、それにジャムなんてつけたら美味いだろう……。

乾燥したパンを見つめながら、またため息を一つ。

「寂しい食事になるな……」

 宿屋か酒場に行けば美味しいものが食べられるかもしれないが、ここから近い村でも半日はかかる。

 今からここを移動したら朝になるコースだ。

 だから、村に戻るのは諦め、ここで一夜を過ごすことに決めた。

 スープはすぐ近くに生えていた薬草と運良く持ってきていた芋、天日干しで乾燥させた肉を入れ、味付けはシンプルに塩にした。

 というより塩しかない。

 火にかけてから数分後、ぐつぐつと煮える音がし白い湯気と共に良い香りを漂わせる。

 ダルドがそれを嗅ぎ、待ち遠しいとウキウキしながらのぞき込む。

「おい、ヨダレが入るだろうが」

 とカイがダルドの顔を杓子(しゃくし)で押し退ける。

 竜王の鼻孔にも美味しそうな匂いを感じた。

 とても食欲を誘う匂いだったようで竜王は出てきた涎をごくりと飲み込む。

 カイがスープを杓子(しゃくし)でかき混ぜてから掬い、一口、味見した。

「……んー……」
「どうですかい? どうですかい?」
「まぁ、こんなもんだろ」

 出来上がったのを知り、ダルドが身体を前のめりにし、カイに近づく。
 
「兄貴!! はやく、はやく!!」

 木の器を持ってダルドがせがんだ。いい大人がまるで子供のようで、苦笑いしながらもカイはダルドの木の器を手に取り、スープを注いで、渡した。

 肉の塊がスープの上に浮いているのを見て、満面の笑みを見せる。

 冷ますことなくすぐに口につける。

 ごくごくと飲む光景を竜王は自分も欲しそうな目で見ていた。

 ダルドはそのまま一気に飲み干すと口についたスープを手で拭い取り、満足げにする。

「いや~ほんと、兄貴作ったスープは最高だぜ~」
「褒めんな、気持ち悪い」
「げへへ」

 ダルドが後ろ頭を描いて、変な笑いを見せる。
 
「ほらお前の分だ」

 カイが用意していた木の器にスープを注ぎ、竜王にも渡す。

 竜王は一瞬、受け取るのを戸惑いを見せたが、緊張した顔で、受け取った。

「毒なんて入ってないから」
「んなもんわかってる」

 見た目、水のようなスープだ。油が浮いていて、おいしそうには見えない。

 竜王は凝視したあと、恐る恐る飲んでみた。

「……」
「どうだ?」

 顔を器に隠したまま、ぐぐもった声がする。

「‐‐‐‐‐‐‐うまい……」
「そうだろ? 俺自慢のスープだからな」

 自慢げにするカイに少しイラついたが、身体は正直なようで、気が付いた時には器のスープをすべて飲み干していた。

「……」

 空になった木の器を数秒見つめたあと、無言で、カイに差し出す。

「ん」
「なに?」
「んー」

 強調するように木の器を上下に振る。

 そんな彼女を見て、カイは下衆じみた笑みを浮かべる。

 意地悪くわからないフリをした。

「たから何? どうしたの? それじゃあわかんないなぁ~」
「チッ。 よこせ」
「え? なんて?」

 暫く考えたあと、嫌そうに頭を掻きむしると声を小さくして言う。

「……下さい」

 その言葉を待っていました、と言うようカイは笑みをこぼす。

「はい、よく言えました」

 上から目線で来るカイに竜王は少しイラっとしたが、今回は従う。

  





 ―――――――パチパチと火に入れられた木が弾ける音がし、彼ら三人の顔を照らしていた。

 すっかり空になった鍋を見るにスープが人気だったことは一目瞭然だ。

 そんな三人は食事を終え、満足したのか、ダルドは腹を摩り、カイはあくびを噛み締め、眠そうな顔で向き合っている。

 無言のまま誰も喋ろうとしなかった。

 誰かが話を始めるのを待っているようにも見えた。

 最初に口を開いたのはカイだった。

眠そうな顔で、竜王へ視線を向けた。

「……なぁ? 聞いてもいいか?」

 竜王はあぐらをかいて、腕組をした。

「答えれる範囲ならいいぞ」
「なんであの時、俺たちを殺さなかったんだ?」

 その問いに竜王は何かを考えると答えた。

「……無益な殺生は好まない」
「だけど、俺たちはあんたを殺そうとしたんだぞ?」
「フッ。あの時、自分が殺されるとは微塵も思わなかった。お前ら弱すぎる」

 弱いのは自分でもわかっているが、他人から言われると少し辛いものがある。

 言い訳もしたくなる。

 そもそも二人は戦いが得意ではなく、ど素人に近い。

 武器だってまともに使ったこともないし、腰に下げているのは護身用に持っているようなものだ。

 だから刃に一回も血を付けたことはない。

 それに身を守る防具だって、粗末なものだ。

 魔物の攻撃をまともに受けたら即死のレベル。防ぐ為につけているのではなく、気持ちだけでも守られているという安心を得たい願望に近い。

 ボロボロな装備品を見てみれば、そこらの盗賊と自分たちを見分けても、区別がつかないほど、盗賊っぽい姿だ。

 実際、街に入った瞬間、盗賊と間違われて、衛兵に拘束されそうになったこともあった。

 そん時は、なんとか説得して逃げ切れたが、本当に面倒なことになったと思っている。

 金があれば……魔物ハンターのような防具に武器を揃えているのに。

 見栄を張るわけではないが、武器も防具もカッコいいのがいい。

 当然、切れ味や防御性も重要だ。

「はいはい弱いですよ。俺たち墓荒らしが専門だし~。なぁ、ダルド?」

 拗ねたように口を尖らせダルドに同意を求める。

「あっし、墓荒らしって呼ぶのよくないと思うんですよね」
「じゃあなんて言うんだ俺たちのことを」
「例えば……ほら、冒険ギルドとか、トレジャーハンターとか、どうですかい??」
「お前それ言えるの冒険ギルドやトレジャーズギルドに登録している奴だけだろうが」
「あ、そうだった」
「たく、俺たちがなんで墓荒らしって呼ばれるのか、忘れたのかよ」
「そうだった てへっ」
「てへ、じゃねぇーよ!」

 竜王は二人の会話に小首を傾げた。
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