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第十六話
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「一つ聞きたい。なぜ、お前たちはそのギルドなんたらとかに入れないんだ?」
カイは深いため息をつき、頭を抱え、ダルドも疲れ切った顔をした。
何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのか、と思った。
間をあけて、忌々しい顔で言う。
「なにもかも帝国のせいだよ」
そばに落ちていた小枝を折り、焚火に投げ入れた。
「……どういうことだ?」
カイの話にダルドが割って入り、答える。
「帝国は外国人が嫌いなんだ。仕事を奪われ、住処を奪われる、そう思っているらしい」
「だから、外国人をギルドに入れたくないんだ。実際、ここ最近の戦争も兵士の半数くらいが外からきた雇われ兵だし」
竜王は思い当たることがあった。
脳裏に浮かぶ、茶色い肌を持つ兵士、見たこともない湾曲した剣、白い肌の帝国兵とはかなり対照的で、目立ったためよく覚えている。
寝床を襲いにきたやつらも大抵、茶色の肌をしていた。
「そう言えば、私も茶色い肌の人間を見たことがあるな」
「茶色い肌……あぁゼルア人か」
ゼルア人―――――大陸南部の灼熱と無限の砂漠が広がるゼルア公国という国がある。数年前の事、ぜルア公国は帝国とで領土に関する問題で、武力衝突。戦争へと発展した。
帝国は二十万にも及ぶ南部方面軍を派遣し、占領しようとしたがぜルア公国は数か月間、国境線に釘付けにし、侵攻を阻んだ。
トライア要塞の城壁の外ではおびただしい数の帝国兵の死体が広がった。
ゼルア人は厳しい環境下に生きているため、生まれながらにして戦闘能力が高く、少数でも帝国軍を圧倒した。
さらに帝国軍の指揮官を隠密に長けた者を忍ばせ、多くを暗殺する。
指揮系統を混乱させたのである。
現地指揮官を失い、失態を犯した南部方面軍司令官はついに皇帝に泣きつき、救援を求めた。
数日後、それに応じるように二ブラス率いる帝国第一軍団及び皇帝親衛隊が地平線を覆いつくした。
二ブラスの指揮のもとトライア城塞は猛攻撃を受ける。
さすがのゼリア人も皇帝の力には及ばず、次々に殺されていった。
ゼリア兵のすべての首を切り落とし、ゼリア公国の王に警告として送りつけた。
それにはゼルア公国の王は怖気ずき、腰を抜かしたそうだ。
急ぎ、皇帝に密書を送った。
内容は問題となった領土を譲ること、それと貿易をするさいに欠けていた関税を撤廃、収益の上納など、帝国にとってはおいしい話ばかりだった。
帝国はそれくらいで、ひきさがらないと思ったが、二ブラスの気が変わったのか、それで了承したのである。
戦いをやめたのは皇帝の気まぐれと言われている。
他にゼリア公国との戦いは長期戦になると考えて、侵略をやめたとも、またまた皇帝とゼリア王との密約があったとも、どちらにしても戦いは終わり、ゼリア公国と帝国との間で、和平交渉が締結したのである。
ゼリア公国との戦いで彼らの強さを知った帝国軍はゼリア公国出身者の傭兵を積極的に採用し、軍の強化を図っている。
それが影響されてか、帝国人の傭兵は誰も雇われなくなり、ほとんどゼリア人になっている。
帝国軍のようで、ゼリア軍のようなものだ。軍だけではなく、労働者として彼らを使った。
彼らは勤勉で、体力があり、長時間の労働にも耐えることができる。
同じ人件費を払うなら体力がある者に払う方がいい、そう考え始めた雇用者がゼリア人ばかりを雇うために、本来働いていた帝国人労働者を多くを解雇した。
帝都は働き場を失った帝国人労働者であふれかえる。
そして、恨みはゼリア人だけではなく、自分の仕事を奪っていく外国人に向けられる。
帝国人の外国人嫌いの理由がこれだった。
「ゼリア人? 確か南の国の民だったか?」
「あぁ。砂漠が有名な国さ。そのゼリア人のおかげで俺たちまでとばっちりをくらってる。あいつら勤勉すぎるんだよ」
「ほんとだぜ。何もかも仕事を奪っちまう。ついには純潔を重んじるギルド連合の会長が外国人を雇用しないって言い出したしな」
ギルド連合と呼ばれる組織が帝都に置かれている。
ギルドには冒険ギルド、トレジャーズギルド、ハンターズギルドのこの三つで構成されており、活動目的がそれぞれ違ってくる。
トレジャーズギルド―――――太古の財宝や珍しい物品、遺物などを収集するのが目的である。
ハンターズギルド――――――帝国に害をなす魔物や野獣などを駆逐し報酬を得ることを目的にしている。
冒険ギルド――――――まだ見ぬ未開の地を追い求め、新たな領地、資源の獲得、世界地図の作成を目的にしている。
この三つのギルドは全て、国益に関係し国の中枢と言っても過言ではない。
膨大な資金は帝国に流れ、国を豊かにしているのだ。
その三つのギルドを統括し管理しているのがギルド連合である。
そして、ギルド連合のトップにいるのがグラン・ランバートという大男だ。
灰色の髪、白い髭が混じった赤い顎髭が特徴的である。
彼は元は凄腕のハンターだったそうだ。
しかし、数年前、魔物との死闘で腕を食い千切られ、引退に追いやられた。
露頭で彷徨っていた彼を救い上げたのが、二ブラスだ。
彼の熟練の腕前と切れの良さ、教養が高いことを知った二ブラスが直々に彼を探し、ギルド連合の会長に抜擢したのである。
そこまでする理由は能力が高いだけではなかった。彼は愛国者だったからだ。
国を愛し、忠誠を誓い、国のために殉ずる、それが彼の思想であった。
愛国者である彼は国の経済を脅かす外国人らに対して危機感を抱いていた。
職が奪われ、経済を麻痺させる彼らに対して、彼はギルド連合の議会の場でこう発した。
「ありとあらゆる分野、職業において、純潔の帝国人が務めるべきであり、ギルドも然りっ!! 外国人に与える仕事などはないッ!!❞」
この演説で愛国心の高さを知った皇帝は好意を寄せた、という噂もある。
カイが呆れ顔をする。
「ま、そんな訳で、ギルド登録の受付で話す前に門前払いされるのさ」
大体のことがわかった竜王は一つ頷くと何かを考える顔をしながら言葉にした。
「なるほど、気の毒に」
となんとも適当な言葉にカイが声をあげる。
「それ、思ってないだろ?? 絶対に思ってないだろ??」
カイの指摘に竜王は笑って見せた。
図星だったことを誤魔化そうと手をポンと叩いて話を逸らす。
「つまり、お前たちは文無し家無し仕事なしのホームレスというわけだ」
「ちげーよ、さっきまで何聞いていたんだ、仕事してるわちゃんと!! 家はないが宿くらい借りれるわ!」
「まぁ、そう怒るな。冗談だよ、冗談」
カイは深いため息をつき、頭を抱え、ダルドも疲れ切った顔をした。
何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのか、と思った。
間をあけて、忌々しい顔で言う。
「なにもかも帝国のせいだよ」
そばに落ちていた小枝を折り、焚火に投げ入れた。
「……どういうことだ?」
カイの話にダルドが割って入り、答える。
「帝国は外国人が嫌いなんだ。仕事を奪われ、住処を奪われる、そう思っているらしい」
「だから、外国人をギルドに入れたくないんだ。実際、ここ最近の戦争も兵士の半数くらいが外からきた雇われ兵だし」
竜王は思い当たることがあった。
脳裏に浮かぶ、茶色い肌を持つ兵士、見たこともない湾曲した剣、白い肌の帝国兵とはかなり対照的で、目立ったためよく覚えている。
寝床を襲いにきたやつらも大抵、茶色の肌をしていた。
「そう言えば、私も茶色い肌の人間を見たことがあるな」
「茶色い肌……あぁゼルア人か」
ゼルア人―――――大陸南部の灼熱と無限の砂漠が広がるゼルア公国という国がある。数年前の事、ぜルア公国は帝国とで領土に関する問題で、武力衝突。戦争へと発展した。
帝国は二十万にも及ぶ南部方面軍を派遣し、占領しようとしたがぜルア公国は数か月間、国境線に釘付けにし、侵攻を阻んだ。
トライア要塞の城壁の外ではおびただしい数の帝国兵の死体が広がった。
ゼルア人は厳しい環境下に生きているため、生まれながらにして戦闘能力が高く、少数でも帝国軍を圧倒した。
さらに帝国軍の指揮官を隠密に長けた者を忍ばせ、多くを暗殺する。
指揮系統を混乱させたのである。
現地指揮官を失い、失態を犯した南部方面軍司令官はついに皇帝に泣きつき、救援を求めた。
数日後、それに応じるように二ブラス率いる帝国第一軍団及び皇帝親衛隊が地平線を覆いつくした。
二ブラスの指揮のもとトライア城塞は猛攻撃を受ける。
さすがのゼリア人も皇帝の力には及ばず、次々に殺されていった。
ゼリア兵のすべての首を切り落とし、ゼリア公国の王に警告として送りつけた。
それにはゼルア公国の王は怖気ずき、腰を抜かしたそうだ。
急ぎ、皇帝に密書を送った。
内容は問題となった領土を譲ること、それと貿易をするさいに欠けていた関税を撤廃、収益の上納など、帝国にとってはおいしい話ばかりだった。
帝国はそれくらいで、ひきさがらないと思ったが、二ブラスの気が変わったのか、それで了承したのである。
戦いをやめたのは皇帝の気まぐれと言われている。
他にゼリア公国との戦いは長期戦になると考えて、侵略をやめたとも、またまた皇帝とゼリア王との密約があったとも、どちらにしても戦いは終わり、ゼリア公国と帝国との間で、和平交渉が締結したのである。
ゼリア公国との戦いで彼らの強さを知った帝国軍はゼリア公国出身者の傭兵を積極的に採用し、軍の強化を図っている。
それが影響されてか、帝国人の傭兵は誰も雇われなくなり、ほとんどゼリア人になっている。
帝国軍のようで、ゼリア軍のようなものだ。軍だけではなく、労働者として彼らを使った。
彼らは勤勉で、体力があり、長時間の労働にも耐えることができる。
同じ人件費を払うなら体力がある者に払う方がいい、そう考え始めた雇用者がゼリア人ばかりを雇うために、本来働いていた帝国人労働者を多くを解雇した。
帝都は働き場を失った帝国人労働者であふれかえる。
そして、恨みはゼリア人だけではなく、自分の仕事を奪っていく外国人に向けられる。
帝国人の外国人嫌いの理由がこれだった。
「ゼリア人? 確か南の国の民だったか?」
「あぁ。砂漠が有名な国さ。そのゼリア人のおかげで俺たちまでとばっちりをくらってる。あいつら勤勉すぎるんだよ」
「ほんとだぜ。何もかも仕事を奪っちまう。ついには純潔を重んじるギルド連合の会長が外国人を雇用しないって言い出したしな」
ギルド連合と呼ばれる組織が帝都に置かれている。
ギルドには冒険ギルド、トレジャーズギルド、ハンターズギルドのこの三つで構成されており、活動目的がそれぞれ違ってくる。
トレジャーズギルド―――――太古の財宝や珍しい物品、遺物などを収集するのが目的である。
ハンターズギルド――――――帝国に害をなす魔物や野獣などを駆逐し報酬を得ることを目的にしている。
冒険ギルド――――――まだ見ぬ未開の地を追い求め、新たな領地、資源の獲得、世界地図の作成を目的にしている。
この三つのギルドは全て、国益に関係し国の中枢と言っても過言ではない。
膨大な資金は帝国に流れ、国を豊かにしているのだ。
その三つのギルドを統括し管理しているのがギルド連合である。
そして、ギルド連合のトップにいるのがグラン・ランバートという大男だ。
灰色の髪、白い髭が混じった赤い顎髭が特徴的である。
彼は元は凄腕のハンターだったそうだ。
しかし、数年前、魔物との死闘で腕を食い千切られ、引退に追いやられた。
露頭で彷徨っていた彼を救い上げたのが、二ブラスだ。
彼の熟練の腕前と切れの良さ、教養が高いことを知った二ブラスが直々に彼を探し、ギルド連合の会長に抜擢したのである。
そこまでする理由は能力が高いだけではなかった。彼は愛国者だったからだ。
国を愛し、忠誠を誓い、国のために殉ずる、それが彼の思想であった。
愛国者である彼は国の経済を脅かす外国人らに対して危機感を抱いていた。
職が奪われ、経済を麻痺させる彼らに対して、彼はギルド連合の議会の場でこう発した。
「ありとあらゆる分野、職業において、純潔の帝国人が務めるべきであり、ギルドも然りっ!! 外国人に与える仕事などはないッ!!❞」
この演説で愛国心の高さを知った皇帝は好意を寄せた、という噂もある。
カイが呆れ顔をする。
「ま、そんな訳で、ギルド登録の受付で話す前に門前払いされるのさ」
大体のことがわかった竜王は一つ頷くと何かを考える顔をしながら言葉にした。
「なるほど、気の毒に」
となんとも適当な言葉にカイが声をあげる。
「それ、思ってないだろ?? 絶対に思ってないだろ??」
カイの指摘に竜王は笑って見せた。
図星だったことを誤魔化そうと手をポンと叩いて話を逸らす。
「つまり、お前たちは文無し家無し仕事なしのホームレスというわけだ」
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