盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第十七話

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 一文無しだと小馬鹿にされたカイは竜王に噛みつく勢いで怒った。

 怒られた竜王はというと楽しそうにケラケラと笑うだけで、それにカイは不機嫌になる。

「今日だって、本当は近くの村で一泊する予定だったんだぞ? それなのになんで、こんな薄気味悪い森の中で野宿しないといけないんだ」

 カイの視線が近くの森へと向けられる。

 周りはすっかり夜となり、森の作る影はどこか薄気味悪い。暗闇の中で潜む獣たち。

 遠吠えを聞くたびに周囲に目を凝らす必要があった。

 ここ数日、旅人や村人が獣に襲われる、といった物騒な事件が多発している。

 気を抜いていると魔物や獣の餌になるだろう。
 
 なぜだかはわからないが今は竜王が傍にいる、ということでちょっとした安心感はあるが。
 
 ダルドとカイの視線が竜王の方へ向けられる。

「たく……誰のせいだよ」
「ん、誰のせい?」

 小首を傾げて向き返した。

カイが目でお前だよ、と訴えるとやっと自分のことを言っているのだと察する。

 竜王はわざとらしく後ろ頭に手を当てて、謝った。

「おぉーこれは私のせいだということか?? なるほどーそうだったのかぁー。いや、それはなんか、すまんことをしたなぁーすまんすまんー」
「なんだその態度?すまないと思ってないだろ?」
「ん? 思ってないな。当たり前だろ、私は何も悪いことはしていない。勝手に私の隠れ家に入り込んでさらには荒らしたんだ。自業自得だ」

 自分は悪くないと即答し、さらに追求してきた。

「……あれ、隠れ家だったのか……」 

人の住処を荒らすなど自分の良心が痛んだ。

墓荒らししている時は生きるのに必死で、良心など関係なかったが、人が住んでいる場所を荒らす事は出来ない。

「なんか、すまん……」

小さな声で誤った。

「ま、許す。有り難く思え」

偉そうな態度にカイは顔を引きつらせる。

「くそ……なんかウザい……」

 竜王が唐突に腕を組み直して独り言をつぶやく。

「しかし、なるほどなぁ~うん。なるほどな~」

 竜王は何かを企む顔をし、ふふふっと怪しく笑った。

「なにがなるほどだよ? その気味の悪い笑いなんだ……?」
「いやーなに、お前たちのこと、哀れんでな」
「哀れに思うなら金をくれ。職をくれよ」
「金があれば家も、ベッドも買えるんだ……。あぁーフカフカのベッドで優雅に寝てみたいもんですね」

 夢見る少年のような顔でそう語る。カイも故郷の実家が恋しくなった。子供時代に使っていた寝具が懐かしい。

「それらすべて解決する方法を私は知っているぞ」
「え??? それはなんですかい???」

 ダルドが目を見開き、食いつく。カイは嫌な予感しかしなかった。竜王が自分の胸に手を当てる。

「この私に仕えることだ。そうすれば解決する」
「はぁ?」

 間の抜けた声が出た。

「何を言っているのかさっぱりわからんが?」
「いや、だからお前たちをこの私が雇うと言ったのだ。悪い話ではないだろ?」
「悪いも何もお前、魔物だろ? 魔物が人間を雇うとか意味が分かんない」
「まぁーそれもそうだが……細かいことは気にするな」
「細かいことって……そもそも金はどうするんだ? 金は?? 雇うと言っても金がいるんだぞ? 持ってんのか?」

 竜王を頭の先から足先まで見るが、お金を持っているようには思えなかった。

 装備品は立派な物を付けているようだが、売るにも魔物が使っている物だ。

 物好きじゃないと商人は買ってくれないだろう。

「ふふふ。心配するでない。これでも竜王。魔物の王である、ぞ」

 格好つけたが最後、元だが、と小さな声で言った。

 スルーする形で、ダルドは気になることを聞く。

「雇うって言っても一体何が目的なんですかい?」
「ん? どういうことだ?」
「雇う理由だよ、理由! 目的もわかんねぇーんじゃあ、不安で仕方がないぞ。護衛とか、道案内とか、依頼とかあるだろ?」

 目的がわからない、目標がない――――ただ、雇われるだけなら他の者にしてくれ、そう思った。

 目的が目的なら傭兵を雇った方が断然いい。

「目的か、そうだな――――」

 コホン、と咳ばらいをし、姿勢を正した竜王は真剣な眼差しで二人に告げる。

「――――――目的は一つ。皇帝二ブラスから竜の宝玉を取り返すこと」
「「おまっ??!」」

 驚きのあまり、固まった二人はしばらくして無言のままその場に横になり、毛布を羽織って寝ようとする。

 二人は静かに竜王に背中を向けた。

「おい、寝るなよ??!!」
「あっしは降りる」
「は?」
「俺もだ」
「え、なんで???」

 その問いかけにカイが身体を竜王に向け、目を細めた。

「お前さ、わかっていってんのか? 皇帝二ブラスが簡単に渡してくれるとでも思っているの? まずありえない。となると奪うしかない。だが、お前が本気を出してでも勝てなかった相手だぞ? 勝てるのか? さらに力を失っている状態で勝てるの?」

カイは皇帝に勝てる者は居ないと思っている。

皇帝の強さは知らない者はいない。

彼女を怒らせないように皆んなビクビクしているのだ。

竜王も今のままで、皇帝に勝てるとは思っていない。

何か方法を考えないといけなかった。

「そ、それは……なんとかする」
「そこ、なんも考えてないのかよ。呆れた。俺たち、お前のために巻き込まれて死ぬのは御免だからな」

 手をひらひらさせ、カイは毛布を顔が隠れるまで覆う。

「同じく同感だぜ」

 ダルドもカイを真似て、毛布の中に顔を埋めた。

「お前ら―――」

 カイの毛布をはぎ取ろうとしたが、毛布からぐぐもった声がした。

「もう、夜が遅いんだ……明日また話を聞いてやるからな……。おやすみ……」
「お、おやすみ……って話を聞いてから寝ろ! いや、寝るなよ!!?」

 二人からの反応はなかった。寝息が聞こえるだけだ。

 竜王は力が抜けてしまい、浮かせていた腰をその場に戻した。

「……寝るの早すぎだろ……」
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