盗掘屋の俺に竜王がパーティーに加わりました。

飯塚ヒロアキ

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第十八話

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 竜王は二人を起こす事を諦めた。絶対に起こすなよ、と背中で言っているように思えたからだ。

 二人に寝られてしまった竜王は何をしようかと悩んだ。

 悩んだ結果、一人で何かができるわけではない、と考えた竜王は眠たいこともあり、寝ることにした。

 彼らの寝る姿を見て、アクビを噛み締めながら、近くにある集めた枯れ木や小枝を焚き火にくべる。

 少し温まったあとその場で仰向けになり、持っていた外套をかけ、夜空をボーッと眺める。

 雲一つない夜空が広がる。星々の輝きはとても美しかった。

 世界がこんなに戦争や迫害で汚れているのに、なぜかあの手の届かない空はいつも奇麗だった。

 それが羨ましかった。

 汚れることのない、破壊されることのない、何も変わることのない空。

 竜王は空のようにきれいな世界を夢見ていた。

 だが、帝国は平和だった世界を戦乱に巻き込み、歯向かう者は全て滅ぼした。

 帝国の勢いは止まらない。大陸全土をほぼ、帝国が掌握している。

 多くの町には帝国領を示す旗がなびき、帝国兵が我が物顔で駐屯しているのである。

 帝国に敗れた者は国を、民を、領土を奪われた。

 住む土地を奪われた亡国の民達は戦争のない安息の地を求め、大陸全土へと彷徨い続ける。

 北へ移動する亡国の民の一団を目にしたことがある。

 どうやら彼らは海を渡り、別の大陸へと向かうつもりらしい。

 それがどれだけ過酷なのか。知っていても彼らはこの大陸から脱出しようと試みている。

 彼らは失った故郷を胸に抱き、悲しみに満ちた顔を向けてくる。

 竜王はそんな彼らを見て、憎しみが湧き上がった。

 人だろうが、魔族だろうが関係ない。 

 誰もが平等に生きるべきなのだ。 

 それを拒絶し、格差をつけ差別する帝国はこの大陸にあってはならない。  

 帝国がなくなれば、また平和な世界になる、そう思うと帝国に対して憎しみが沸き上がった。

 そして、自分の国を奪われたことへの屈辱はいまだに忘れられない。

 やがて、復讐を誓う。

 いつか、同じ目にあわせてやる、と。そう心に誓った。

 歯を噛み締め、手を拳にした。

 怖い顔をしていた。

 憎しみに満ちた顔はさすが竜王、だけあって、迫力が違う。

 今にも黒い霧が現れそうだったが焚火にくべた木が弾ける音がし、ハッと我に返る。

 手で頭を抱え、目頭を指で摘まむ。

「……私ももう、寝よう……」

 ここで一人で怒っていても何も始まらない。行動しないと。

 だが、行動するにも力がない。

 皇帝二ブラスを倒すだけの力が、竜王にはなかった。

 一体、どうしたら勝てるのか。

 それを毎日のように考えていたが、有効な手段を見つけることができないでいた。

 正面からは絶対に勝てない。

 なら、騙す形で不意を突く、か。それとも強い者を探し出すか。

 また、いつものように皇帝二ブラスを倒す方法を考え始めたが、そんな手段は出てくるはずもない、と決めつけていた竜王はほぼ諦める形で、寝ることにした。

 今はだ。今は諦める。

 でも、いつかは見つかるかもしれない、そう考えて、竜王は星空の下、重たくなってきた瞼を閉じる。

 それから眠りについたのはすぐのことだった。 



================================================================================================================================================================================



――――――翌日の朝。少し雲がある日。太陽の光が薄明るい中、肌寒い朝を迎えた。

 森の中からは鳥の鳴く声がし朝が来たのを伝えてくる。

 そして、生い茂る木々からは若葉の匂いが風と共に漂ってくる。

 眠っていた三人の頬を冷たい風が撫でた。

 最初に眉が動いたのはカイだった。それからカイとダルドはほぼ、同時に目を覚ます。

 身体を起こし、周りを見渡す。

「朝か……」
「ですね」
「おは~」
「おはようですぜアニキ」

 二人見合って、大きなアクビをする。

 カイは背伸びをし、眠たそうに寝癖のついた髪を手で戻そうとする。

 髪の毛が跳ね上がっているのだ。

「たく、めんどくせぇ」

 そういいつつ、髪形を整えていく。

 ダルドはというと毛布から出て、起き上がると、荷物をまとめて身支度を始める。

 ここからヘッツア村という小さな村へ移動する予定だ。

 距離があるため、朝から向かわないといけないことを二人は知っている。

 そこで、換金所により、今回の集めた品を金貨や銀貨に換金してもらうのだ。

 夕方にはしまってしまうので、気持ち早めに行動したいところ。

 ダルドは装備を全て整える。

 朝から忙しくするダルドに対して、カイは身支度を手伝うわけでもなく、ただボーっとしているだけだった。

 自分の荷物をまとめようともしない。

 どうも朝は苦手らしい。

「まだ早いって……」

 そうボソッと文句を垂れると再び、横になる。

 瞼を閉じようとするとそれを阻止するかのタイミングでダルドがやってくる。

「ほら、そこどいてどいて!」
「ん??? お。おぉい??! てめぇ!! 俺はまだ寝るんだって、あぁー俺の毛布を!!」

 カイが下に敷いていた毛布を強引に奪い取ろうとした。

 カイはそれに抵抗する。

「ふんぬっ!!」

 ダルドの力に負け、カイは毛布から転げ落ちた。

 暖かかった毛布を奪われたカイは寒さに震え上がり、身体を手で摩りながら文句を言う。

「お、お前、俺を凍死させるつもりか???」
「はは。アニキィ~ご冗談を。こんな天気がいいのに。それにまだ雪が降る時期ではないですぜ」
「そういうことじゃないだろ??? 俺はまだ寝るつもりだったんだぞ???」
「アニキが二度寝したら昼が過ぎちまう」
「はぁ?? ガキじゃああるまいし。起きるわ!!」
「そういっていっつも昼まで寝てるじゃん!」
「う、そ、それは……」

 カイはダルドの言葉を否定しなかった。図星だった。

 誰かが無理やり起こさないと本当に起きない。

 下手したら一日中、朝から晩まで寝ているかもしれない。

 ダルドはカイから奪った毛布をきれいに畳んでバックに詰め込む。

 ダルドの見た目からは想像がつかないほど几帳面だ。

 それに比べて繊細そうな雰囲気を出しているカイは真逆で、めんどくさそうに自分の装備品や持ち物を大雑把に整理していく。

 カイが整理したあとダルドが整理するという二度手間となっているが、ダルドはなんの文句も言わず、黙々と作業をするのであった。
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