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第十九話
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カイとダルドは身支度を終え、すっかり重たくなってしまった荷物を軽々と持ち上げる。
カイはポケット中に押し込むように入れていた折りたたんだ地図を取り出し拡げた。
現在のいる場所と行く予定だった村の方向を確認する。
「ここがこの廃墟として、えーっとどこだ、これ?」
「アニキ、こっちじゃないですかね?」
カイに話しかけたダルドが西側を向いて指差す。それにカイは眉を寄せ、難しい顔をすると地図とダルドが指差した方を交互に見比べた。
首を傾げる。
「ん? おかしいな。この地図には村はあっちって書いてあるぞ?」
カイがダルドが指さす西側ではなく東側に視線を送って答えた。
それにまさかぁーと疑う声を漏らしたダルドはカイの地図を覗き込む。
地図をどっからどう見ても目指すべき村はダルドが指差した西側であっている。
しかし、カイは地図を見ても東側だと言うのだ。ダルドはまたか、と心の中で呟いた。
実はカイはかなりの方向音痴なのである。
彼の方向音痴には困ったもので、重症とも言っていい。
正解か外れかの二択しかない場合でも必ず間違った方を選ぶ、というある意味、神かかっている特技を持っている。
役に立つ特技を身に付けてほしいものだが。
この国に来たのも船で旅していたら偶然に辿り着いたそうだ。
カイは東側に身体を向ける。
何を根拠にそんな自信を持って言えるのか。
ダルドは大きなため息を吐いた。自分が居なかったらどうなっているのやら。
古代遺跡や廃墟、洞窟などに冒険ギルド、トレジャーズギルドなどが持つ許可証を持っていないと立ち入ることができなくなっている。
だから、帝国の目が届く場所には駐屯兵が警備に当たっていて、違法に盗掘していないかを見張っているのだ。
カイやダルドのような許可証を持っていない者は帝国兵が居ない僻地の場所にしか入れないのだ。
僻地はいまだに人の手が入っていない未開拓の地が多く、謎も多い。
魔物も多く生息しているため、危険性が高い。
そんな場所に方向音痴の人間が足を踏み入れたらどうなるか、誰もが想像ができるだろう。
だから、行く場所を念入りに下調べして、土地勘に強い者を雇ったり複数の人数で構成して、探索するのが常だ。
だが、二人はそんな金はないので、泣く泣く二人でやっているのである。
それに遺跡や洞窟、ダンジョンに隠したお宝を誰かに盗まれまいと考えるだろう。
取られていい宝をわざわざ、そんな場所には隠さないので、罠やらなんやらを仕掛けて、阻止しようとしているはずだ。
そんな危険な場所に方向音痴の人間が潜るなど、わざわざ自殺しにいくようなものだ。
一つの間違った選択が死を招く。そんな過酷な環境下でダルドがいなければ、カイはもう死んでいるだろう。
ダルドが地図をカイから奪い取る。
「アニキ、やっぱり、こっちじゃんか!!」
「はい……そっちのようです」
と強めの言葉にカイは反論せず、あっさりと受け入れる。
二人は大体の方向を確認したあと、ダルドは地図を四つに折り畳んで、自分のポケットにしまい込んだ。
カイに地図を渡したのが間違っていた、と心の中で後悔する。
ダルドが怒ったと思ったカイは気弱そうな声で言い訳した。
「ごめん……。その、ほら、人間、間違えることだってあるじゃん??」
「間違えすぎ。そろそろその方向音痴を直してもらわないと困る。いつかまじでヤバイ状況になるよ」
「そんなこと言われても……こればかりは……」
「地図の見方くらい覚えて欲しいですね……。まぁ覚える気がなさそうだし。まぁいいや。進もう」
「……はい」
そういって、二人は会話をやめて、軽い足取りで西にある村へと向かおうと一歩前へと踏み出す。
「おい待て」
カイの服の端を竜王が掴んで引っ張った。
強い力で引っ張られたカイはこけそうになりながら後ろへ下がってしまう。
「引っ張んなよ。こけたらどうする? 危ないだろ」
「そんなこと知るか。何、私を忘れてんの? 無視??? さっきから私を無視してるよね???」
「……いや……そんなことはない」
そういいながら小さな声を漏らすカイは竜王と目を合わせようとしない。ダルドも同様、意図的に目が合わないようにしている。
竜王はカイの視線に入ろうと向いている方向へと移動する。
すると視線を別の方向へとそらした。
さらに回り込んで、視線をそらされないように顔を掴んだ。
「おい、目を合わせろよ???? 何、見えないフリしてんだよ????」
それにカイは無視。イラっとした竜王はカイの頬を軽く引っ張る。
「いたたたたたたっ??! 千切れる!! 頬が千切れるからぁああやめれぇええええ!!」
あまりの痛さに涙目になるカイはなんとか竜王の手を振り払い、腫れあがった両方の頬を摩る。
「な。何すんだよ、いきなりッ!!」
軽くキレる。
「何すんだよ、じゃねぇーよ。私を無視するなよ!! このニートがッ!」
「誰がニートだ!! こちとらちゃんと働いてとるわい!!」
「嘘つけ、この泥棒が!!」
「何を根拠にいってるんですかね????」
「お前らが持っているそれ、人様の墓から取ったやつだろ??」
「うっ」
図星だったため、反論できず、カイは顔を引きつらせた。
今、バックに入っている首飾りやイヤリング、金の腕輪、陶器の装飾された壺、絵画など、どれも埋葬されていた人からはぎ取った盗品である。
他にも洞窟や遺跡に残されていた価値があるのかもわからない廃品なども回収している。
それらを隠すようにして、醜い言い訳をした。
「い、いいだろ別に。死人にはもう必要ないものだろこれ??」
「そうそう。あっしらは落ちていたものを拾ったまで」
「そう。それ、拾ったんだよ」
やっていることはそこらの賊と同じだ。
違いがあるなら、生きている者から追い?ぎをしないこと、くらいだろう。
だが、本質は同じだ。
「盗人め」
「はいはい。そうですよ。貧しい人間はいつも恨まれるのがお決まりですからね。何もしてないのに濡れ衣をきせらるのが常だもんな」
両肩を上げ、首を左右に振るカイはぶつぶつと文句を言いながらも、徐々に身体を西側に向けて、歩き出そうとした。
ダルドもどさくさに紛れて、歩み始めていた。
カイはポケット中に押し込むように入れていた折りたたんだ地図を取り出し拡げた。
現在のいる場所と行く予定だった村の方向を確認する。
「ここがこの廃墟として、えーっとどこだ、これ?」
「アニキ、こっちじゃないですかね?」
カイに話しかけたダルドが西側を向いて指差す。それにカイは眉を寄せ、難しい顔をすると地図とダルドが指差した方を交互に見比べた。
首を傾げる。
「ん? おかしいな。この地図には村はあっちって書いてあるぞ?」
カイがダルドが指さす西側ではなく東側に視線を送って答えた。
それにまさかぁーと疑う声を漏らしたダルドはカイの地図を覗き込む。
地図をどっからどう見ても目指すべき村はダルドが指差した西側であっている。
しかし、カイは地図を見ても東側だと言うのだ。ダルドはまたか、と心の中で呟いた。
実はカイはかなりの方向音痴なのである。
彼の方向音痴には困ったもので、重症とも言っていい。
正解か外れかの二択しかない場合でも必ず間違った方を選ぶ、というある意味、神かかっている特技を持っている。
役に立つ特技を身に付けてほしいものだが。
この国に来たのも船で旅していたら偶然に辿り着いたそうだ。
カイは東側に身体を向ける。
何を根拠にそんな自信を持って言えるのか。
ダルドは大きなため息を吐いた。自分が居なかったらどうなっているのやら。
古代遺跡や廃墟、洞窟などに冒険ギルド、トレジャーズギルドなどが持つ許可証を持っていないと立ち入ることができなくなっている。
だから、帝国の目が届く場所には駐屯兵が警備に当たっていて、違法に盗掘していないかを見張っているのだ。
カイやダルドのような許可証を持っていない者は帝国兵が居ない僻地の場所にしか入れないのだ。
僻地はいまだに人の手が入っていない未開拓の地が多く、謎も多い。
魔物も多く生息しているため、危険性が高い。
そんな場所に方向音痴の人間が足を踏み入れたらどうなるか、誰もが想像ができるだろう。
だから、行く場所を念入りに下調べして、土地勘に強い者を雇ったり複数の人数で構成して、探索するのが常だ。
だが、二人はそんな金はないので、泣く泣く二人でやっているのである。
それに遺跡や洞窟、ダンジョンに隠したお宝を誰かに盗まれまいと考えるだろう。
取られていい宝をわざわざ、そんな場所には隠さないので、罠やらなんやらを仕掛けて、阻止しようとしているはずだ。
そんな危険な場所に方向音痴の人間が潜るなど、わざわざ自殺しにいくようなものだ。
一つの間違った選択が死を招く。そんな過酷な環境下でダルドがいなければ、カイはもう死んでいるだろう。
ダルドが地図をカイから奪い取る。
「アニキ、やっぱり、こっちじゃんか!!」
「はい……そっちのようです」
と強めの言葉にカイは反論せず、あっさりと受け入れる。
二人は大体の方向を確認したあと、ダルドは地図を四つに折り畳んで、自分のポケットにしまい込んだ。
カイに地図を渡したのが間違っていた、と心の中で後悔する。
ダルドが怒ったと思ったカイは気弱そうな声で言い訳した。
「ごめん……。その、ほら、人間、間違えることだってあるじゃん??」
「間違えすぎ。そろそろその方向音痴を直してもらわないと困る。いつかまじでヤバイ状況になるよ」
「そんなこと言われても……こればかりは……」
「地図の見方くらい覚えて欲しいですね……。まぁ覚える気がなさそうだし。まぁいいや。進もう」
「……はい」
そういって、二人は会話をやめて、軽い足取りで西にある村へと向かおうと一歩前へと踏み出す。
「おい待て」
カイの服の端を竜王が掴んで引っ張った。
強い力で引っ張られたカイはこけそうになりながら後ろへ下がってしまう。
「引っ張んなよ。こけたらどうする? 危ないだろ」
「そんなこと知るか。何、私を忘れてんの? 無視??? さっきから私を無視してるよね???」
「……いや……そんなことはない」
そういいながら小さな声を漏らすカイは竜王と目を合わせようとしない。ダルドも同様、意図的に目が合わないようにしている。
竜王はカイの視線に入ろうと向いている方向へと移動する。
すると視線を別の方向へとそらした。
さらに回り込んで、視線をそらされないように顔を掴んだ。
「おい、目を合わせろよ???? 何、見えないフリしてんだよ????」
それにカイは無視。イラっとした竜王はカイの頬を軽く引っ張る。
「いたたたたたたっ??! 千切れる!! 頬が千切れるからぁああやめれぇええええ!!」
あまりの痛さに涙目になるカイはなんとか竜王の手を振り払い、腫れあがった両方の頬を摩る。
「な。何すんだよ、いきなりッ!!」
軽くキレる。
「何すんだよ、じゃねぇーよ。私を無視するなよ!! このニートがッ!」
「誰がニートだ!! こちとらちゃんと働いてとるわい!!」
「嘘つけ、この泥棒が!!」
「何を根拠にいってるんですかね????」
「お前らが持っているそれ、人様の墓から取ったやつだろ??」
「うっ」
図星だったため、反論できず、カイは顔を引きつらせた。
今、バックに入っている首飾りやイヤリング、金の腕輪、陶器の装飾された壺、絵画など、どれも埋葬されていた人からはぎ取った盗品である。
他にも洞窟や遺跡に残されていた価値があるのかもわからない廃品なども回収している。
それらを隠すようにして、醜い言い訳をした。
「い、いいだろ別に。死人にはもう必要ないものだろこれ??」
「そうそう。あっしらは落ちていたものを拾ったまで」
「そう。それ、拾ったんだよ」
やっていることはそこらの賊と同じだ。
違いがあるなら、生きている者から追い?ぎをしないこと、くらいだろう。
だが、本質は同じだ。
「盗人め」
「はいはい。そうですよ。貧しい人間はいつも恨まれるのがお決まりですからね。何もしてないのに濡れ衣をきせらるのが常だもんな」
両肩を上げ、首を左右に振るカイはぶつぶつと文句を言いながらも、徐々に身体を西側に向けて、歩き出そうとした。
ダルドもどさくさに紛れて、歩み始めていた。
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