ホムンクルス戦記~俺の女騎士たちは凛々しくてカッコイイんだぜッ!!

飯塚ヒロアキ

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母の裏切り

第三話

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 その声に白衣の男らが驚いたように声のした方へと振り向く。

「なんだアンナか。居たのか?」
「居たら悪い?」

 嫌味のように言うアンナに白衣の男が眉を八の字にする。

「いや、そういうわけではないが……。でも盗み聞きとはよくないな」
「そんなつもりはないわよ」

(―――――たまたま声をかけなかっただけなんだけど……)

「……話、聞いていたのか?」
「えぇ。私の実験で問題でも?」
「あ、いや……」

 言いにくそうに口ごもる。

 別の男が尋ねた。

「……正直に聞くが、あんたから見て、こいつはどう思うんだ?」

 その質問にアンナの顔色が変わった。

 椅子に座るマティアスに視線を送る。

 マティアスと目が合うとアンナは強張った顔が微笑んでしまった。

 彼もまた微笑み返してくる。

(―――――やっぱり、あの子だ……)

 マティアスと名前を付けたのは彼女自身だ。

 他の実験体には番号でしか呼んでいないが、彼だけは特別だった。

 マティアスは戦争で亡くした息子の名前である。

 とても優しい子で、争いなど無縁だった。

 しかし、帝国が魔導士の戦力導入を決定したことによって、防衛戦に参加させられてしまう。

 未熟な魔導士にとって、前線に出されることは死を意味する。

 結局、彼女の息子であるマティアスは敵の魔導士によって、瞬殺されてしまった。

 遺体は散り散りになってしまい、回収不可能だったそうで、形見すら残っていない。

 息子が死んでからこの実験体が生成されたのだが、なぜか、息子の面影があった。

 思わず、生まれ変わりと思ってしまうほど、似ているのだ。

 似ているだけでそれを最初はなんとも思っていなかったが、やがて、本当の息子のように接してしまう。

 情がわいてしまった。

 魔導士は感情を出してはならないという教えを受けているアンナにとって、とても後ろめたいことである。

 数秒、考えたアンナは手の平を広げる。

「……どうだろうね。正直、私にもわからない」

 その答えに彼女の迷いが感じられた。

「あんたが求めているものとは大分、かけ離れている気がするが?」

 アンナはホムンクルス計画で短期間で能力の高い兵士を育て上げることを目標にしている。

 しかし、その能力の面で普通の人間よりも劣ってしまっていることは致命的だ。

 これでは兵士にはなれない。

 だからと言って、長年研究してきたことがもうすぐ叶うと思うとそう簡単に諦めるわけにはいかなかった。

 最初は人間の形すら成していなかった実験体から、腕無し、足無し、顔無し、と来て、ようやくまともな人間と言える形になってきたのだ。

 知能だけが問題なら何とかなるかもしれない。

 だから諦めるのには早すぎると判断した。 

「そうね。でももう少し……もう少しだけ様子を見たい」

 アンナはそういって、マティアスのところまで歩み寄ると彼の頭を優しくなでた。

 マティアスも嬉しそうにして、顔を綻ばせ、身を委ねる。

「……責任者はあんただ。俺たちはあんたに従うよ」
「俺も異論はないです」
「協力ありがとう。きっと今回は上手くいく」

 そんな時、突然、大きな爆発音と地面が揺れる。

 その場に居た全員がふらつくほどに。

「な、なんだ??!!」
「??!!」

 アンナは眉を寄せてしまう。

(――――――なに? この凄まじい魔力は……?)

 どこかで魔法が使われたようだ。

 それもかなり強力な魔法だった。

 クラスで例えるなら街がなく最上級魔法だ。

 嫌な予感がした。

 数刻後、外が騒がしくなり、帝都中の警鍾が一斉に鳴らされた。

 内容的に非常呼集のようだ。

 帝都に駐屯する正規軍を動かさないといけないほど、事態は深刻だと察した。

 アンナと白衣の男らは急いで、部屋から出ると近くにあった窓から外の様子を伺った。

 視線先の光景には思わず、目を疑う。

 皇城の中央にある皇宮から赤黒い煙が上がっていたのだ。

 そこには皇帝がいるはず。

 若い白衣の男が窓から身体を乗り出した。

「皇宮が燃えているのか??!! どうして???」
「何か爆発したようだったぞ???」
「爆発って何がだよ?!」
「俺が知るかよ! んなもん!!」

 突然の出来事に全員が混乱していた。

 冷静沈着な兵士すら驚きのあまり、皇城の有様を見て唖然とし、自分のやるべき任務を忘れている。

 そんな時、階段を兵士が駆けあがってくる。

「アンナ様!!! アンナ様は居られますか??!!」

 アンナを見つけるとその兵士は息切れしながら走り寄り、敬礼しする。

 汗を垂らしながら状況を報告してきた。

「緊急事態です!!! ガリアンが襲撃して来ましたッ!!」
「ガリアンがッ??!」

 アンナは驚きの報告に目を見開いた。

 後退りしてしまう。

(――――――帝都防衛線が突破された……?)

 帝都防衛線―――――帝都を中心とする最終防衛ラインのことである。

 この防衛線は帝都周辺各所に要塞都市を設け、敵の侵攻を阻止することが目的で築かれた。

 各要塞都市には正規軍が常に駐屯しており、もしも、一つの要塞都市に攻撃を受けたら、すぐに帝都へと早馬が出ることになっている。

 攻撃されたという連絡は来ていない。

 要塞を襲うとなると大規模な部隊が必要になる。

 しかし、大軍を帝国側の監視網から隠しきれるはずがない。

(―――――ありえない。となると小規模な強襲部隊を送ってきたのか……? 何のために……?)

 皇帝の暗殺? 帝都機能の破壊工作?

 そして、思いついたアンナは横目で、マティアスを見る。

(―――――もしかして……?)

「バカな!!!? ここは帝都だぞ??? どうやってガリアンが入ってきたんだ???!」
「わかりません!!」
「わからないだと?? 城兵は一体何をしていたんだ!!!」
「じ、自分に言われても……」
「それより、皇帝陛下はご無事なのか??」
「まだ確認が取れていません!!! 他の者にも伝えないといけませんので、失礼しますッ!!」

 そういうと報告に来た兵士が再度、敬礼するとどこかへと向かっていくのだった。

 すると入れ替わるように別の報告に来た兵士が同じように敬礼した後に報告する。
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