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母の裏切り
第四話
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「申し上げます!!! ガリアン軍が皇城を包囲しています!!! その数、およそ五百!!!」
白衣の男は自分の耳を疑った。
「たったそれだけ??! たったそれだけで強襲を???」
「そのようです! 直ちにお逃げを!」
兵士はそう言い残すと立ち去っていった。
強襲を仕掛けるために兵数を絞ったのだろう。
その方が行動が取りやすいし、命令系統の簡単に行き届く。
だが、帝都を落とすつもりならそれでは足りない。
それに皇帝直属の親衛隊がいる。
その親衛隊が動いていない? そんな気がした。
おかしい。
すべてがおかしかった。
疑問が残るが、ガリアンは待ってはくれない。
下の階の方で声が上がった。
「ガリアンだ!! 逃げろ!!!」
と叫び声が上がり、剣戟の音がした。
出口は1番下の階にしかない。
一人、窓から逃げることは可能だが肝心のホムンクルスを連れてはいけない。
アンナは視線を泳がせ、動揺する素振りを見せる。
何かを決断したのか、ホムンクルスの子供達が待っている部屋へと飛び込んだ。
そこには、本棚がたくさん並び、研究資料もおさめられ、ホムンクルスを生成する筒状のガラス部屋が数台設置されていた。
今も生成しているところで、ガラス部屋に少年、少女が入っている。
人の形をしていることから実験は間違いなく成功へと近づいていることは確信できる。
他にも、材料や数えきれないフラスコ、ガラス瓶、錬金術台を備えている。
まさに大規模な研究施設だった。
彼女は部屋を見渡したあと、迷う事なく、手をかざし唱える。
「―――――炎よ、炎よ、目の前にある物、その全てを焼きつくせ――――」
手のひらからパチパチと弾ける音がすると真っ赤な炎が現れる。
あまりの熱さにアンナは目を半開きにしてしまう。
ホムンクルスの子供達が不思議そうに彼女を見つめてきていた。
自分たちに何をするのか、まだ理解できていないのだ。
「さようなら子供達……」
彼女は寂しそうにつぶやくと目を見開き、自分の頭より巨大な炎の塊を部屋に投げつけた。
耳の鼓膜が破れるかと思うほどの悲鳴が上がり、炎に包まれた子供達が暴れまわる。
アンナの行動に気が付いた白衣の男らが彼女を止めに入った。
「アンナ!!!? お前正気か!!!!???」
「やめろ! どういうつもーーー」
「うるさいッ!!!こうするしか方法はないのよ!」
彼女はその制止してきた男の手を振り払い、突き飛ばすと、再び、手の平に炎を作り出すと、それを投げつける。
白い部屋が真っ赤に染まる。
灼熱の地獄とかし、燃えるものすべてが灰となった。
残り火がくすぐり、肉が焼けた臭いが充満した部屋を彼女は喪失感に襲われた。
階段を複数の男らが駆けあがってくるのが聞こえたアンナは急ぐように隣の部屋へと向かい、研究の仲間達を置いて、駆け込んだ。
扉を閉め、鍵をかけた。
「――――――その力、何人も触れさすことなし。光よ、光よ、強固な壁を作り、私を守れ―――」
彼女は唱える。
かざした手の平から青白く輝く光が平らに伸びていき、扉へとまとわりつく。
彼女は扉に魔法の結界を張ったのだ。
「お、おい!!! 俺たちも入れてくれ!!」
一人の白衣の男が扉のドアノブに手をかけた瞬間、吹き飛ばされる。
壁にぶち当たり、気絶してしまう。
かなり強い結界を張っているので、触れることすらできない。
「アンナ!! 頼む!! 助けてくれ!!!」
アンナはその助けを求める声を無視した。
扉の向かい側から男らの声がする。
「見つけたぞここだ!! いいか、ホムンクルスは殺さずに生かしておけ! 他は全て殺せッ!」
「ひぃ!??」
「や、やめろ!! 殺さないでくれ!!」
剣を振り下ろす音がした。
「ギャァアアア――――ッ!!!!」
「や、やめ―――」
ドサっと何かが倒れ込むと、扉の下から赤い液体が流れ込んできた。
血だった。
息を潜めるもすぐに扉の異変に気が付かれる。
「おい、ここに魔法がかけられているぞ!」
ガリアン兵が壁を剣で叩く。
すると、それをはじき返し、剣を振るった男は尻餅をついてしまう。
「ちっ。これじゃあ中に入れねぇ。おい、イーラ様を呼べッ!!」
イーラという名前に聞き覚えがあったアンナは後退りする。
イーラ――――彼女が知っているイーラは帝国の魔導士学校を首席で卒業した女だ。
彼女は雷系の魔法に優れていて、レイピアから形成した電撃は凄まじい威力だった。
当たれば瞬殺。
眩い光に包まれたと思うとそれはもう死を意味する。
彼女の雷はうねる様にしなり、生きた蛇のように自在に雷を操ることができる。
触れた者は黒焦げだ。
戦場の活躍ぶりからは“雷鳴の獅子”とあだ名がつけられていた。
だが、数か月前に味方兵士を敵兵と間違えて殺した、という理由で投獄されてしまった。
皇城を爆発したのもイーラだとすると納得がいく。
とすると雷撃を使ったのだろう。
逃げ場を失った彼女はどうしたらいいのか、わからなくなった。
マティアスの方へ振り返ると駆け寄った。
そして、彼を抱きしめる。
「……?」
―――――ホムンクルスはアンナの念願の夢だった。
魔法の研究を趣味に生きてきた彼女にとって、ホムンクルスの実現は不可能に等しいと言われたこの研究を成功させ、偉業を達成したかった。
多くの魔導師らもホムンクルスの研究を目指してる。
研究の最終段階に入ったことはつまり、完成に近いことを意味する。
他の魔導師らにとってはホムンクルスは喉から手が出るほど欲しい存在だった。
アンナは誰にも渡す訳にはいかない、と唇を噛み締めた。
長年の苦労を誰かに盗られる、そんなこと絶対に許せない。
魔導師としてのプライドが彼女を狂気にさせる。
「絶対に渡さない……絶対に……」
ホムンクルスに関しての研究をまとめた資料はさっき、全て焼き払った。
後は―――――この子だけ―――――
白衣の男は自分の耳を疑った。
「たったそれだけ??! たったそれだけで強襲を???」
「そのようです! 直ちにお逃げを!」
兵士はそう言い残すと立ち去っていった。
強襲を仕掛けるために兵数を絞ったのだろう。
その方が行動が取りやすいし、命令系統の簡単に行き届く。
だが、帝都を落とすつもりならそれでは足りない。
それに皇帝直属の親衛隊がいる。
その親衛隊が動いていない? そんな気がした。
おかしい。
すべてがおかしかった。
疑問が残るが、ガリアンは待ってはくれない。
下の階の方で声が上がった。
「ガリアンだ!! 逃げろ!!!」
と叫び声が上がり、剣戟の音がした。
出口は1番下の階にしかない。
一人、窓から逃げることは可能だが肝心のホムンクルスを連れてはいけない。
アンナは視線を泳がせ、動揺する素振りを見せる。
何かを決断したのか、ホムンクルスの子供達が待っている部屋へと飛び込んだ。
そこには、本棚がたくさん並び、研究資料もおさめられ、ホムンクルスを生成する筒状のガラス部屋が数台設置されていた。
今も生成しているところで、ガラス部屋に少年、少女が入っている。
人の形をしていることから実験は間違いなく成功へと近づいていることは確信できる。
他にも、材料や数えきれないフラスコ、ガラス瓶、錬金術台を備えている。
まさに大規模な研究施設だった。
彼女は部屋を見渡したあと、迷う事なく、手をかざし唱える。
「―――――炎よ、炎よ、目の前にある物、その全てを焼きつくせ――――」
手のひらからパチパチと弾ける音がすると真っ赤な炎が現れる。
あまりの熱さにアンナは目を半開きにしてしまう。
ホムンクルスの子供達が不思議そうに彼女を見つめてきていた。
自分たちに何をするのか、まだ理解できていないのだ。
「さようなら子供達……」
彼女は寂しそうにつぶやくと目を見開き、自分の頭より巨大な炎の塊を部屋に投げつけた。
耳の鼓膜が破れるかと思うほどの悲鳴が上がり、炎に包まれた子供達が暴れまわる。
アンナの行動に気が付いた白衣の男らが彼女を止めに入った。
「アンナ!!!? お前正気か!!!!???」
「やめろ! どういうつもーーー」
「うるさいッ!!!こうするしか方法はないのよ!」
彼女はその制止してきた男の手を振り払い、突き飛ばすと、再び、手の平に炎を作り出すと、それを投げつける。
白い部屋が真っ赤に染まる。
灼熱の地獄とかし、燃えるものすべてが灰となった。
残り火がくすぐり、肉が焼けた臭いが充満した部屋を彼女は喪失感に襲われた。
階段を複数の男らが駆けあがってくるのが聞こえたアンナは急ぐように隣の部屋へと向かい、研究の仲間達を置いて、駆け込んだ。
扉を閉め、鍵をかけた。
「――――――その力、何人も触れさすことなし。光よ、光よ、強固な壁を作り、私を守れ―――」
彼女は唱える。
かざした手の平から青白く輝く光が平らに伸びていき、扉へとまとわりつく。
彼女は扉に魔法の結界を張ったのだ。
「お、おい!!! 俺たちも入れてくれ!!」
一人の白衣の男が扉のドアノブに手をかけた瞬間、吹き飛ばされる。
壁にぶち当たり、気絶してしまう。
かなり強い結界を張っているので、触れることすらできない。
「アンナ!! 頼む!! 助けてくれ!!!」
アンナはその助けを求める声を無視した。
扉の向かい側から男らの声がする。
「見つけたぞここだ!! いいか、ホムンクルスは殺さずに生かしておけ! 他は全て殺せッ!」
「ひぃ!??」
「や、やめろ!! 殺さないでくれ!!」
剣を振り下ろす音がした。
「ギャァアアア――――ッ!!!!」
「や、やめ―――」
ドサっと何かが倒れ込むと、扉の下から赤い液体が流れ込んできた。
血だった。
息を潜めるもすぐに扉の異変に気が付かれる。
「おい、ここに魔法がかけられているぞ!」
ガリアン兵が壁を剣で叩く。
すると、それをはじき返し、剣を振るった男は尻餅をついてしまう。
「ちっ。これじゃあ中に入れねぇ。おい、イーラ様を呼べッ!!」
イーラという名前に聞き覚えがあったアンナは後退りする。
イーラ――――彼女が知っているイーラは帝国の魔導士学校を首席で卒業した女だ。
彼女は雷系の魔法に優れていて、レイピアから形成した電撃は凄まじい威力だった。
当たれば瞬殺。
眩い光に包まれたと思うとそれはもう死を意味する。
彼女の雷はうねる様にしなり、生きた蛇のように自在に雷を操ることができる。
触れた者は黒焦げだ。
戦場の活躍ぶりからは“雷鳴の獅子”とあだ名がつけられていた。
だが、数か月前に味方兵士を敵兵と間違えて殺した、という理由で投獄されてしまった。
皇城を爆発したのもイーラだとすると納得がいく。
とすると雷撃を使ったのだろう。
逃げ場を失った彼女はどうしたらいいのか、わからなくなった。
マティアスの方へ振り返ると駆け寄った。
そして、彼を抱きしめる。
「……?」
―――――ホムンクルスはアンナの念願の夢だった。
魔法の研究を趣味に生きてきた彼女にとって、ホムンクルスの実現は不可能に等しいと言われたこの研究を成功させ、偉業を達成したかった。
多くの魔導師らもホムンクルスの研究を目指してる。
研究の最終段階に入ったことはつまり、完成に近いことを意味する。
他の魔導師らにとってはホムンクルスは喉から手が出るほど欲しい存在だった。
アンナは誰にも渡す訳にはいかない、と唇を噛み締めた。
長年の苦労を誰かに盗られる、そんなこと絶対に許せない。
魔導師としてのプライドが彼女を狂気にさせる。
「絶対に渡さない……絶対に……」
ホムンクルスに関しての研究をまとめた資料はさっき、全て焼き払った。
後は―――――この子だけ―――――
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