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母の裏切り
第五話
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「ごめん……私を許して……」
「お母さん、どういうこと?」
理解できていないマティアスは真っ直ぐな目でアンナを見つめてくる。
見惚れてしまうような綺麗な肌、茶色い瞳、艶のある青い髪。
どれも他の人間には比べようもないほど美しかった。
アンナは彼の頬を手の平で包み込む。
「……ねぇ。マティアス。少しだけ熱いかもしれないけど。我慢してね」
「うん」
「一瞬で終わるから……」
包み込んだ手の平が赤く光り始め、最初は暖かく思えた。
でも、それは一瞬のことで、身体全身が燃え始めたのだ。
「あぁ???あぁぁぁぁぁぁぁ―――――ッ?!!!!」
マティアスは熱さのあまり彼女の手を振り払った。その勢いで床に倒れ込んでしまう。自分に付いた火を消そうとし、のたうち回る。
しかし、消えなかった。
さらに燃える勢いが激しくなるのだ。
着ていた服は燃えてなくなり、皮膚は解けてゆく。
それをアンナはただ、呆然と見つめているだけだった。
「ぁああああああ―――――!!! 助けて!!!! お母さん!!! 熱いよ!! 熱いよぉおおおおおおッ!!!!」
そんな中、扉の向こうから再び、声がした。
「イーラ様 ここです!!」
「はんっ。こんなところに籠っていたのか。お前らどけろ」
アンナはその聞き覚えのある声を聞いて、諦めたように瞳をゆっくりと閉じた。
「―――――雷よ、我に力を示せ。絶大なるその稲妻は目の前の物を吹き飛ばす――――」
その詠唱が聞こえると扉の隙間から光が射しこみ、爆音と共に扉が散り尻に吹き飛んだ。
一部の破片がアンナの頬を掠める。
頬を流れる血を拭う。
「―――――久しぶりだなアンナ? 元気にしてたか?」
低い声がアンナに投げかけられた。
アンナはゆっくりと振り返る。
目の前には短髪で白髪、そして、黄色い瞳をし、肌の露出が多い軽装鎧を着込み、ロングブーツといった出で立ち若い女が立っていた。
アンナを見てほくそ笑む。
「そうね……」
顔色一つ変えることなく、アンナは一言そういうだけだった。
イーラがアンナの足元にある黒焦げになった物体に気が付いた。
目を細めて、よく見るとそれが人だったことを察したイーラは眉を八の字にし肩を竦め両手を広げた。
「おいおい、酷いことするじゃないか。仮にも自分の子供だろ?」
アンナは黒焦げになって死んでしまったマティアスを横目で一瞥したあと、瞼を一度、閉じ、イーラに視線を戻して言った。
「死んでしまったのならまた作ればいい。ただそれだけのことよ」
その言葉にイーラは顔を引きつらせた。
「作ればいいって……お前は悪魔だな。だからみんな焼き払ったのか?」
「あんたに言われる筋合いはないわね。この味方殺しが」
「かぁーそれを言うかな。あれは誤爆だって言ってるじゃん?」
嘘つけ、味方が邪魔だったからって理由で背後から敵と一緒に雷撃を食らわせたんだろ、とアンナは心の中でツッコミを入れる。
彼女もその場に居たからわかっていた。
そして、味方が巻き込まれ、死んだ時、イーラが笑っていたことも知っている。
「嘘つきが」
「友達にそんな冷遇はないだろ?」
「あんたなんか友達とか思ったことないわ」
「はぁ~? 大学の書類提出とかさ、手伝ってくれたじゃん?」
「あれは、私のため。あんたのせいで、私も単位を落としそうになったの。だから、仕方なしに手伝ったわけ。別にあんたを助けたいとか思ってもいないから」
大学時代にそんなことがあったな、と思い出しながらアンナはイーラがどう出てくるかを警戒していた。
自分を殺しに来た。そうしか思えなかった。
だって、ホムンクルスの生成に成功は魔導士にとっての夢だ。
有名になりたい、偉くなりたい、偉業を成し遂げたい、地位を確立したい、それらの夢を全てかなえてくれるのが、ホムンクルスだ。
先に越されることなど、我慢がならないことだろうしそれほど、ホムンクルスの生成は重要なことだったのだ。
案の定、イーラはアンナにレイピアを向けていた。
「さてさて、思い出にふけるのも飽きたしさ、本題に入ろうぜ」
アンナが嫌な顔をする。
「なに? ホムンクルスの資料のこと?」
「あはっ。流石~。わかってんじゃん。じゃあ早く渡してくれないかな?」
イーラの後ろから帝国軍親衛隊の兵士らがぞろぞろと現れてきた。
(―――――そういう事か……)
帝国親衛隊が寝返ったことをそこで察した。
帝都にガリアン兵を手招きしたのも、親衛隊だろう。
呆れてしまった。こうも簡単に人は裏切るのかと。
「渡したら私はどうするの?」
「そりゃ、殺すしかないだろ? だって、邪魔だし」
迷うことなくイーラはそう言った。
「友達なのに?」
「はぁ? お前が先に友達じゃないって言ったはずだが?」
言い返されたアンナは両肩を上げ、不敵な笑みを向けた。
「何が可笑しい?」
イーラが眉を寄せる。
「残念だったわね。あんたのお求めのホムンクルスの資料と実験体は全て私が焼き払ったわ」
思わず、目を見開き、足を一歩踏み出してしまった。
「何だとッ?! 一体も残していないのかッ?!!」
イーラは資料を燃やしてしまうことは予想がついていた。
あと、ホムンクルスもある程度は始末することもわかっていたが、それでも一体は残しているだろうと思っていた。
でないと、すべての研究成果がなくなってしまうからだ。
下手をすれば、もう生成にまでたどり着けないかもしれない。
偶然の産物だった可能性もある。
元を絶ってしまうなんて、考えてもいなかった。
「お母さん、どういうこと?」
理解できていないマティアスは真っ直ぐな目でアンナを見つめてくる。
見惚れてしまうような綺麗な肌、茶色い瞳、艶のある青い髪。
どれも他の人間には比べようもないほど美しかった。
アンナは彼の頬を手の平で包み込む。
「……ねぇ。マティアス。少しだけ熱いかもしれないけど。我慢してね」
「うん」
「一瞬で終わるから……」
包み込んだ手の平が赤く光り始め、最初は暖かく思えた。
でも、それは一瞬のことで、身体全身が燃え始めたのだ。
「あぁ???あぁぁぁぁぁぁぁ―――――ッ?!!!!」
マティアスは熱さのあまり彼女の手を振り払った。その勢いで床に倒れ込んでしまう。自分に付いた火を消そうとし、のたうち回る。
しかし、消えなかった。
さらに燃える勢いが激しくなるのだ。
着ていた服は燃えてなくなり、皮膚は解けてゆく。
それをアンナはただ、呆然と見つめているだけだった。
「ぁああああああ―――――!!! 助けて!!!! お母さん!!! 熱いよ!! 熱いよぉおおおおおおッ!!!!」
そんな中、扉の向こうから再び、声がした。
「イーラ様 ここです!!」
「はんっ。こんなところに籠っていたのか。お前らどけろ」
アンナはその聞き覚えのある声を聞いて、諦めたように瞳をゆっくりと閉じた。
「―――――雷よ、我に力を示せ。絶大なるその稲妻は目の前の物を吹き飛ばす――――」
その詠唱が聞こえると扉の隙間から光が射しこみ、爆音と共に扉が散り尻に吹き飛んだ。
一部の破片がアンナの頬を掠める。
頬を流れる血を拭う。
「―――――久しぶりだなアンナ? 元気にしてたか?」
低い声がアンナに投げかけられた。
アンナはゆっくりと振り返る。
目の前には短髪で白髪、そして、黄色い瞳をし、肌の露出が多い軽装鎧を着込み、ロングブーツといった出で立ち若い女が立っていた。
アンナを見てほくそ笑む。
「そうね……」
顔色一つ変えることなく、アンナは一言そういうだけだった。
イーラがアンナの足元にある黒焦げになった物体に気が付いた。
目を細めて、よく見るとそれが人だったことを察したイーラは眉を八の字にし肩を竦め両手を広げた。
「おいおい、酷いことするじゃないか。仮にも自分の子供だろ?」
アンナは黒焦げになって死んでしまったマティアスを横目で一瞥したあと、瞼を一度、閉じ、イーラに視線を戻して言った。
「死んでしまったのならまた作ればいい。ただそれだけのことよ」
その言葉にイーラは顔を引きつらせた。
「作ればいいって……お前は悪魔だな。だからみんな焼き払ったのか?」
「あんたに言われる筋合いはないわね。この味方殺しが」
「かぁーそれを言うかな。あれは誤爆だって言ってるじゃん?」
嘘つけ、味方が邪魔だったからって理由で背後から敵と一緒に雷撃を食らわせたんだろ、とアンナは心の中でツッコミを入れる。
彼女もその場に居たからわかっていた。
そして、味方が巻き込まれ、死んだ時、イーラが笑っていたことも知っている。
「嘘つきが」
「友達にそんな冷遇はないだろ?」
「あんたなんか友達とか思ったことないわ」
「はぁ~? 大学の書類提出とかさ、手伝ってくれたじゃん?」
「あれは、私のため。あんたのせいで、私も単位を落としそうになったの。だから、仕方なしに手伝ったわけ。別にあんたを助けたいとか思ってもいないから」
大学時代にそんなことがあったな、と思い出しながらアンナはイーラがどう出てくるかを警戒していた。
自分を殺しに来た。そうしか思えなかった。
だって、ホムンクルスの生成に成功は魔導士にとっての夢だ。
有名になりたい、偉くなりたい、偉業を成し遂げたい、地位を確立したい、それらの夢を全てかなえてくれるのが、ホムンクルスだ。
先に越されることなど、我慢がならないことだろうしそれほど、ホムンクルスの生成は重要なことだったのだ。
案の定、イーラはアンナにレイピアを向けていた。
「さてさて、思い出にふけるのも飽きたしさ、本題に入ろうぜ」
アンナが嫌な顔をする。
「なに? ホムンクルスの資料のこと?」
「あはっ。流石~。わかってんじゃん。じゃあ早く渡してくれないかな?」
イーラの後ろから帝国軍親衛隊の兵士らがぞろぞろと現れてきた。
(―――――そういう事か……)
帝国親衛隊が寝返ったことをそこで察した。
帝都にガリアン兵を手招きしたのも、親衛隊だろう。
呆れてしまった。こうも簡単に人は裏切るのかと。
「渡したら私はどうするの?」
「そりゃ、殺すしかないだろ? だって、邪魔だし」
迷うことなくイーラはそう言った。
「友達なのに?」
「はぁ? お前が先に友達じゃないって言ったはずだが?」
言い返されたアンナは両肩を上げ、不敵な笑みを向けた。
「何が可笑しい?」
イーラが眉を寄せる。
「残念だったわね。あんたのお求めのホムンクルスの資料と実験体は全て私が焼き払ったわ」
思わず、目を見開き、足を一歩踏み出してしまった。
「何だとッ?! 一体も残していないのかッ?!!」
イーラは資料を燃やしてしまうことは予想がついていた。
あと、ホムンクルスもある程度は始末することもわかっていたが、それでも一体は残しているだろうと思っていた。
でないと、すべての研究成果がなくなってしまうからだ。
下手をすれば、もう生成にまでたどり着けないかもしれない。
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元を絶ってしまうなんて、考えてもいなかった。
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