ホムンクルス戦記~俺の女騎士たちは凛々しくてカッコイイんだぜッ!!

飯塚ヒロアキ

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母の裏切り

第六話

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「お前、狂ってるのか?? 全部、燃やすなんてッ??!」

 本当に全部燃やしてしまったのだと悟ったイーラは愕然とする。

「バカか。狂ってる。頭がおかしいのか?」

 といっても人の事を言えるようなイーラではなかったが。

 頭がおかしいとか人間の皮を被った化け物とかいろいろ言われて来た。

 でも自分以上にアンナの方が頭がおかしいと思う。

 成功を目前にして、自分でその成功をふみにじってしまったのだ。

 流石にそんな行動に出るとは想像もしていなかったのだ。

 驚き声をあげてしまったイーラを見て、アンナはしてやった感を出しながらクスクスと笑うのだ。

「くそ。何がおかしいんだよ……」
「別に……笑っていないわよ?」

 バカにされているようにしか思えない。

「くっ」

 イーラが任務として来たのは目的は資料と実験体のホムンクルスを連れて帰ることだ。

 その両方を失った今、その任務遂行が成せないとなると、困ったことになる。

 この方法はイーラにとって納得できないことだったが致し方がない。

 アンナを殺せ、という命令も出ていたことだし、殺す気満々で訪れたのにそれが出来なくなったことにイーラは苛立ってしまう。

 そして、アンナの思い付きの行動ではあったものの、自分を殺しに来るだろうと予想して自分の手で全てを灰にしたことにイーラは憤慨しそうになった。

 自分の行動を読まれたのだ。

 それが悔しかった。

 アンナの驚き、恐怖に陥れてやろうとしたのに、余裕をぶっこまれた。

 頭を乱暴に掻きむしった。

 ただ怒ったところでもうどうしょうもならないことをわかっているイーラはレイピアを鞘に納めることにした。

「くそ。お前自身が設計図というわけか。考えやがったな。……仕方ねぇーあたしらと来てもらうぞ?」
「どうぞ、お好きに」

 アンナは何も抵抗しないよ、と両手を広げて見せた。

 鼻で笑い、勝ち誇った顔をする。

 イーラは自分が負けてしまったという感覚になってしまいなぜか悔しく思った。

「おい」

 イーラが顎で待機していた親衛隊に指示を出す。

 親衛隊の兵士らが数名がアンナを取り囲み、警戒しつつ両脇を掴むと塔の外へと連れていく。

 一人になったイーラは部屋の中を見渡す。

 燃え広がった炎が天井にまで達し、黒く焦げさせている。

 どれだけ激しかったのかを想像するとアンナの炎の力に思わず、感嘆してしまう。

 さすがは最上級魔導士だと思った。

 だが、目的だったホムンクルスは目の前で黒い炭の塊と化している。

 アンナがいた部屋のホムンクルスと思わしき遺体にイーラは歩み寄った。

「あともう少しだったと言うのに。くそッ」

 怒りをぶつけるように黒焦げになった死体の胴体を踏みつける。

 踏んだ箇所がグニュッと沈み込んだ。

「ん?」

 イーラは踏んだ感触に何か違和感を覚えた。

 これまで何回も面白おかしく遺体を踏みつけたことはあったが、こんな感触はなかった。

 なんだろうか。

 腐りかけた死体を踏んだ時とも違う。

 生きた者を踏みつけた柔らかい肉の感触……柔らかいとはつまりは、まだ生きている?

 イーラはそう思い怪訝した顔で、しゃがみ込んで、遺体をジーッと見つめた。

 動いていないし息もしていない。

 当然か、こんなにまで丸焦げになっているのだ。

 生きている訳がない。

 ただ、死んでいるのにその遺体に生気を感じさせる不思議さにイーラは腰に吊るしているレイピアの柄に手を伸ばし確かめようと思った。

 そんな時、帝国を裏切った親衛隊の兵士ら慌ただしくし始める。

「なんだとッ?! それは本当かッ?!」
「はい! すでに三個軍団が帝都中央広場に集結し、混乱の鎮圧に動き出しています。親衛隊の一部隊が全滅させられました」

 一人の親衛隊の兵士がイーラに声をかける。

「イーラ様! 早く逃げないと脱出が不可能になります」

 親衛隊同士のやり取りでなんとなく、内容を把握していたイーラは舌打ちする。

「ちっ。敵の対応が早いな」

 もう少し、時間がかかると思ったが、有能な将軍がいる限り帝国はそう簡単には混乱することはないようだ。

 将軍らも一緒に暗殺すればよかった、などと後悔する。

 一度、部屋を見渡し、イーラは頷く。

「ここにはもう用はないな。もうガリアンの勝利も間違いないだろう。寝返って正解だったぜ」

 本来の目標は達成できなかったが、アンナを捕らえることができたのなら帝都強襲作戦は成功したといってもいい。

「撤収する。予定の集合地点で落ち合うぞ、それまでは各自の判断で行動しろ」
「「「はっ!」」」

 親衛隊らが部屋から出て行ったのを見送ったイーラは立ち上がり、自分も部屋を後にしようとした。

 が、気になって遺体に振り向き、見下ろす。

「まさかな……」

 そう言い残し、自分があり得ないことに疑いをもってしまったことに対して、自嘲的な笑いをして、その場を足場やに立ち去ったのであった。






 この日をきっかけに歴史は大きく動いた。

 強大な力を保持し続けたゼルフ帝国にとって、四十年という長いようで短い大陸統一の平和は儚くも終わりを告げたのである。

 アセリ皇帝を頂点とした帝国にとって、彼の爆死は帝国全領地を揺るがすことになる。

 皇帝の死――――――それは帝国統一の象徴ともいえるものを失った。

 皇帝の側近たちは愚かにも空いた玉座を巡って、対立を強めた。

 そして、我こそは亡き皇帝の代理なり! そう声高に名乗りをあげるのである。

 側近らはまず帝国内の混乱の収拾に努めるべきだ。

 だが帝国滅亡の危険が迫っていることも彼らにはどうでもよかったのだ。

 彼らはみな、皇帝の椅子を欲した。

 側近らが対立し争っている間に各地域に置いた地方自治の貴族らは帝国の目を盗み、戦力の増強を勝手にし始めた。

 武器や装備、兵を増員し資金を集め、戦争の準備に取り掛かる。

 やがては地域ごと独立を宣言し自分の国とした者すら現れてしまった。

 北部地域は二クセリア国を名乗り、南はアロム国、西はガリアン諸王国連合、離れた孤島は八房(やつふさ)の国と帝国から独立し統一されていたボルドムンド大陸は再び、戦国時代へと突入する。

 皇帝の死後、独立していく領主と貴族らに対し、帝国を絶対に守ろうとしていたのがバベルトス宰相だった。

 彼はもともとあった帝国領をなんとか自勢力として留め置き、勝手な行動をしないよう監察官を送って、治める貴族らを監視した。

 そんなころ、ガリアン諸王国連合は連合の大軍を持って、西側から帝国を総攻撃をしよう目論み、国境線沿いに大規模な部隊を集結させる。 
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