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良い効果か、悪い効果か
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「…………っ!」
「もしかして、不味かったですか?」
「いや、これは……」
身体が震えるほど不味かったのだろうかと、慌てて声を掛けたナティスに、ロイトが驚いた様な表情で振り返る。
味が不味いという訳ではなかった様だけれど、どうやら何か問題があった事は間違いなさそうだ。
ふと、マヤタやフェンに試飲して貰った際に、二人が急速に疲労が回復した実感を得て驚いていた反応を思い出す。
(ロイトは、二人よりもずっと疲れている様子だったから、効き過ぎたとか?)
ナティスには実感がなかったので、その効力については正直な所どんなものなのかよくわかっていなかった。
けれどロイトの反応を見るに、何かしらの効果が出たと考えるのが正しいだろうか。
ナティスの作った物が、魔族に対して効きが良い理由が、もしその魔族が持つ魔力量に比例するのだとしたら、魔王であるロイトには、他の魔族達よりもずっと効果が大きく出る可能性はある。
だが、本当にそれが原因かはまだわからないので、ロイトの反応がちゃんと効果が出たからなのか、それとも逆に調子を悪くしてしまったのか、ナティスにはわからない。
(もしかして、どこかに悪い影響が……?)
じっとナティスを見つめたまま動かないロイトに、どんどん不安が押し寄せてくる。
マヤタやフェンの実例を考えると、疲労回復効果が出たのだと推測して良いとは思う。
けれど、その表情はあまりにも真剣で、且つ信じられない様なものを見る目でもあった。
ナティスの考える、少しだけでもほっとして貰える時間を提供するという目的とはかけ離れた反応をされている事で、魔力の強すぎるロイトには違う作用が出てしまった可能性を否定できない。
毒になる物は何一つ入れていないし、ロイトが苦しそうにしてはいないので、身体に悪い変化は起きていないはずだ。
そうは思うのだけれど、なかなか言葉の続きを発しないロイトの様子に心配は募る。
「大丈夫ですか? 気持ち悪くなってしまったりとか……」
毒になる物は入っていなくても、果実や薬草の中にロイトと相性の悪い物が混じっていたのかもしれない。
その可能性にハッと気付いて、慌てて通常の何も入っていない水を取りに行こうと、ナティスが動き出すその前に、ロイトがその腕を掴んで止めた。
「そうじゃない。大丈夫だ」
首を振るロイトをよくよく見ると、確かに顔色は悪くないし、気分が悪いという感じでもない。
どちらかと言えば、青白く感じていた顔色は良くなっている様に見えるし、ここ最近の寝不足で疲れていた状態からは、回復している様な兆しさえある。
ロイトの言葉を信じるならば、果実水の疲労回復効果は、正しく作用しているという事だろうか。
だがそれなら、何故こんなにも真剣な表情で、ロイトがナティスを見上げて来たのかがわからない。
つい先程まで、ロイトは休憩を兼ねてナティスに好きに髪を触らせてくれるつもりだったはずで、リラックスしてくれようとしていたはずだ。
ロイトの表情を変えた引き金が果実水にある事は明らかだけれど、不味かったり気分が悪くなったのでないのなら、他に何が原因なのだろう。
ロイトが伝えたい事がわからなくて、対応を迷っているナティスをじっと見つめながら、何かを考え込んでいた様子のロイトが、突然ぐっと掴んだままの腕を引く。
ソファ越しなので倒れ込んでしまう事はなかったけれど、引っ張られたナティスの上半身は、ロイトの顔の傍へと自然に引き寄せられた。
「もしかして、不味かったですか?」
「いや、これは……」
身体が震えるほど不味かったのだろうかと、慌てて声を掛けたナティスに、ロイトが驚いた様な表情で振り返る。
味が不味いという訳ではなかった様だけれど、どうやら何か問題があった事は間違いなさそうだ。
ふと、マヤタやフェンに試飲して貰った際に、二人が急速に疲労が回復した実感を得て驚いていた反応を思い出す。
(ロイトは、二人よりもずっと疲れている様子だったから、効き過ぎたとか?)
ナティスには実感がなかったので、その効力については正直な所どんなものなのかよくわかっていなかった。
けれどロイトの反応を見るに、何かしらの効果が出たと考えるのが正しいだろうか。
ナティスの作った物が、魔族に対して効きが良い理由が、もしその魔族が持つ魔力量に比例するのだとしたら、魔王であるロイトには、他の魔族達よりもずっと効果が大きく出る可能性はある。
だが、本当にそれが原因かはまだわからないので、ロイトの反応がちゃんと効果が出たからなのか、それとも逆に調子を悪くしてしまったのか、ナティスにはわからない。
(もしかして、どこかに悪い影響が……?)
じっとナティスを見つめたまま動かないロイトに、どんどん不安が押し寄せてくる。
マヤタやフェンの実例を考えると、疲労回復効果が出たのだと推測して良いとは思う。
けれど、その表情はあまりにも真剣で、且つ信じられない様なものを見る目でもあった。
ナティスの考える、少しだけでもほっとして貰える時間を提供するという目的とはかけ離れた反応をされている事で、魔力の強すぎるロイトには違う作用が出てしまった可能性を否定できない。
毒になる物は何一つ入れていないし、ロイトが苦しそうにしてはいないので、身体に悪い変化は起きていないはずだ。
そうは思うのだけれど、なかなか言葉の続きを発しないロイトの様子に心配は募る。
「大丈夫ですか? 気持ち悪くなってしまったりとか……」
毒になる物は入っていなくても、果実や薬草の中にロイトと相性の悪い物が混じっていたのかもしれない。
その可能性にハッと気付いて、慌てて通常の何も入っていない水を取りに行こうと、ナティスが動き出すその前に、ロイトがその腕を掴んで止めた。
「そうじゃない。大丈夫だ」
首を振るロイトをよくよく見ると、確かに顔色は悪くないし、気分が悪いという感じでもない。
どちらかと言えば、青白く感じていた顔色は良くなっている様に見えるし、ここ最近の寝不足で疲れていた状態からは、回復している様な兆しさえある。
ロイトの言葉を信じるならば、果実水の疲労回復効果は、正しく作用しているという事だろうか。
だがそれなら、何故こんなにも真剣な表情で、ロイトがナティスを見上げて来たのかがわからない。
つい先程まで、ロイトは休憩を兼ねてナティスに好きに髪を触らせてくれるつもりだったはずで、リラックスしてくれようとしていたはずだ。
ロイトの表情を変えた引き金が果実水にある事は明らかだけれど、不味かったり気分が悪くなったのでないのなら、他に何が原因なのだろう。
ロイトが伝えたい事がわからなくて、対応を迷っているナティスをじっと見つめながら、何かを考え込んでいた様子のロイトが、突然ぐっと掴んだままの腕を引く。
ソファ越しなので倒れ込んでしまう事はなかったけれど、引っ張られたナティスの上半身は、ロイトの顔の傍へと自然に引き寄せられた。
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