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そして出会う俺とお前
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しおりを挟むマルさんと酒を酌み交わしいろいろと話した。自分のこと、今まで思っていたこと、生き方、過ごし方……前世の記憶を取り戻したあの瞬間から俺にとってのこの世界は漫画のような、壁一つ挟んだ異世界の物語に入り込んだような感覚が抜けなかった。
どんなに痛い思いをしようと、苦い経験をしようと俺自身のことじゃないような感覚……つまり無意識に逃げていたんだろう。どうせ現実ではないのだから、なんて思っていたのは感覚が鈍ってしまっていたのだろうか?
とにかく、マルさんと話すうちに思ったのだ。確かに俺はマーニアムに連れてこられた異世界の魂だがちゃんと生きているって。
こうやって自分自身について話すきっかけなんてなかった。それは俺が逃げていたから、話すきっかけから無意識に避けていた。
故にロンバウトや兄弟のような存在を拒否すると同時に自分の物語には不必要と決めた相手はとことん遠ざけた。話し合うつもりなど微塵もない、もういらないと決めたのだから。
それはリアルでの話ではなかった。自分が感じるリアルではない物語の中のこと。自覚をすると良くわかる。俺は、記憶が戻ったあの瞬間から怖かったのだ。現実を受け入れられなかったのだ。
俺だって人間だ。嫌われたくないと思うのは普通だろう?なのに、自ら否定しあの家から逃げたのは、自分が傷つきたくなったからだ。
「うわっ……雑魚っぽい、俺…。」
自室で項垂れながら現実を受け入れる。アルコールで酔いの回った頭でも俺は自覚してしまったリアルにげんなりしてしまった。
マルさんが言う通り、体だけ成長した俺は微塵も心が成長していない。成長しようともしていない、ずっと止まったままの漫画脳に自業自得かと皮肉な笑いが口から漏れた。
俺は人からかけられた感情を無下にした。受け入れていなかった。それは、俺を助けてくれたマルさんや仲の良いタサファンもそうだ。俺が怪我をしたら心配してくれた、それを大したことではないと言ったのは俺自身、俺自身が他人事だと思っていたから。
ジッと自分の傷だらけな手を見ると、血は通っているし物に触れている感覚もある。思い通りに動くし、これが自分の体であるとわかる。決して他人のものでは無いと、理解できる。
やっと自覚した感覚は、前世と暮らしていた時と全く違うものだった。
「前世は平和だったもんな。普通に生きてたら生死を彷徨う原因って生活習慣病とかだし。」
平和ボケした俺には、この世界そのものが非現実過ぎて受け入れられなかった。つまりはそういうことなんだろう。俺は随分と甘えていた。大人になった今でも。
「……じゃあ、俺はこれからどうするべきだろうか。」
いろんなことを自覚した後、ロンバウトや兄弟達を思い出す。すぐに気持ちは切り替わらないからやっぱり大嫌いだけど、マルさんが言っていたように知らなければいけないことがあるのかもしれない。
それが何かわからないけど、いつまでも逃げていられない。ここが、実体のある現実であると理解してしまったから。
「……いつまでも子供ではいられないよな。気持ちを切り替えないと。」
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