91 / 103
そして出会う俺とお前
23
しおりを挟む「アルディウスよ。」
「…………、なんだよ。」
「私を番にしてくれ。」
「ブッ……α同士が番になれる訳ないだろ!アホかお前はぁ!!」
「いいや!私はちゃんと準備をしてきたんだ。安心してくれ。」
「なにを安心しろってんだ!朝たぱらから乗り込んで来やがって!」
「むふふ、アルディウス匂いが充満してる部屋…興奮する……。」
「けっ、警備の方ー!不審者入り込んでますよー!!」
住み慣れた家で寝ていると、人の気配がして目が覚めた。最近、保護者達は離れのほうが気に入っているらしくそちらで過ごすほうが多いので、コハクと一緒に寝る回数は大分減った。
たまに一緒に風呂入ったりするけど、まるでお隣さん同士のように家が違う関係になった。コクヨウ曰く、子離れらしい。家が隣同士で子離れっていうのか?
そんな感じなので、一人で寝ることが多くなった。アンダーグラウド家の敷地内で警備もしっかりしてるので、俺は安心して眠りについていたのに……目覚めたら目の前にロンバウトがいたのだ。恐怖である。
悲鳴も出なかったわ、怖すぎて。ラフな格好でどう見ても休日使用のロンバウトだが、手に持っている謎の薬が怪しすぎて安心できない。目が虚ろで感情が読み取れないんだ。
「やっと準備が終わったんだ。君を迎え入れることが出来るよ。」
「やだよ!俺は嫌だって言った!お前のこと好きじゃない!」
「そんなこと言わないでアルディウス。私は君に全てを捧げるよ?」
「捧げんでいい!俺は尻の穴をお前にくれてやるつもりはないんだ!その手に持ってるものしまえ!」
「……それはそれで魅力的な話だけど、アルディウスは勘違いをしているよ?」
「勘違いだと?お前の手に持ってるのローションじゃんか!なにが勘違いだ説明してみろ!」
「これは私が使うんだよ?」
「………は?」
「私が、使うの♡」
うっとり、怪しげなローションに頬ずりしながらロンバウトが言うものだから、俺の頭に大量のハテナが出た。固まる俺に、にっこり笑ってロンバウトは言うんだ。だから、迎え入れることが出来ると言ってるだろう、と。
そっちの意味かい!話がぶっ飛び過ぎて頭が追いつかない。それでも全然嬉しくないんだが!男に頬を染められたって嬉しくない!語尾を甘くするな、気持ち悪いなぁ!
にじり寄るロンバウトが怖すぎて声すら出なくなる。目が本気なんだ!こいつ俺を襲おうとしている!
「あっ、αのお前がわざわざ俺を選ぶ必要ないだろ!なんで俺なんだよ!」
「アルディウスと初めて出会った時から、私の心には君しかいないんだよ。…間違えてしまったこともあった。謝ることすら出来なくて後悔もした。それでも、……諦めきれないんだ。第二性なんて関係ない。君は、私の運命だから。」
「うっ、運命なんて…そんな夢物語みたいなこと言ってないで現実を見ろ!」
「勿論、見ているよ。今も昔も、私にはアルディウスだけ。アルディウスだけなんだよ!」
ロンバウトが少し声を荒げて言う。俺は驚いてしまって言葉を失う。少し俯いていたロンバウトが顔を上げると、歯を食いしばって泣くのを堪える表情だった。見たことのない表情で驚いてしまった。弱さなんてみせない男だと思っていたのに。
そもそも、行動が大胆すぎて怖いんだよこいつ。常に暴走モードだから。二人で話す機会が無かったせいかなぁ…。俺は頭を掻いてどうしたものかと悩むのであった。
112
あなたにおすすめの小説
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる