悪役令嬢に転生したので破滅フラグをへし折ったら、推し(だったはずの敵)に溺愛されました。

放浪人

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第四十五話:裏切りと、狂気の儀式

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「マルクス……子爵……!?」

ありえない光景に、私は、絶句した。
彼は、確か、闇魔法の暴走によって、自滅したはず。
なぜ、生きている?
なぜ、ここにいる?

「ククク……驚いたかね、セレスティナ嬢。私は、ゲオルグ殿下に、その魂を捧げることで、こうして、新たなる命と、絶大なる力を、手に入れたのですぞ!」

マルクス子爵は、両腕を広げ、自らの体に渦巻く、禍々しい闇のオーラを、見せびらかすように、言った。
その瞳は、もはや、正気の光を失い、どす黒い、狂気に、満ちている。

「そして、今宵、あなたを、私の、花嫁として、この、素晴らしき、闇の世界へと、お連れするのです!」

彼は、私に向かって、ねっとりとした、欲望の視線を向けた。
その、歪んだ執着心に、私は、生理的な、嫌悪感を覚える。

「――下衆が」

私の前に、ゼノン様が、立ちはだかった。
その声は、絶対零度の、怒りに、満ちている。

「俺の小鳥に、その汚らわしい指一本、触れてみろ。原子のレベルまで、分解して、塵にしてくれる」

「花嫁だと? 笑わせるな。こいつの、ただ一人の夫となるのは、未来永劫、この俺だけだ!」

ゼノン様が、ブチ切れている。
その、圧倒的な殺気に、マルクス子爵も、一瞬、たじろいだ。

(……あの、わたくしの知らないところで、夫、決定してますのね……)

絶体絶命のピンチだというのに、私の思考は、ほんの少しだけ、現実逃避していた。

「フ、フン! 強がるのも、今のうちだ!」

マルクス子爵は、気を取り直すと、祭壇の上に、飛び乗った。

「もはや、遅い! 儀式は、すでに、始まっているのだ!」

彼が、祭壇の、中心にある、黒い水晶に、手をかざす。
すると、大広間全体が、激しく、振動し始めた。
王城の、はるか真上。
王都の、夜空に、巨大な、紫色の、闇の魔法陣が、出現した。

精霊の結界が、ギシギシと、悲鳴のような音を立てて、軋み始める。

「クハハハハ! 見るがいい! 王国を守護してきた、精霊の結界が、今、破壊される! 表の儀式にいる、アルフォンスは、無防備になったところを、ゲオルグ殿下の、手によって、暗殺されるのだ!」

「そして、この国は、ゲオルグ殿下のものとなる! 我ら、闇に選ばれし者たちの、新時代の、始まりだ!」

マルクス子爵の、狂気に満ちた、高笑いが、大広間に、響き渡る。

まずい。
このままでは、アルフォンス殿下が!
そして、国が!

私たちが、焦る中、祭壇から、溢れ出した、濃密な闇の力が、黒い触手となって、私たちに、襲いかかってきた。

「くっ!」
「きゃっ!」

レオナルドも、リリアーナ様も、その、あまりの力の前に、動きを封じられてしまう。
ゼノン様でさえ、その闇を、抑え込むので、精一杯だ。

絶望が、再び、私の心を、支配しかけた、その時。

私の胸元で、ペンダントが、今までで、最も強く、そして、温かい、光を放った。
それは、ただの、防御の光ではない。

初代聖女が、その命と引き換えに、未来へと託した、最後の力。
あらゆる、理不尽を、覆し、運命さえも、捻じ曲げる、たった一度きりの、大魔法。

――「奇跡」を、発動させるための、光だった。
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