悪役令嬢に転生したので破滅フラグをへし折ったら、推し(だったはずの敵)に溺愛されました。

放浪人

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第四十六話:奇跡の名は

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闇の触手が、私の体を、心を、絶望の底へと引きずり込もうとする。
もう、ダメだ。
誰も、助からない。
そう、諦めかけた、その時だった。

胸元のペンダントが、心臓そのものになったかのように、激しく、熱く、脈動を始めた。
そして、私の脳裏に、直接、あの懐かしい声が響き渡る。

初代聖女様の、優しくて、力強い声が。

『――思い出して、わたくしの魂を継ぐ者よ』
『わたくしが遺した、最後の力……その名は、「奇跡」』
『それは、ただ一人の力ではない。信じ合う、強い“絆”だけが、呼び覚ますことのできる、希望の光……』

(き、絆パワーですって!? なんという、王道で、胸アツな展開ですの!)

絶体絶命のピンチだというのに、私の脳内は、オタク的な興奮で、沸騰しそうだった。
しかし、同時に、冷静な私も、ツッコミを入れる。

(いや、でも、どうやって発動させるんですの!? 説明書! 取り扱い説明書をくださいまし、ご先祖様!)

私の、心の叫びが聞こえたかのように、聖女様の声が、優しく、私を導いてくれた。

『信じるのです……。あなたと、あなたを心から想う、者たちの心を、一つに束ねるのです』
『あなたは、その力を受け止め、増幅させる、器となりなさい』

(器……! わたくしが、中継点に……!)

やるべきことは、わかった。
私は、闇の力に抗いながら、力の限り、叫んだ。

「皆様! どうか、わたくしに、力を貸してください!」

その声は、不思議な力を持って、仲間たちの心に、直接、響き渡った。

「――お嬢様!」
「――セレスティナ様!」

最初に、応えてくれたのは、レオナルドと、リリアーナ様だった。
「お嬢様をお守りしたい」という、レオナルドの、純粋で、まっすぐな忠義の光。
「ゼノン様が選んだあなたを、信じてあげるわ」という、リリアーナ様の、不器用で、ツンデレな献身の光。

二つの光が、私へと、流れ込んでくる。

『――セレスティナ様!』

遠く、王城の地上で、陽動の儀式を行っているはずの、アメリアちゃんの声も、聞こえた。
彼女が持つ、清らかで、温かい、聖なる光もまた、私へと、届けられる。

そして。

『――セレスティナ!』

誰よりも、強く、熱く、私を呼ぶ声。
ゼノン様の、深く、そして、すべてを包み込むような、闇の力が、光の奔流となって、私に、注ぎ込まれる。

本来ならば、決して、交わることのない、聖と闇の力。
しかし、私の体の中で、ペンダントが放つ「奇跡」の光が、その二つの力を、優しく、解きほぐし、奇跡的な調和を、生み出していく。

「な、なんだ、あの光は……!? 馬鹿な、聖と闇の力が、混じり合っているだと……!?」

マルクス子爵が、信じられないというように、絶叫する。
私の体は、今や、白と黒の光が、美しく、そして、力強く渦巻く、エネルギーの塊と化していた。

絆の力。
それは、どんな絶望をも、覆す、最後の、希望だった。
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