『婚約破棄された瞬間、前世の記憶が戻ってここが「推し」のいる世界だと気づきました。恋愛はもう結構ですので、推しに全力で貢ぎます。

放浪人

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第5話:商会設立と元婚約者の妨害

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「――本日分の『アクア・クリスタル・セラム』、完売いたしましたぁぁぁ!!」

店員の叫び声が、王都の目抜き通りに響き渡る。 その瞬間、店の外にできていた長蛇の列から、阿鼻叫喚の地獄絵図のような悲鳴が上がった。

「嘘でしょう!? 私、朝の4時から並んでいましたのよ!」 「次回の入荷はいつなの!? 予約は!? 倍額払ってもよくてよ!」 「ああ……私の肌の乾燥が、砂漠化が止まらないわ……っ!」

ここは王都の一等地にオープンした、私の城。 『エリザ・コスメティクス』の旗艦店だ。

ガラス張りのショーウィンドウ、大理石の床、そして間接照明(魔石ライト)を駆使したラグジュアリーな空間。 前世の銀座や表参道にあるブランドショップを再現したこの店は、今や貴族女性たちの聖地となっていた。

2階の支配人室からその様子を見下ろしながら、私は優雅にぶどうジュース(ヴィンテージワインではない。仕事中だから)を傾けた。

「……チョロい。いえ、順調ね」

背後で、もはや過労死寸前の顔色をしているセバスチャンが、とんでもない厚さの札束……ではなく、為替手形の束を整理している。

「お嬢様……いえ、会頭。生産ラインが爆発寸前です。隣国の工房まで買収しましたが、それでも追いつきません。嬉しい悲鳴というより、もはやただの悲鳴です」

「甘いわね、セバスチャン。需要に対して供給を少し絞ることで、ブランド価値を高める『品薄商法』も計算のうちよ。……とはいえ、さすがに絞りすぎかしら」

私は手元の売上報告書を見る。 数字の桁が、もはや個人の資産レベルを超えていた。 創業わずか一ヶ月で、中堅商会の年間利益を叩き出している。

なぜこれほど売れるのか。 答えは簡単だ。 この世界の美容意識が低すぎたからだ。

これまで、貴族の女性たちは「白粉(おしろい)を厚塗りして隠す」ことしか知らなかった。 そこに私が、「素肌そのものを美しくする」という概念を持ち込んだ。 前世の化学知識と、この世界の魔法技術を融合させた『魔導化粧品』。 効果は劇的、副作用なし。 売れないわけがない。

「これでまた、レオンハルト様の装備ランクを上げられるわ」

私の思考は、常にそこに行き着く。 昨日、彼に送ったのは『飛竜(ワイバーン)の革ブーツ』。 機動力が50%アップし、落下ダメージを無効化する優れものだ。 あれがあれば、崖崩れイベントも無傷で切り抜けられるはず。

「さて、次の展開だけど……」

私が次の事業計画(新商品はUVカット日傘)を練ろうとした、その時だった。

ドガァァァン!!

1階の店舗入口から、爆発音のような破壊音が響いた。 私は眉をひそめ、窓から下を覗き込む。

「……何事?」

そこには、近衛騎士団を引き連れた、金髪の男の姿があった。 無駄にきらびやかな衣装。 偉そうな態度。 そして、その隣にはピンク色のドレスを着た小柄な女性。

ジュリアン殿下と、マリア嬢だ。

「え、エリザベート! エリザベートはどこだ! 出てこい!」

ジュリアン殿下が店内で喚き散らしている。 商品を並べた棚を蹴り飛ばし、美しいディスプレイを台無しにしているのが見えた。

私のこめかみに、青筋が浮かぶ。 営業妨害だ。 しかも、あろうことか『商品』に手を出しやがった。 あれ一本で、レオンハルト様の食費一ヶ月分に相当するのに。

「……セバスチャン」

「はい」

「警備員を待機させて。私が直々に『接客』してくるわ」

私はグラスをドン! と机に置くと、憤然と立ち上がった。 元婚約者だろうが王子だろうが関係ない。 私のシノギ(推し活資金源)を荒らす奴は、誰であろうと排除する。

                    ◇

1階の店舗フロアは、異様な緊張感に包まれていた。 客である貴族令嬢たちは、遠巻きに第一王子たちを見ている。 恐怖というよりは、「なんなの、この空気の読めない男は」という冷ややかな視線だ。

私は階段を降り、彼らの前に立ちはだかった。

「いらっしゃいませ、ジュリアン殿下。当店に何かご用でしょうか? あいにく、男性用の化粧品はまだ開発中ですが」

「ふん、誰が貴様の商品など! エリザベート、これはどういうつもりだ!」

ジュリアン殿下は、手にした一枚の紙を突きつけてきた。 それは、当店の会員カード発行待ちリストだ。

「マリアが! 僕の愛するマリアが、化粧水を買いに来たら『会員制なので売れない』と断られたと言っている! しかも、会員になるには三ヶ月待ちだと!? 王族の婚約者に対する侮辱だぞ!」

隣でマリア嬢が、嘘泣きしながらジュリアンの腕にしがみついている。

「ひどいですぅ……。私、エリザベート様にいじめられているんですぅ。お肌がカサカサになっちゃう……」

はぁ。 私は心の底から溜息をついた。 こいつら、本当に暇なのか?

「殿下。それは『いじめ』ではなく『ルール』です。当店は品質保持のため、会員数を制限させていただいております。公爵夫人でさえ、順番をお待ちいただいているのですよ?」

「うるさい! 王命だ、今すぐマリアに最高級のセットを寄越せ! あと、僕への慰謝料として売上の半分を上納しろ!」

ジュリアン殿下が叫ぶ。 そのあまりの暴論に、店内の空気が凍りついた。 周囲の客たちがヒソヒソと囁き合う。

「あれが第一王子殿下? なんて浅ましい……」 「ご自分の借金のために、元婚約者のお店にたかりに来たの?」 「マリア様もマリア様よ。列に割り込むなんて、品位のかけらもないわ」

聞こえていないのは本人たちだけだ。

「お断りします」

私はきっぱりと言った。

「商品は対価を支払ったお客様のためのもの。そして売上は、正当な企業努力の結晶です。殿下の遊興費や、マリア様のドレス代にするつもりは、金貨一枚たりともありません」

「き、貴様……! 王族に逆らう気か! この店を潰すことなど、僕の一存でどうにでもなるんだぞ!」

ジュリアン殿下は顔を真っ赤にして、騎士団に合図を送った。

「おい、この店の商品をすべて押収しろ! 『毒物が混入している疑いがある』とかなんとか理由をつけてな! 営業停止だ!」

騎士たちが戸惑いながらも、剣に手をかける。 権力の乱用。 典型的な悪役のムーブだ。

普通なら、ここで泣き寝入りするしかないのかもしれない。 けれど、私はニヤリと笑った。 待っていた。 むしろ、こうなることを予期して『準備』していたのだ。

「毒物、ですか。……あら、皆様。お聞きになりまして?」

私は声を張り上げ、店内にいる『お客様』たちに呼びかけた。

「ジュリアン殿下が、当店の化粧品には毒が入っていると仰せです! つまり、現在ご愛用いただいている皆様の肌も、毒に侵されていると!」

その瞬間。 バッ! と扇子を開く音が、店内の一角から響いた。

「――聞き捨てなりませんわね」

凛とした声と共に進み出てきたのは、豊かな金髪をアップにした、威厳ある中年女性だった。 彼女の背後には、数名の高位貴族の婦人たちが控えている。

ジュリアン殿下の顔色が、サァァッと青ざめた。

「こ、コウ……公爵夫人……!?」

現れたのは、宰相閣下の奥方であり、社交界のドンと恐れられる「鉄の女」、アデレイド公爵夫人だった。 彼女は私の店の最優良顧客(VIP)であり、新作の予約を誰よりも早く入れてくれるコスメオタク仲間でもある。

「ジュリアン殿下。わたくしの肌が、毒に侵されているとおっしゃるの? この、エリザベート様のおかげで10歳は若返ったと夫に褒められた、この肌が?」

アデレイド夫人が、殺気すら感じる笑顔で迫る。

「い、いや、そういうわけでは……」

「わたくしだけではありませんわ。あちらにいらっしゃるのは騎士団長のご婦人、そちらは財務大臣の奥様。皆様、エリザ・コスメの愛用者です。殿下は、この国の主要な貴族の妻たち全員を、敵に回すおつもりかしら?」

店内を見渡せば、そうそうたる顔ぶれの婦人たちが、鬼のような形相でジュリアン殿下を睨みつけていた。

「わたくしの楽しみを奪うなんて、許しませんわよ」 「明日からの肌の調子はどうしてくれるの?」 「夫に言いつけて、王家の予算審議を止めてもらいますわ」

女性の美への執着を敵に回すとどうなるか。 それは、核兵器のスイッチを押すよりも恐ろしいことなのだ。 国の政治を裏で操っているのは、実質彼女たちなのだから。

「ひっ……!」

ジュリアン殿下が後ずさる。 マリア嬢も震え上がり、彼の背中に隠れている。

私はダメ押しの一撃を放った。

「殿下。この店の商品は、王立魔法研究所の厳正な検査をパスしております。その証明書も、王家からの認可証もすべて揃っております。それでも『毒物』と言いがかりをつけ、営業を妨害されるのであれば……」

私は一歩踏み出し、冷徹に見下ろした。

「正式に、国王陛下へ抗議文を提出させていただきます。連名には、ここにいらっしゃる全ての奥様方が署名してくださるでしょう。……それでもよろしいですか?」

「う、ううう……ッ!」

ジュリアン殿下は、完全に詰んだ。 四面楚歌。 味方はマリア嬢と、気まずそうに視線を逸らす騎士たちだけ。

「お、覚えてろよエリザベート! いつか必ず吠え面をかかせてやる!」

捨て台詞。 小物界の教科書に載せたいくらい完璧な捨て台詞を吐いて、彼は店から逃げ出した。 マリア嬢も「きゃあん!」と悲鳴を上げてその後を追う。

嵐が去った後、店内には静寂が……訪れることはなかった。

「ブラボー!!」 「さすがはエリザベート様!」 「あんな無能王子、追い返して正解よ!」

パチパチパチパチッ! 万雷の拍手が巻き起こった。 アデレイド夫人が私の手を取り、ウィンクをする。

「良い見世物だったわ。おかげで気分がスカッとしたわよ。……それで、お礼に新作の予約順位を繰り上げてくださる?」

「ふふっ、善処いたしますわ」

こうして、元婚約者による妨害工作は、逆に私の店の結束とブランド力を高めるだけの結果に終わった。 「第一王子ですら手が出せない最強の店」という箔がついたのだ。

                    ◇

その日の夜。 閉店後の執務室で、私は本日の売上計算を終えていた。

「過去最高益……。騒動のおかげで、『私もジュリアン殿下に逆らいたい!』という反骨精神のあるお客様が殺到したわね」

「炎上商法というやつですか。お嬢様の神経の太さには、呆れるを通り越して感服いたします」

セバスチャンが紅茶を淹れてくれる。

手元には、莫大な利益。 これで、次のステップに進める。

私は机の引き出しから、レオンハルト様のステータス管理表(自作)を取り出した。

「武器よし、防具よし、ポーションよし。……次は、機動力ね」

レオンハルト様が次に挑むダンジョンは広大だ。 徒歩での移動は体力を消耗する。 ならば、彼専用の「足」が必要だ。

「セバスチャン。名馬を一頭手配して。血統書付きの、軍用馬の中でも最高ランクのやつを」

「……お言葉ですが、馬は維持費がかかりますよ? それに、離宮には厩舎の管理人がおりません」

「だから、『ゴーレム馬』にするのよ。古代魔導文明の遺産(アーティファクト)を発掘して、私が修理・改造するわ。あれなら餌はいらないし、タイヤ……じゃなくて脚もパンクしない」

「……発掘、ですか。また随分と大掛かりな」

「金ならあるわ。発掘チームを雇って、遺跡の一つや二つ掘り返せばいいのよ」

私は窓の外、王城の方角を見つめた。 離宮の方向だ。

「待っていてね、レオンハルト様。今度は貴方に、風よりも速く走る『愛車』をプレゼントするから」

私の推し活は、留まるところを知らない。 妨害が入れば入るほど、燃え上がるのがオタクという生き物なのだ。

一方その頃。 離宮のレオンハルトの元には、山のような荷物が届いていた。

「……またか」

レオンハルトは、部屋を埋め尽くす箱の山を見上げて呆然としていた。 中身は、最高級の食材、見たこともないふかふかの寝具、そして大量の魔石。

『エリザ・コスメティクス』のロゴが入った箱には、メッセージカードが添えられている。

『季節の変わり目ですので、お体ご自愛ください。  追伸:来週、第一王子が何か嫌がらせをしてくるかもしれませんが、私が社会的に抹殺しておいたのでご安心ください』

「……社会的に抹殺?」

レオンハルトは頬を引きつらせた。 あの令嬢は、一体何と戦っているのか。 そして、自分をどうしたいのか。

「……装備が、どんどん豪華になっていく」

彼は自分の身体を見下ろした。 身につけているのは、竜の革のジャケットに、ミスリルのブーツ。 腰には聖剣クラスの魔剣。 指には魔力増幅の指輪がジャラジャラとついている。

鏡に映る自分は、もはや「不遇の王子」ではない。 どこからどう見ても、「ラスボス討伐直前の勇者」だ。

「……強くなっているのは、確かだ」

彼は剣を握りしめた。 以前なら苦戦していたレベルの魔獣も、今では一撃で倒せる。 身体が軽い。魔力が溢れる。

「エリザベート……。お前は俺に、何を求めているんだ?」

金だけの関係ではない。 政治的な利用でもない。 彼女の過剰なまでの「投資」と、向けられる純粋な視線。

「……今度会ったら、ちゃんと聞かなければな」

レオンハルトは、届いたばかりの最高級羽毛布団(金貨500枚相当)に倒れ込んだ。 その柔らかさに、不覚にも瞬時に眠気が襲ってくる。

「……くそ、寝心地まで最高かよ」

彼の口元が、自然と緩んだ。 孤独だった離宮の夜が、少しずつ、騒がしくも温かいものに変わろうとしていた。
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