『婚約破棄された瞬間、前世の記憶が戻ってここが「推し」のいる世界だと気づきました。恋愛はもう結構ですので、推しに全力で貢ぎます。

放浪人

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第6話:推しの装備がインフレしていく

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王都の北、険しい岩山が連なる『竜の顎』と呼ばれる渓谷地帯。 そこは、凶暴なワイバーンやオーガが巣食う、Aランク指定の危険地帯である。

通常、ここを探索するには、熟練の騎士が十名は必要とされる。 だが今、その渓谷をたった二人で歩く影があった。

第三王子レオンハルトと、その老従者ハンスである。

「……殿下。本当に、我々だけでよろしいのですか?」

ハンスが心配そうに周囲を警戒しながら尋ねる。 彼の懸念はもっともだ。 ここ最近、この付近で強力な変異種(ネームドモンスター)の目撃情報が相次いでいる。 本来なら、国軍の精鋭部隊が動くべき案件だ。 しかし、第一王子ジュリアンが掌握する騎士団は、「予算不足」を理由に出動を拒否した。

民を見殺しにはできない。 だから、レオンハルトは自ら出向いたのだ。

「問題ない、ハンス。お前は下がっていろ」

レオンハルトは、淡々と答えた。 その足取りには、迷いも恐怖も一切ない。 それどころか、どこか散歩にでも行くような軽やかささえある。

理由は明白だ。

レオンハルトは、自分の身につけている『装備』を見下ろした。

(……改めて見ると、異常だな)

彼が身に纏っているのは、一見するとシックな黒のロングコートだ。 だが、その素材はただの革ではない。 『古代竜(エンシェント・ドラゴン)の喉元の皮』。 ドラゴンの身体の中で最も柔軟で、かつ魔法耐性が高い部位のみを使用した、超一級品である。 物理攻撃を8割カットし、炎と氷の魔法を無効化する。 お値段、推定金貨80万枚。

足元には、『疾風の魔道ブーツ』。 空気を踏んで二段ジャンプができる機能を持ち、着用者の移動速度を3倍にする。 お値段、金貨45万枚。

腰に差した剣は、先日受け取ったミスリルの剣……を、さらに強化改造したもの。 刀身には何重ものルーン文字が刻まれ、自動修復機能と魔力増幅機能が付与されている。 お値段、測定不能(プライスレス)。

そして極めつけは、両手の指にはまったジャラジャラの指輪たちだ。 『毒無効』『麻痺無効』『即死耐性』『暗視』『自動HP回復』……。 エリザベートから「念のため」「これも念のため」と渡された指輪を全部つけたら、成金の若造みたいになってしまった。

(俺は……一体何なんだ?)

レオンハルトは深い溜息をついた。 これらは全て、あの「ATM」を自称する公爵令嬢、エリザベートからの支援物資だ。

彼女は言った。 『貴方は私の推し(意味不明だが、たぶん投資対象という意味だろう)ですから、最高の環境で戦っていただかないと困ります』と。

それにしても限度がある。 今の自分の総資産価値は、小国のお城一つ分よりも高いかもしれない。 歩く国家予算。 それが今のレオンハルトだ。

「グルルルルッ……!」

岩陰から、低い唸り声が響いた。 ハンスが息を呑む。

「で、出ました! 『剛腕のオーガキング』です! 殿下、お下がりください!」

現れたのは、通常のオーガの二倍はある巨体。 全身が鋼のような筋肉で覆われ、手には大木を引っこ抜いて作った棍棒を持っている。 過去に幾人もの冒険者を葬ってきた、この渓谷の主だ。

以前のレオンハルトなら、死を覚悟して特攻していただろう。 相打ち覚悟で喉元を狙うしか、勝機はなかったはずだ。

だが。

(……遅く見える)

レオンハルトは、無造作に剣の柄に手をかけた。 オーガキングが咆哮を上げ、猛烈なスピードで突っ込んでくる。 地面が揺れ、殺気が空気を震わせる。

しかし、レオンハルトの目には、その動きが止まっているかのようにスローに見えた。 『千里眼のイヤリング(金貨30万枚)』による動体視力補正の効果だ。

「……ふっ」

彼は軽く息を吐き、一歩前に踏み出した。 地面を蹴る感覚すらない。 ブーツの魔力が発動し、身体が羽毛のように軽くなる。

オーガキングの棍棒が振り下ろされる。 直撃すれば岩をも砕く一撃。

レオンハルトはそれを、最小限の動きで避けた。 紙一重ではない。 余裕を持って、半歩横にずれただけだ。

そして、すれ違いざまに剣を抜いた。

「――『一閃』」

銀色の軌跡が走る。 手応えは……まるで豆腐を切ったかのように軽かった。

ドスン。

一拍遅れて、巨大な音が響く。 振り返れば、オーガキングの巨体が、腰から真っ二つに分かれて崩れ落ちていた。 鮮血が噴き出すことさえなく、傷口は魔剣の冷気で瞬時に凍結されている。

「な……ッ!?」

ハンスが腰を抜かして座り込んだ。 無理もない。 Aランクのネームドモンスターを、抜刀一閃、またたく間に葬り去ったのだ。

「……切れ味、上がりすぎだろう」

レオンハルト自身も、剣を見つめて呆然とした。 腕力を使ったわけではない。 剣が勝手に魔力を吸い上げ、最適な軌道を描いてくれたのだ。 自分はただ、剣の動きに身を任せただけ。

(これが、金の力……いや、装備の力か)

彼は剣を鞘に納めた。 カチン、と涼やかな音が渓谷に響く。

勝利の高揚感よりも先に、背筋が寒くなるような感覚が襲ってきた。 強くなりすぎている。 自分の実力以上の力が、アイテムによって強制的に引き出されている。

「殿下! すごいです! あんな化け物を一撃で!」

ハンスが駆け寄ってくる。 その目は、主人の強さに感動し、涙で潤んでいた。

「……ハンス。これは俺の力じゃない」

「ご謙遜を! 装備が良いとはいえ、それを使いこなすのは殿下の才能です!」

「……そう思いたいがな」

レオンハルトは苦笑した。 ふと、懐に入っている羊皮紙の感触を確かめる。 エリザベートと交わした『専属支援契約書』。

『甲は乙の提供した装備を惜しみなく使用し、常に最強の状態を維持すること』

彼女の言葉が脳裏に蘇る。 『貴方が生きてさえいればいい』 『死なないことが、私への配当です』

彼女は、自分に何を期待しているのだろう。 これだけの投資をして、本当に見返りを求めていないのだろうか。 男として、王族として、一人の女性にここまで貢がせて、自分は何をしているのだろう。

「……俺は、ヒモ(・・・・)なのかもしれないな」

「はい? 何かおっしゃいましたか?」

「いや、なんでもない。……行くぞ、ハンス。奥にまだ魔物の気配がある」

レオンハルトは歩き出した。 どんなに葛藤があろうと、力があるなら使う。 それで守れる命があるなら、プライドなど捨ててやる。 それが、彼なりの覚悟だった。

しかし。 彼が歩くたびに、指輪がキラキラと光り、コートがバサバサと高貴な音を立てる。 その姿は、孤高の剣士というよりは、全身ブランド物で固めた『歩く宝石箱』であった。

                    ◇

一方その頃。 ハルティア公爵家のテラスにて。

「……くしゅんっ!」

私は可愛らしくくしゃみをした。 誰かが私の噂をしているのかもしれない。 きっとレオンハルト様だ。 今頃、私が送った最強装備セットの威力に感動して、涙を流しているに違いない。

「風邪ですか、お嬢様」

セバスチャンがショールをかけてくれる。

「ううん、違うわ。ただの『尊い』アレルギーよ。推しが生きている世界が眩しすぎて、鼻がムズムズするの」

私はテーブルの上に広げた『レオンハルト育成計画書・フェーズ2』に目を落とした。

現在のレオンハルト様の装備レベルは、ゲーム中盤の適正レベルを遥かに超えている。 ラスボス手前までいけるスペックだ。 だが、まだ足りない。

「攻撃力と防御力は確保したわ。でも、精神耐性がまだ甘い」

ゲーム『ルミナス・ハーツ』には、厄介な状態異常がある。 『魅了』や『混乱』だ。 特に、敵の女幹部が使ってくる『ハニートラップ(精神支配)』は、イケメンキャラ特攻がある。 レオンハルト様のような純情な青年は、コロッとやられてしまう危険性があるのだ。

「絶対に阻止しなければ」

私は拳を握りしめた。 レオンハルト様が、どこの馬の骨とも知れない女敵キャラに操られ、あんなことやこんなことをされるなんて、私の脳内ハードディスクが許しても、乙女心が許さない。

「セバスチャン。次は『聖女の守り石』を探すわよ。あらゆる精神干渉を無効化する伝説の宝石」

「……お嬢様。それは隣国の国宝級アイテムですが」

「金ならあるわ。なければ、隣国ごと経済的に買収すればいいのよ」

「……発想が魔王に近づいておられますな」

セバスチャンが遠い目をした。

そう、私は止まらない。 レオンハルト様が「もう装備欄がいっぱいです」と悲鳴を上げるまで、アイテムを送り続ける。

と、その時。 私の手元にある通信用の魔道具が震えた。 これは、離宮に潜り込ませている「隠密(私の私兵)」からの定期連絡だ。

『報告します。レオンハルト殿下が、嘆きの森から帰還されました』

「無事なの!?」

『はい。無傷です。オーガキングを一撃で粉砕したとのこと』

「キャーッ! さすがレオンハルト様! 強い! かっこいい! 結婚して!」

私はテラスで小躍りした。 セバスチャンが生温かい目で見ているが気にしない。

『……ですが、一つ問題が』

「何? 怪我でもしたの?」

『いえ。殿下が……「この装備のメンテナンスについて、支援者と直接話がしたい」と仰っています。どうやら、装備が凄すぎて、手入れの方法がわからないようです』

私はピタリと動きを止めた。

メンテナンス。 そう、それは盲点だった。 古代竜の皮も、ミスリルの剣も、通常の手入れ道具では扱えない。 専用の魔導オイルや、特殊な研磨剤が必要なのだ。

そして、それはつまり。

「レオンハルト様と……会える?」

会える。 しかも、向こうからのご指名で。 これはデートのお誘いと解釈してもよろしいのではなくて?(違います)

「セバスチャン! 明日の予定は!?」

「午前中に店舗の視察、午後に商談が三件……」

「全部キャンセル! 延期! あるいは影武者に任せる!」

「無茶苦茶ですね……」

私はテラスの手すりに身を乗り出し、王城の方角へ向かって叫びそうになるのを堪えた。

会える。 ついに、ビジネスパートナーとしてではなく、彼の装備をケアする「専属メカニック(自称)」として、堂々と会えるのだ。

「着ていく服を選ばなきゃ! 地味すぎず、派手すぎず、でも『貴女の為に装いました』感が伝わる絶妙なラインのドレスを!」

「お嬢様、あくまで装備のメンテナンスですよね? 作業着の方がよろしいのでは?」

「バカねセバスチャン! 心づもりが大事なのよ! これは聖戦(デート)なの!」

私は部屋に戻り、ウォークインクローゼットをひっくり返し始めた。

推しに会う。 それも、至近距離で。 もしかしたら、装備の着脱を手伝うというラッキースケベ……もとい、不可抗力な接触イベントが発生するかもしれない。

(落ち着け、エリザベート。鼻血を出したら終わりよ。深呼吸するのよ)

私は鏡の前で、自分に言い聞かせた。 貴女は冷静沈着な敏腕実業家。 ただのATMではない。 彼の隣に立っても恥ずかしくない、立派なパトロンになるのよ。

でも、鏡の中の私の顔は、どうしようもなく緩みきっていた。

「……ああ、明日が楽しみすぎて、心臓が爆発しそう」

                    ◇

翌日。 離宮の応接室(掃除済みでピカピカ)にて。

レオンハルトは、落ち着かない様子でソファーに座っていた。 目の前のテーブルには、紅茶とお茶菓子が用意されている。 これもすべて、あの日以来、定期的に送られてくる支援物資の一部だ。

「……来るのか。あいつが」

彼は、自分の胸の鼓動が少し早くなっていることに気づいた。 装備の話をするだけだ。 礼を言うだけだ。 それなのに、なぜこんなに緊張しているのか。

エリザベート・フォン・ハルティア。 謎多き公爵令嬢。 圧倒的な資金力と、奇行とも取れる行動力で、自分の人生を強引に変えてしまった女性。

(彼女の目的は何だ? 本当に、俺の生存だけなのか?)

扉がノックされる音がした。

「失礼いたします、殿下」

入ってきたのは、いつもの灰色のローブ姿……ではなく。 淡い水色のドレスに身を包んだ、エリザベートだった。 髪は丁寧に編み込まれ、宝石の代わりに魔石のアクセサリーを控えめにつけている。 その姿は、息を呑むほど美しかった。

「お待たせいたしました。専属メンテナンス係、参上いたしました」

彼女はニッコリと微笑んだ。 その笑顔を見た瞬間、レオンハルトの思考回路が一瞬停止した。

(……綺麗だ)

不覚にも、そう思ってしまった。 戦場での殺伐とした空気しか知らない彼にとって、彼女の存在はあまりにも鮮やかすぎた。

「ど、どうも……。わざわざすまない」

「いいえ! 呼んでいただけて光栄です! さあ、どこから脱が……いえ、手入れしましょうか!?」

彼女が鼻息荒く迫ってくる。 その瞳は、獲物を狙う肉食獣のようにギラギラと輝いていた。

「……その前に、少し距離を取ってくれないか。近い」

「失礼しました。私の愛(忠誠心)が溢れすぎました」

こうして。 「壁になりたい私」と「距離を縮めたい(のかどうかわからない)殿下」の、奇妙なメンテナンス・デートが幕を開けるのだった。
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