18 / 20
第18話:公開断罪と「ざまぁ」
しおりを挟む
王城、謁見の間。 張り詰めた空気の中、私、エリザベート・フォン・ハルティアは、優雅な手つきで分厚い書類の束を取り出した。 それは、ハルティア商会の精鋭会計士たちが徹夜で作成した、ジュリアン殿下への『請求書』と、彼の不正を暴く『告発状』のセットだ。
「陛下。発言をお許しいただけますでしょうか」
私が進み出ると、フリードリヒ国王陛下は興味深げに頷いた。
「許す。……その分厚い紙束はなんだ?」
「はい。今回のスタンピード鎮圧にかかった『経費』の明細、およびジュリアン殿下が横領された国家予算の使途不明金に関する調査報告書でございます」
「なっ……!?」
ジュリアン殿下がギョッとして私を見た。
「き、貴様! 余の財布の中身を探ったのか!? 不敬だぞ!」
「不敬? いいえ、これは『監査』です」
私は冷徹に言い放った。
「ジュリアン殿下。貴方は先ほど、『魔物の群れは余が撃退した』とおっしゃいましたね?」
「そ、そうだ! 余の遠隔指揮のおかげだ!」
「なるほど。では、指揮官としての責任をお取りいただきましょう」
私は書類の束を、バサァッ! と床にぶちまけた。 一枚一枚に、驚くべき金額が記されている。
「これは今回の防衛戦で使用したポーション代、武器代、傭兵への報酬、および破壊された北の砦の修繕費の見積もりです。……総額、金貨1200万枚」
会場がどよめいた。 金貨1200万枚。 小国の国家予算数年分に匹敵する額だ。
「な、なんだそのふざけた額は! ボッタクリだ!」
「正規価格です。なにせ、使用したのは最高級品ばかりですので。……さて、殿下。作戦の指揮官は、作戦にかかる費用を負担する義務があります。貴方が『私がやった』と主張するなら、この請求書の宛名は貴方になります」
私はニッコリと微笑んだ。 逃げ道は塞いだ。
「は、払えるわけがないだろう! そんな大金!」
「おや? 払えないのですか? では、今回の作戦を実行したのは貴方ではないということになりますね? 費用を負担したのはハルティア商会であり、実際に戦ったのはレオンハルト様ですから」
「ぐぬぬ……ッ!」
ジュリアン殿下は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。 「手柄は欲しいが、金は払いたくない」。 そんな子供のような理屈が、この場で通じるはずがない。
私はさらに追い打ちをかける。
「それに、払えないというのはおかしな話ですね。……ここにある調査報告書によりますと、殿下は過去3年間で、騎士団の予算から金貨500万枚近くを『機密費』として引き出しておられます」
私は別の書類を突きつけた。
「その金の行方は? ……マリア様へのプレゼント、毎晩の夜会、そして違法な賭博への出資。すべて裏が取れていますわ」
貴族たちがざわめき始める。 「500万枚だと?」「我々の血税を……」「騎士団が弱体化した原因はそれか!」 冷ややかな視線が、ジュリアンとマリアに突き刺さる。
「ち、違う! それは必要経費で……! マリアは聖女の素質があるから、その育成のために……!」
ジュリアンが苦しい言い訳をする。 その隣で、マリア嬢が涙目で震えている。
「そ、そうですぅ! 私、祈りで国を守ろうと……」
「祈りで腹は膨れませんし、魔物も死にません」
私はバッサリと切り捨てた。
「マリア様。貴女が着ているそのドレス、貴女がつけているその宝石。それらを買う金があれば、北の砦にどれだけのポーションを送れたと思いますか? ……貴女の贅沢が、兵士たちの命を奪ったのです」
「ひっ……!」
マリア嬢が青ざめて座り込む。 「人殺し」と言われたに等しい。 周囲の貴族女性たちも、扇子で口元を隠しながら「まあ、汚らわしい」「兵士の血を吸って着飾っていたのね」と囁き合っている。
「ええい、黙れ黙れ! 余は第一王子だぞ! 次期国王だぞ! 金など、王になればいくらでも返せる!」
ジュリアン殿下が錯乱して叫んだ。 最悪の一手だ。 「王になれば国庫を私物化できる」と公言したも同然だ。
玉座のフリードリヒ国王陛下が、ゆっくりと立ち上がった。 その顔には、失望と、静かな怒りが刻まれていた。
「……ジュリアンよ。余は、お前を甘やかして育てすぎたようだ」
「ち、父上……?」
「騎士団を私物化し、国難を放置し、あまつさえ弟の手柄を横取りしようとする。……王たる資格以前に、人の上に立つ者としての資質に欠ける」
国王陛下は、レオンハルト様を見た。 ボロボロのコートを着て、しかし堂々と胸を張る第三王子を。
「レオンハルト。そなたは、何も持たざる身で、民を守り、国を救った。その勇気と、人を惹きつける力……まさしく王の器である」
国王陛下の声が、広間に響き渡る。
「宣言する! 第一王子ジュリアンの王位継承権を剥奪し、平民の身分へと落とす! 同時に、その身柄を拘束し、横領した公金の全額返済を命じる!」
「な、ななな……ッ!?」
ジュリアン殿下が膝から崩れ落ちた。
「へ、平民!? 余が!? 嘘だ、嘘だぁぁぁッ!」
「そして、第三王子レオンハルト! そなたを新たな王太子に任命する! 即位の儀は、国が落ち着き次第、執り行うものとする!」
「はッ! 謹んでお受けいたします!」
レオンハルト様が深く頭を下げる。 広間中から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。 それは、恐怖や義務感からではない。 心からの祝福の拍手だった。
「連れて行け」
国王陛下の合図で、近衛騎士たちがジュリアン殿下とマリア嬢を取り押さえる。
「いやだ! 離せ! 余は王子だぞ!」 「キャァァッ! ドレスが汚れるぅ! 助けてぇ!」
二人はズルズルと引きずられていく。 その途中、ジュリアン殿下が私を睨みつけた。
「エリザベート! 貴様、最初からこれを狙って……!?」
私は彼を見下ろし、冷ややかに微笑んだ。
「ええ。申し上げたはずですわ。『高い勉強代になりますよ』と」
私は彼に近づき、耳元で囁いた。
「ちなみに、貴方が最初に私に渡してくれた『王領鉱山の権利書』。あれから出たレアメタルだけで、今回の戦費の半分は賄えましたの。……皮肉なものですわね。貴方の財産が、貴方を追い落とすための剣(レオンハルト様)を磨き上げたのですから」
「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁッ!!」
ジュリアン殿下は、絶望の叫び声を上げながら、扉の向こうへと消えていった。 自分の愚かさが招いた結末。 完璧な『ざまぁ』の完成だ。
広間に静寂が戻る。 残ったのは、爽快感と、新しい時代の予感。
レオンハルト様が、私の隣に来た。
「……終わったな」
「はい。完璧な勝利です」
「だが、請求書はまだ残っているぞ? 金貨1200万枚、どうするつもりだ?」
彼は床に散らばった書類を見て苦笑した。
「ふふっ、ご安心を。ジュリアン殿下の私財没収はもちろんですが……足りない分は、新しい王太子殿下に、身体で払っていただきますから」
「……身体で?」
レオンハルト様が顔を赤らめる。
「ええ。これからは『王太子妃』として、貴方の公務のサポート、領地経営、外交交渉……死ぬほど働かせていただきます。貴方も、私と一緒に過労死するまで働いて、この国を豊かにして、借金を返済するのです。……一生、逃がしませんよ?」
それは、私なりのプロポーズだった。 金だけの関係は終わった。 これからは、運命共同体としての契約だ。
レオンハルト様は、一瞬驚いた顔をして、それから破顔した。
「ああ。……望むところだ。俺の人生(すべて)、お前に預ける」
彼は私の手を取り、衆人環視の中で、その甲に口づけを落とした。 広間から、再び歓声と、冷やかしの口笛が上がる。
「ヒューッ! お熱いねぇ!」 「英雄様、顔が真っ赤ですぞ!」
私は顔が熱くなるのを感じながらも、しっかりと彼の手を握り返した。
悪役令嬢としての断罪回避。 推しの生存ルート確保。 そして、彼を王にするというメインクエスト。 すべてコンプリートだ。
でも、物語はまだ終わらない。 ここからは、ハッピーエンドのその先。 私と推しが紡ぐ、国造りの物語(アフターストーリー)が始まるのだ。
「さあ、レオン様。まずは祝勝会の準備と、経済復興計画の策定です! 休んでいる暇はありませんよ!」
「……お手柔らかに頼むよ、俺の宰相殿」
私たちは笑い合い、光の差し込む未来へと歩き出した。 私の手には、彼の手の温もりが。 そして頭の中には、すでに次の「投資計画」が渦巻いていた。
(まずは王都の観光地化、それからレオン様のグッズ販売、あ、結婚式の独占放映権も売れるわね……!)
私の推し活は、まだまだ終わらない。 だって、推しが国王になったのだから、次は世界一の皇帝にでもなってもらわないと!
「陛下。発言をお許しいただけますでしょうか」
私が進み出ると、フリードリヒ国王陛下は興味深げに頷いた。
「許す。……その分厚い紙束はなんだ?」
「はい。今回のスタンピード鎮圧にかかった『経費』の明細、およびジュリアン殿下が横領された国家予算の使途不明金に関する調査報告書でございます」
「なっ……!?」
ジュリアン殿下がギョッとして私を見た。
「き、貴様! 余の財布の中身を探ったのか!? 不敬だぞ!」
「不敬? いいえ、これは『監査』です」
私は冷徹に言い放った。
「ジュリアン殿下。貴方は先ほど、『魔物の群れは余が撃退した』とおっしゃいましたね?」
「そ、そうだ! 余の遠隔指揮のおかげだ!」
「なるほど。では、指揮官としての責任をお取りいただきましょう」
私は書類の束を、バサァッ! と床にぶちまけた。 一枚一枚に、驚くべき金額が記されている。
「これは今回の防衛戦で使用したポーション代、武器代、傭兵への報酬、および破壊された北の砦の修繕費の見積もりです。……総額、金貨1200万枚」
会場がどよめいた。 金貨1200万枚。 小国の国家予算数年分に匹敵する額だ。
「な、なんだそのふざけた額は! ボッタクリだ!」
「正規価格です。なにせ、使用したのは最高級品ばかりですので。……さて、殿下。作戦の指揮官は、作戦にかかる費用を負担する義務があります。貴方が『私がやった』と主張するなら、この請求書の宛名は貴方になります」
私はニッコリと微笑んだ。 逃げ道は塞いだ。
「は、払えるわけがないだろう! そんな大金!」
「おや? 払えないのですか? では、今回の作戦を実行したのは貴方ではないということになりますね? 費用を負担したのはハルティア商会であり、実際に戦ったのはレオンハルト様ですから」
「ぐぬぬ……ッ!」
ジュリアン殿下は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。 「手柄は欲しいが、金は払いたくない」。 そんな子供のような理屈が、この場で通じるはずがない。
私はさらに追い打ちをかける。
「それに、払えないというのはおかしな話ですね。……ここにある調査報告書によりますと、殿下は過去3年間で、騎士団の予算から金貨500万枚近くを『機密費』として引き出しておられます」
私は別の書類を突きつけた。
「その金の行方は? ……マリア様へのプレゼント、毎晩の夜会、そして違法な賭博への出資。すべて裏が取れていますわ」
貴族たちがざわめき始める。 「500万枚だと?」「我々の血税を……」「騎士団が弱体化した原因はそれか!」 冷ややかな視線が、ジュリアンとマリアに突き刺さる。
「ち、違う! それは必要経費で……! マリアは聖女の素質があるから、その育成のために……!」
ジュリアンが苦しい言い訳をする。 その隣で、マリア嬢が涙目で震えている。
「そ、そうですぅ! 私、祈りで国を守ろうと……」
「祈りで腹は膨れませんし、魔物も死にません」
私はバッサリと切り捨てた。
「マリア様。貴女が着ているそのドレス、貴女がつけているその宝石。それらを買う金があれば、北の砦にどれだけのポーションを送れたと思いますか? ……貴女の贅沢が、兵士たちの命を奪ったのです」
「ひっ……!」
マリア嬢が青ざめて座り込む。 「人殺し」と言われたに等しい。 周囲の貴族女性たちも、扇子で口元を隠しながら「まあ、汚らわしい」「兵士の血を吸って着飾っていたのね」と囁き合っている。
「ええい、黙れ黙れ! 余は第一王子だぞ! 次期国王だぞ! 金など、王になればいくらでも返せる!」
ジュリアン殿下が錯乱して叫んだ。 最悪の一手だ。 「王になれば国庫を私物化できる」と公言したも同然だ。
玉座のフリードリヒ国王陛下が、ゆっくりと立ち上がった。 その顔には、失望と、静かな怒りが刻まれていた。
「……ジュリアンよ。余は、お前を甘やかして育てすぎたようだ」
「ち、父上……?」
「騎士団を私物化し、国難を放置し、あまつさえ弟の手柄を横取りしようとする。……王たる資格以前に、人の上に立つ者としての資質に欠ける」
国王陛下は、レオンハルト様を見た。 ボロボロのコートを着て、しかし堂々と胸を張る第三王子を。
「レオンハルト。そなたは、何も持たざる身で、民を守り、国を救った。その勇気と、人を惹きつける力……まさしく王の器である」
国王陛下の声が、広間に響き渡る。
「宣言する! 第一王子ジュリアンの王位継承権を剥奪し、平民の身分へと落とす! 同時に、その身柄を拘束し、横領した公金の全額返済を命じる!」
「な、ななな……ッ!?」
ジュリアン殿下が膝から崩れ落ちた。
「へ、平民!? 余が!? 嘘だ、嘘だぁぁぁッ!」
「そして、第三王子レオンハルト! そなたを新たな王太子に任命する! 即位の儀は、国が落ち着き次第、執り行うものとする!」
「はッ! 謹んでお受けいたします!」
レオンハルト様が深く頭を下げる。 広間中から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。 それは、恐怖や義務感からではない。 心からの祝福の拍手だった。
「連れて行け」
国王陛下の合図で、近衛騎士たちがジュリアン殿下とマリア嬢を取り押さえる。
「いやだ! 離せ! 余は王子だぞ!」 「キャァァッ! ドレスが汚れるぅ! 助けてぇ!」
二人はズルズルと引きずられていく。 その途中、ジュリアン殿下が私を睨みつけた。
「エリザベート! 貴様、最初からこれを狙って……!?」
私は彼を見下ろし、冷ややかに微笑んだ。
「ええ。申し上げたはずですわ。『高い勉強代になりますよ』と」
私は彼に近づき、耳元で囁いた。
「ちなみに、貴方が最初に私に渡してくれた『王領鉱山の権利書』。あれから出たレアメタルだけで、今回の戦費の半分は賄えましたの。……皮肉なものですわね。貴方の財産が、貴方を追い落とすための剣(レオンハルト様)を磨き上げたのですから」
「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁッ!!」
ジュリアン殿下は、絶望の叫び声を上げながら、扉の向こうへと消えていった。 自分の愚かさが招いた結末。 完璧な『ざまぁ』の完成だ。
広間に静寂が戻る。 残ったのは、爽快感と、新しい時代の予感。
レオンハルト様が、私の隣に来た。
「……終わったな」
「はい。完璧な勝利です」
「だが、請求書はまだ残っているぞ? 金貨1200万枚、どうするつもりだ?」
彼は床に散らばった書類を見て苦笑した。
「ふふっ、ご安心を。ジュリアン殿下の私財没収はもちろんですが……足りない分は、新しい王太子殿下に、身体で払っていただきますから」
「……身体で?」
レオンハルト様が顔を赤らめる。
「ええ。これからは『王太子妃』として、貴方の公務のサポート、領地経営、外交交渉……死ぬほど働かせていただきます。貴方も、私と一緒に過労死するまで働いて、この国を豊かにして、借金を返済するのです。……一生、逃がしませんよ?」
それは、私なりのプロポーズだった。 金だけの関係は終わった。 これからは、運命共同体としての契約だ。
レオンハルト様は、一瞬驚いた顔をして、それから破顔した。
「ああ。……望むところだ。俺の人生(すべて)、お前に預ける」
彼は私の手を取り、衆人環視の中で、その甲に口づけを落とした。 広間から、再び歓声と、冷やかしの口笛が上がる。
「ヒューッ! お熱いねぇ!」 「英雄様、顔が真っ赤ですぞ!」
私は顔が熱くなるのを感じながらも、しっかりと彼の手を握り返した。
悪役令嬢としての断罪回避。 推しの生存ルート確保。 そして、彼を王にするというメインクエスト。 すべてコンプリートだ。
でも、物語はまだ終わらない。 ここからは、ハッピーエンドのその先。 私と推しが紡ぐ、国造りの物語(アフターストーリー)が始まるのだ。
「さあ、レオン様。まずは祝勝会の準備と、経済復興計画の策定です! 休んでいる暇はありませんよ!」
「……お手柔らかに頼むよ、俺の宰相殿」
私たちは笑い合い、光の差し込む未来へと歩き出した。 私の手には、彼の手の温もりが。 そして頭の中には、すでに次の「投資計画」が渦巻いていた。
(まずは王都の観光地化、それからレオン様のグッズ販売、あ、結婚式の独占放映権も売れるわね……!)
私の推し活は、まだまだ終わらない。 だって、推しが国王になったのだから、次は世界一の皇帝にでもなってもらわないと!
140
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
甘そうな話は甘くない
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」
言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。
「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」
「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」
先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。
彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。
だけど顔は普通。
10人に1人くらいは見かける顔である。
そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。
前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。
そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。
「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」
彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。
(漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう)
この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。
カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる