五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人

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第36話 入学面談

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 王都の初等学校。
 それは、基礎的な読み書きや計算を学ぶための場所であり、子どもが初めて社会に出る第一歩でもある。
 夜の工房で、エリシアは学校から配られた分厚い案内書を前に、小さなため息をついた。

 指定された制服の生地、必要な学用品の数々。
 それらを揃えるお金は、今の工房の稼ぎで十分に足りている。
 だが、エリシアの心を重くしているのは別のことだった。

 「面談には、保護者の同伴が必須」

 案内書に書かれたその一文。
 王都の学校では、両親が揃って面談に臨むのが一般的だ。私のような「婚姻無効」という複雑な事情を抱えた片親の家庭が、好奇の目に晒されないだろうか。
 クララが心無い言葉をかけられたらどうしよう。

 不安で胸が締め付けられそうになっていると、温かい手がエリシアの肩にそっと置かれた。

「一人で抱え込まないでください。……私が、父親代わりとして同行してもいいですか」

 リュシアンの静かで力強い声。
 その申し出は本当にありがたかったが、エリシアは隣で絵本を読んでいるクララを見た。

「……ありがとうございます。でも、これはクララの未来のことですから。クララ自身に、選ばせたいんです」

 数日後の、ロルフとの定期面会日。
 秋晴れの救恤院の中庭で、エリシアはクララとロルフの前に案内書を広げた。

「クララ。来月、学校の先生とお話をする日があるの。……リュシアンも一緒に来てくれるって言っているけれど、クララはどうしたい?」

 大人の事情を押し付けず、娘の意思を最優先する。それが養育誓約の絶対のルールだ。
 クララは案内書とエリシアの顔を交互に見た後、少し離れて立っていたロルフの元へとトテトテと歩み寄った。
 そして、彼の平服の袖を小さな手でぎゅっと掴む。

「パパ」

 ロルフが片膝をつき、娘と視線を合わせる。

「パパも、いっしょに、きて」

 その真っ直ぐな瞳の要求に、ロルフの青い瞳が大きく見開かれた。
 彼はエリシアとリュシアンの顔を一度確認し、そして、深く力強く頷いた。
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