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第五章:正義の進軍
第44話 王国街道を東へ
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鷲ノ巣砦の無血開城。その報は燎原の火のごとく、王国北部を駆け巡った。それは人々に衝撃と、そして大きな希望を与えた。
『あの難攻不落の鷲ノ巣砦が、戦わずして降伏した!』 『ローゼンベルクの戦姫ヴィクトリアはただの武人ではない。彼女こそこの国を救う女神だ!』
噂は噂を呼び、ヴィクトリアという名はもはや革命の象徴として、人々の心に深く刻み込まれていった。
鷲ノ巣砦を攻略した我々は、ついに王都へと続く王国街道へとその駒を進めた。ここは今まで進んできた険しい山岳路とは違う。広く整備された平坦な道。ここからは一気に王都の喉元まで進軍することができる。
私は鷲ノ巣砦の守備隊を味方に加え、さらに兵力を増した我が軍の威容を誇示するように、堂々と街道を東へと進んだ。七千五百の大軍勢が地を揺るがし、土煙を巻き上げながら進む。その先頭には常に、白銀の鎧に身を包んだ私がいた。
街道沿いの小さな村々や町々の反応は、私の想像以上だった。彼らは我々を侵略者として恐れるどころか、むしろ解放軍として熱狂的に歓迎してくれたのだ。
我々の軍勢が近づくと、村人たちは家の外へ飛び出し道を埋め尽くした。そして歓声を上げ、花を投げ、我々の進軍を祝福してくれる。
「ヴィクトリア様!よくぞ来てくださいました!」 「我々も宰相の圧政にはもううんざりしておりました!」 「どうぞこのパンを!水もありますぞ!」
彼らは自分たちのなけなしの食料や物資を、我々に提供してくれた。その瞳は皆一様に輝いていた。彼らは本気で、我々がこの腐敗した世界を変えてくれると信じているのだ。
私は馬上からその一人一人に笑顔で手を振り、応えた。兵士たちもまた誇らしげに胸を張っている。自分たちの戦いがこれほどまでに民衆から支持されている。その事実が彼らの士気をさらに高めていた。
この光景はリヒター宰相にとって最大の誤算だっただろう。彼は私がただの戦狂いの反逆者であり、民衆から恐れられ嫌われていると信じていたはずだ。しかし現実は全く逆だった。
私の進軍はもはや軍事的な侵攻ではない。民衆の圧倒的な支持を背景にした、輝かしい**『凱旋パレード』**と化していたのだ。
ある町を通過した時、一人の幼い少女が人混みをかき分け、私の馬の前に駆け寄ってきた。その手には一輪の銀色の薔薇の造花が握られている。
「……あの、これ……」
少女ははにかみながらその花を私に差し出した。それは私の二つ名『戦場の銀薔薇』にちなんで、彼女の母親が作ってくれたものだろう。
私は馬から身を乗り出し、その花を優しく受け取った。
「……ありがとう。大切にするわね」
私が微笑むと、少女は嬉しそうに顔を真っ赤にした。その純粋な瞳。私は改めて誓った。この子供たちの未来を守るためならば、私は何でもすると。
私はその銀の薔薇を、鎧の胸元に挿した。それを見た民衆から、さらに大きな歓声が上がる。
進軍は驚くほど順調に進んだ。街道沿いにあるいくつかの小さな関所や砦は、我々の姿を見るなり戦わずして次々と門を開いた。彼らもまた王都の腐敗した支配に嫌気がさしていたのだ。中には武器を捨て我々の軍に加わりたいと志願してくる兵士たちもいた。
ローゼンベルク軍は雪だるま式にその数を増やしながら、王国街道を東へ東へと進んでいく。その勢いはもはや誰にも止められない巨大な津波のようだった。
王都の宰相がこの異常事態に気づいた時、我々はすでに彼の想像を遥かに超える場所まで進出していた。彼が主力を集結させている中央街道のガラン砦など、遥か後方だ。我々は完全に敵の防衛網を突破し、王都の心臓部へと迫りつつあったのだ。
「……父上。王都まであと百キロ。もう目と鼻の先ですわ」
野営地で地図を広げながら私が言うと、父は満足げに頷いた。
「うむ。ここまで順調すぎると逆に不気味なくらいだな。……だが宰相もいつまでも指をくわえて見ている訳ではあるまい。必ず次の手を打ってくるぞ」
「ええ。分かっております」
私の脳裏にはエリオット殿下からの密書にあった、一つの言葉が浮かんでいた。
『竜騎士団』
宰相が私を仕留めるために用意した、最強の切り札。彼らが南の森で空振りに終わったと知った時、宰相は必ずその狂犬を我々に差し向けてくるだろう。本当の正念場はこれからだ。
私は鎧に挿した銀の薔薇をそっと撫でた。この花をくれた少女の笑顔を守るために。私は決して負けるわけにはいかない。
王国街道を東へ。我々の正義の進軍は、まだ始まったばかりだ。
『あの難攻不落の鷲ノ巣砦が、戦わずして降伏した!』 『ローゼンベルクの戦姫ヴィクトリアはただの武人ではない。彼女こそこの国を救う女神だ!』
噂は噂を呼び、ヴィクトリアという名はもはや革命の象徴として、人々の心に深く刻み込まれていった。
鷲ノ巣砦を攻略した我々は、ついに王都へと続く王国街道へとその駒を進めた。ここは今まで進んできた険しい山岳路とは違う。広く整備された平坦な道。ここからは一気に王都の喉元まで進軍することができる。
私は鷲ノ巣砦の守備隊を味方に加え、さらに兵力を増した我が軍の威容を誇示するように、堂々と街道を東へと進んだ。七千五百の大軍勢が地を揺るがし、土煙を巻き上げながら進む。その先頭には常に、白銀の鎧に身を包んだ私がいた。
街道沿いの小さな村々や町々の反応は、私の想像以上だった。彼らは我々を侵略者として恐れるどころか、むしろ解放軍として熱狂的に歓迎してくれたのだ。
我々の軍勢が近づくと、村人たちは家の外へ飛び出し道を埋め尽くした。そして歓声を上げ、花を投げ、我々の進軍を祝福してくれる。
「ヴィクトリア様!よくぞ来てくださいました!」 「我々も宰相の圧政にはもううんざりしておりました!」 「どうぞこのパンを!水もありますぞ!」
彼らは自分たちのなけなしの食料や物資を、我々に提供してくれた。その瞳は皆一様に輝いていた。彼らは本気で、我々がこの腐敗した世界を変えてくれると信じているのだ。
私は馬上からその一人一人に笑顔で手を振り、応えた。兵士たちもまた誇らしげに胸を張っている。自分たちの戦いがこれほどまでに民衆から支持されている。その事実が彼らの士気をさらに高めていた。
この光景はリヒター宰相にとって最大の誤算だっただろう。彼は私がただの戦狂いの反逆者であり、民衆から恐れられ嫌われていると信じていたはずだ。しかし現実は全く逆だった。
私の進軍はもはや軍事的な侵攻ではない。民衆の圧倒的な支持を背景にした、輝かしい**『凱旋パレード』**と化していたのだ。
ある町を通過した時、一人の幼い少女が人混みをかき分け、私の馬の前に駆け寄ってきた。その手には一輪の銀色の薔薇の造花が握られている。
「……あの、これ……」
少女ははにかみながらその花を私に差し出した。それは私の二つ名『戦場の銀薔薇』にちなんで、彼女の母親が作ってくれたものだろう。
私は馬から身を乗り出し、その花を優しく受け取った。
「……ありがとう。大切にするわね」
私が微笑むと、少女は嬉しそうに顔を真っ赤にした。その純粋な瞳。私は改めて誓った。この子供たちの未来を守るためならば、私は何でもすると。
私はその銀の薔薇を、鎧の胸元に挿した。それを見た民衆から、さらに大きな歓声が上がる。
進軍は驚くほど順調に進んだ。街道沿いにあるいくつかの小さな関所や砦は、我々の姿を見るなり戦わずして次々と門を開いた。彼らもまた王都の腐敗した支配に嫌気がさしていたのだ。中には武器を捨て我々の軍に加わりたいと志願してくる兵士たちもいた。
ローゼンベルク軍は雪だるま式にその数を増やしながら、王国街道を東へ東へと進んでいく。その勢いはもはや誰にも止められない巨大な津波のようだった。
王都の宰相がこの異常事態に気づいた時、我々はすでに彼の想像を遥かに超える場所まで進出していた。彼が主力を集結させている中央街道のガラン砦など、遥か後方だ。我々は完全に敵の防衛網を突破し、王都の心臓部へと迫りつつあったのだ。
「……父上。王都まであと百キロ。もう目と鼻の先ですわ」
野営地で地図を広げながら私が言うと、父は満足げに頷いた。
「うむ。ここまで順調すぎると逆に不気味なくらいだな。……だが宰相もいつまでも指をくわえて見ている訳ではあるまい。必ず次の手を打ってくるぞ」
「ええ。分かっております」
私の脳裏にはエリオット殿下からの密書にあった、一つの言葉が浮かんでいた。
『竜騎士団』
宰相が私を仕留めるために用意した、最強の切り札。彼らが南の森で空振りに終わったと知った時、宰相は必ずその狂犬を我々に差し向けてくるだろう。本当の正念場はこれからだ。
私は鎧に挿した銀の薔薇をそっと撫でた。この花をくれた少女の笑顔を守るために。私は決して負けるわけにはいかない。
王国街道を東へ。我々の正義の進軍は、まだ始まったばかりだ。
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