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第20話:断罪、そして公爵様の爆弾発言
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真実が白日の下に晒され、舞踏会場は、先ほどとは違う、異様な静寂に包まれていた。
誰もが、言葉を失い、ただ目の前で起きた奇跡と、その奇跡を起こした私、そして、床に膝をつく元王太子の姿を、呆然と見つめている。
「……リナ・フォン・リンドバーグ」
その静寂を破ったのは、玉座の影から、ゆっくりと姿を現した、壮年の男性の声だった。
豪奢な衣装に身を包み、その顔には深い威厳と、そして、息子への失望を刻んだ、この国の王――エドワード様の父君、国王陛下その人だった。
彼は、この舞踏会の惨状を、ずっと陰から、静かに見ていたのだ。
「貴様の数々の罪、もはや見過ごすことはできん。聖女の名を騙り、王家を、国を、そして民を欺いたその大罪! ***万死に値する!***」
国王の、怒りに満ちた声が、大広間に雷鳴のように響き渡る。
「ひっ……! い、嫌……! 私は、悪くない……! エドワード様が、みんなが、私を聖女だって、持ち上げたじゃない!」
リナは、見苦しく叫び、なおも膝をついているエドワード様に、助けを求めようとする。
だが、そのエドワード様は、虚ろな目で床を見つめたまま、ぴくりとも動かない。
彼の心と世界は、もう、完全に壊れてしまっていた。
「衛兵! この女を捕らえよ! 地下牢へ打ち込んでおけ! 正式な沙汰は、追って下す!」
「はっ!」
衛兵たちが、リナの両腕を、容赦なく掴む。
「いやあああ! 離して! 私は聖女よ! この国の宝なのよ! エドワード様あぁぁぁ!」
リナの甲高い悲鳴が、遠ざかっていく。
その哀れな姿に、同情する者は、誰一人としていなかった。
次に、国王の厳しい視線が向けられたのは、彼の唯一の息子である、エドワード様だった。
「……エドワード。お前にも、心底、失望した」
「……父上……」
「真実を見抜くこともできず、偽りの言葉に惑わされ、国宝たるべき真の聖女を、己の嫉妬心から追放するとは。王太子失格だ。お前にも、追って厳罰を下す。それまで、自室にて謹慎していろ」
「……はい」
力なく頷き、エドワード様もまた、衛兵に連れられて、その場を去っていった。
一国の王太子が、罪人のように扱われる姿。
それは、あまりにも惨めで、滑稽な、彼の傲慢さが招いた、当然の結末だった。
すべての騒動が収まった後、国王は、ゆっくりと、私の方へ歩み寄ってきた。
そして、私の目の前で、その国の頂点たる王冠をかぶった頭を、深く、深く、下げた。
「……アリア・フォン・リンドバーグ嬢。いや、アリア様。我が息子が、我が国が、貴女にしてきた数々の非礼、心より、詫びる」
一国の王が、私のような、つい先日まで追放者だった娘に、頭を下げている。
周囲の貴族たちが、息を呑むのが分かった。
「貴女こそが、この国の真の聖女であった。我々は、あまりにも、愚かだった。どうか、この国を、この愚かな民を、お見捨てにならぬよう……」
国王の、必死の懇願。
以前の私なら、この言葉に、少しは心が動いたかもしれない。
でも、今の私は、もう違う。
私の隣で、カイが、私の手を、強く、強く握りしめてくれている。
その、確かな温もりを感じながら、私は、毅然として、国王を見つめ返した。
「国王陛下。お顔をお上げください」
私の静かな、けれど、揺るぎない声に、国王は、恐る恐る顔を上げる。
「私は、もう、あなた方の『聖女』ではありませんわ」
「……なっ!?」
「私の居場所は、ここではありません。私の力は、ヴォルフガント公爵カイ様と、その領地、その民のためにのみ、使わせていただきますと、すでに心に決めておりますので」
私の、はっきりとした拒絶。
国王の顔が、絶望に染まる。
「そ、そんな……! どうか、そこをなんとか……! 貴女のその聖なる力なくしては、この国は、立ち行かぬのだ……!」
「交渉の余地はある」
その時、ずっと黙って私を守るように立っていたカイが、口を挟んだ。
「え……?」
カイは、懇願する国王を、冷たく見下ろしながら、言った。
「アリアを、正式に、このヴォルフガントに***『嫁がせる』***というのなら、考えてやってもいい。もちろん、相応の『誠意』と『持参金』を見せてもらうがな」
――なっ!?!?
その場にいた全員が、私も含めて、完全に、絶句した。
よ、嫁がせる……?
今、この人、なんて言ったの……?
私の頭が、完全に真っ白になっているのを、カイは気づいているのかいないのか。
彼は、不敵な笑みを浮かべ、呆然とする国王に、追い打ちをかけるように、宣言した。
「どうする、陛下? 国を救う聖女を、みすみす手放すか? それとも、賢明な判断を下されるか? ……答えは、聞かずとも分かっているがな」
あまりにも突然すぎる、そして、あまりにも強引な、カイの、愛の爆弾発言。
こうして、私の潔白が証明され、長年の屈辱が晴らされた夜は、新たな、そして、とんでもなく甘い波乱の幕開けと共に、更けていくのだった。
誰もが、言葉を失い、ただ目の前で起きた奇跡と、その奇跡を起こした私、そして、床に膝をつく元王太子の姿を、呆然と見つめている。
「……リナ・フォン・リンドバーグ」
その静寂を破ったのは、玉座の影から、ゆっくりと姿を現した、壮年の男性の声だった。
豪奢な衣装に身を包み、その顔には深い威厳と、そして、息子への失望を刻んだ、この国の王――エドワード様の父君、国王陛下その人だった。
彼は、この舞踏会の惨状を、ずっと陰から、静かに見ていたのだ。
「貴様の数々の罪、もはや見過ごすことはできん。聖女の名を騙り、王家を、国を、そして民を欺いたその大罪! ***万死に値する!***」
国王の、怒りに満ちた声が、大広間に雷鳴のように響き渡る。
「ひっ……! い、嫌……! 私は、悪くない……! エドワード様が、みんなが、私を聖女だって、持ち上げたじゃない!」
リナは、見苦しく叫び、なおも膝をついているエドワード様に、助けを求めようとする。
だが、そのエドワード様は、虚ろな目で床を見つめたまま、ぴくりとも動かない。
彼の心と世界は、もう、完全に壊れてしまっていた。
「衛兵! この女を捕らえよ! 地下牢へ打ち込んでおけ! 正式な沙汰は、追って下す!」
「はっ!」
衛兵たちが、リナの両腕を、容赦なく掴む。
「いやあああ! 離して! 私は聖女よ! この国の宝なのよ! エドワード様あぁぁぁ!」
リナの甲高い悲鳴が、遠ざかっていく。
その哀れな姿に、同情する者は、誰一人としていなかった。
次に、国王の厳しい視線が向けられたのは、彼の唯一の息子である、エドワード様だった。
「……エドワード。お前にも、心底、失望した」
「……父上……」
「真実を見抜くこともできず、偽りの言葉に惑わされ、国宝たるべき真の聖女を、己の嫉妬心から追放するとは。王太子失格だ。お前にも、追って厳罰を下す。それまで、自室にて謹慎していろ」
「……はい」
力なく頷き、エドワード様もまた、衛兵に連れられて、その場を去っていった。
一国の王太子が、罪人のように扱われる姿。
それは、あまりにも惨めで、滑稽な、彼の傲慢さが招いた、当然の結末だった。
すべての騒動が収まった後、国王は、ゆっくりと、私の方へ歩み寄ってきた。
そして、私の目の前で、その国の頂点たる王冠をかぶった頭を、深く、深く、下げた。
「……アリア・フォン・リンドバーグ嬢。いや、アリア様。我が息子が、我が国が、貴女にしてきた数々の非礼、心より、詫びる」
一国の王が、私のような、つい先日まで追放者だった娘に、頭を下げている。
周囲の貴族たちが、息を呑むのが分かった。
「貴女こそが、この国の真の聖女であった。我々は、あまりにも、愚かだった。どうか、この国を、この愚かな民を、お見捨てにならぬよう……」
国王の、必死の懇願。
以前の私なら、この言葉に、少しは心が動いたかもしれない。
でも、今の私は、もう違う。
私の隣で、カイが、私の手を、強く、強く握りしめてくれている。
その、確かな温もりを感じながら、私は、毅然として、国王を見つめ返した。
「国王陛下。お顔をお上げください」
私の静かな、けれど、揺るぎない声に、国王は、恐る恐る顔を上げる。
「私は、もう、あなた方の『聖女』ではありませんわ」
「……なっ!?」
「私の居場所は、ここではありません。私の力は、ヴォルフガント公爵カイ様と、その領地、その民のためにのみ、使わせていただきますと、すでに心に決めておりますので」
私の、はっきりとした拒絶。
国王の顔が、絶望に染まる。
「そ、そんな……! どうか、そこをなんとか……! 貴女のその聖なる力なくしては、この国は、立ち行かぬのだ……!」
「交渉の余地はある」
その時、ずっと黙って私を守るように立っていたカイが、口を挟んだ。
「え……?」
カイは、懇願する国王を、冷たく見下ろしながら、言った。
「アリアを、正式に、このヴォルフガントに***『嫁がせる』***というのなら、考えてやってもいい。もちろん、相応の『誠意』と『持参金』を見せてもらうがな」
――なっ!?!?
その場にいた全員が、私も含めて、完全に、絶句した。
よ、嫁がせる……?
今、この人、なんて言ったの……?
私の頭が、完全に真っ白になっているのを、カイは気づいているのかいないのか。
彼は、不敵な笑みを浮かべ、呆然とする国王に、追い打ちをかけるように、宣言した。
「どうする、陛下? 国を救う聖女を、みすみす手放すか? それとも、賢明な判断を下されるか? ……答えは、聞かずとも分かっているがな」
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