偽聖女と蔑まれた私、実は【魔力鑑定EX】の持ち主でした~追放先で出会った無愛想な公爵様に見初められ、今更帰ってきて言われてももう遅いです

放浪人

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第21話:公爵様の求婚と、私の答え

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舞踏会の混乱が嘘のように静まり返った、王城の一室。
国王から、私たちに特別に用意された、豪奢な客間だった。
暖炉の炎が、パチパチと静かに燃えている。

「……あの、カイ」

私は、恐る恐る、隣に立つカイに話しかけた。
先ほどの、彼の、あのとんでもない爆弾発言が、まだ頭の中で、ぐるぐると、エコーのように響いている。

「なんだ」

「その……先ほどの、『嫁がせる』というのは……いったい、どういう……ご冗談、ですの……?」

私の問いに、カイは、こともなげに答えた。

「冗談ではない。言葉通りの意味だ。お前を、俺の妻として、正式に迎え入れる」

「なっ……!?」

分かってはいたけれど、改めて、はっきりと、真正面から告げられて、心臓が口から飛び出しそうになる。

「ど、どうして、そんな、急に……! あのような、皆の前で……!」

「急ではない」

彼は、ゆっくりと私に向き直った。
その美しい青い瞳は、今までにないほど、真剣な、そして熱い光を宿している。

「初めて、森で会った時から、決めていた」

「え……?」

「お前は、俺の力を見て、怯えなかった。綺麗だと言った。暴走する俺を、その身を顧みずに助けてくれた」

彼の大きな手が、私の頬に、そっと触れる。
その指先は、いつもは冷たいのに、今は、驚くほど熱い。

「俺の孤独を、お前だけが、溶かしてくれたんだ、アリア。……父の罪によって、俺が失ってしまった感情を、取り戻してくれた」

「カイ……」

「もう、お前を、誰にも渡したくない。部下としても、鑑定士としてもない。……俺の、たった一人の女(ひと)として、生涯、そばにいてほしい」

それは、今まで聞いた、どんな甘い言葉よりも、甘く、切実な、愛の告白だった。
不器用で、口下手な彼が、一生懸命に、その胸の内を、紡いでくれた、心からの言葉。

涙が、ぽろぽろと、溢れてきた。
嬉しくて、愛おしくて、胸がいっぱいで、どうしようもなくて。

追放されて、すべてを失ったと思っていた。
もう、誰にも愛されることなんてないのだと、諦めていた。
でも、違った。

こんなにも、私を想ってくれる人がいた。
私の本当の価値を、誰よりも先に見つけて、大切にしてくれた人がいた。

「……私で、いいのですか?」

震える声で、私は尋ねた。

「私のような、追放された罪人で……あなた様のような、偉大な公爵様に、釣り合うはずも……」

「黙れ」

私の、自信のない言葉を遮り、彼は、私の体を、強く、強く、抱きしめた。

「お前以外の女など、いらん。俺が欲しいのは、アリア、お前だけだ。お前でなければ、駄目なんだ」

彼の逞しい胸の中で、私は、しゃくりあげながら、何度も、何度も、頷いた。

「……はい」

やっとの思いで、声を絞り出す。

「はい……! 喜んで……! カイの、お嫁さんに、なります……!」

私の答えを聞いて、彼の腕の力が、さらに、さらに強くなる。
まるで、二度と離さないと、言うかのように。
どれくらいの時間、そうしていただろうか。

やがて、彼はゆっくりと体を離すと、私の涙を、その大きな指先で、優しく拭ってくれた。
そして、その整った顔が、ゆっくりと、ゆっくりと近づいてきて――。

唇に、柔らかくて、熱い感触。

それは、雪解け水のように、どこまでも優しくて、温かい、初めての口づけだった。

私の心は、完全に、この氷の公爵様に奪われてしまったのだと。
そう、確信した瞬間だった。

この日、私たちは、ようやく本当の意味で、一つになった。
これから、どんな困難が待ち受けていようとも、この人と一緒なら、きっと乗り越えていける。

新たな人生の、本当の始まり。
甘く、輝かしい未来への扉が、今、確かに、開かれたのだ。
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