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1-2:覚醒
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『グガ……ガ?』
「やべっ。動き出した」
モンスターが混乱している間に早く逃げなきゃっ。
「止まれ──」
と叫んだが止まらない。じ、条件が違うのか?
『グルルルルゥ』
念じるだけじゃダメ? 他には……他……瞬きか!?
止まれと念じながら瞬きをする。すると案の定、モンスターの動きは止まった。
しかも後ろのモンスターも揃って止まっている。
は、はは。こりゃいい。
いいけど、動きを止めたところで俺にはどうすることも出来ない。
モンスターを倒す? この十歳の体で?
無理無理無理無理。
逃げる!
それしかない。逃げで──振り向いて動きを止めて──逃げて……。
「う……眼が痛い。もしかして、使用回数の上限があるのか?」
これじゃあ逃げ切れない。十秒足止めしたところで、子供の足じゃあ直ぐに追いつかれる。
せめて避難区画にまで逃げ込めれば……そう思っていたけれど、そこまでまだまだ距離がある。
あと何十回と動きを止めなければ、とてもじゃないがたどり着かない。
ダメ……なのか……
そう思った時、突然すぐ横の通路へと引きずり込まれた。
「よく頑張ったな坊主」
「え?」
俺を担ぎ上げたのは獣人族の男だった。
虎をそっくりそのまま擬人化姿の獣人族は、灰色の珍しい毛色をしている。
「お前ぇ、軽いな。だったらこの先の空気穴から放り投げれば、届くだろう」
「なっ。く、空気穴って、天井まで五メートルはあるんだぞっ」
「なぁに。俺様は筋力には自信がある。めちゃんこだ。だから届く!」
おいおい冗談だろ。確かに獣人族は人間に比べてパワーがあるって、記憶が蘇る前の僕《・》でも知っている。
だからって五メートルだぜ。いくらなんでも届かないだろ。
それに上の階──地下三階の町まで地面の厚みだけでも数メートルあるんだ。
届く訳がない、届く訳が──
『ルガアァァッ』
「ち、もう来やがったか」
止まれっ──咄嗟にモンスターの動きを止める。
止めきれなかった奴らに押し出され、硬直したモンスターが雪崩のように転がって来た。
「うっらあぁっ!!」
雄たけびにも似た声と同時に、俺の体が宙に投げ出された。
まっすぐ、垂直に上昇。
視線を移すと、あの獣人族がニッコリ笑って俺を見上げていた。
「長生きしろよ、坊主」
「あ……ああぁぁぁっ」
カウント0……。
優しい笑みを浮かべた獣人は、押し寄せたモンスターの波に攫われ……
「止まれえぇぇーっ」
空気穴から見える僅かな視界では、ほんの数匹しか動きを止めることは出来なかった。
この瞬間、眩暈がして──
「おい、穴から子供が飛び出して来たぞ!?」
「キャッチ! もう大丈夫だぞ少年」
地下三階まで飛び出した俺は、ゴツゴツとした腕に抱き留められた。
薄れゆく意識の中、俺は必死に懇願する。
「この下に……俺を……俺を助けてくれた人がいるんだっ。助けて、助けてっ。誰かあの人を助けて!!」
そこまで叫んだあと、意識はぷっつりと切れた。
「やべっ。動き出した」
モンスターが混乱している間に早く逃げなきゃっ。
「止まれ──」
と叫んだが止まらない。じ、条件が違うのか?
『グルルルルゥ』
念じるだけじゃダメ? 他には……他……瞬きか!?
止まれと念じながら瞬きをする。すると案の定、モンスターの動きは止まった。
しかも後ろのモンスターも揃って止まっている。
は、はは。こりゃいい。
いいけど、動きを止めたところで俺にはどうすることも出来ない。
モンスターを倒す? この十歳の体で?
無理無理無理無理。
逃げる!
それしかない。逃げで──振り向いて動きを止めて──逃げて……。
「う……眼が痛い。もしかして、使用回数の上限があるのか?」
これじゃあ逃げ切れない。十秒足止めしたところで、子供の足じゃあ直ぐに追いつかれる。
せめて避難区画にまで逃げ込めれば……そう思っていたけれど、そこまでまだまだ距離がある。
あと何十回と動きを止めなければ、とてもじゃないがたどり着かない。
ダメ……なのか……
そう思った時、突然すぐ横の通路へと引きずり込まれた。
「よく頑張ったな坊主」
「え?」
俺を担ぎ上げたのは獣人族の男だった。
虎をそっくりそのまま擬人化姿の獣人族は、灰色の珍しい毛色をしている。
「お前ぇ、軽いな。だったらこの先の空気穴から放り投げれば、届くだろう」
「なっ。く、空気穴って、天井まで五メートルはあるんだぞっ」
「なぁに。俺様は筋力には自信がある。めちゃんこだ。だから届く!」
おいおい冗談だろ。確かに獣人族は人間に比べてパワーがあるって、記憶が蘇る前の僕《・》でも知っている。
だからって五メートルだぜ。いくらなんでも届かないだろ。
それに上の階──地下三階の町まで地面の厚みだけでも数メートルあるんだ。
届く訳がない、届く訳が──
『ルガアァァッ』
「ち、もう来やがったか」
止まれっ──咄嗟にモンスターの動きを止める。
止めきれなかった奴らに押し出され、硬直したモンスターが雪崩のように転がって来た。
「うっらあぁっ!!」
雄たけびにも似た声と同時に、俺の体が宙に投げ出された。
まっすぐ、垂直に上昇。
視線を移すと、あの獣人族がニッコリ笑って俺を見上げていた。
「長生きしろよ、坊主」
「あ……ああぁぁぁっ」
カウント0……。
優しい笑みを浮かべた獣人は、押し寄せたモンスターの波に攫われ……
「止まれえぇぇーっ」
空気穴から見える僅かな視界では、ほんの数匹しか動きを止めることは出来なかった。
この瞬間、眩暈がして──
「おい、穴から子供が飛び出して来たぞ!?」
「キャッチ! もう大丈夫だぞ少年」
地下三階まで飛び出した俺は、ゴツゴツとした腕に抱き留められた。
薄れゆく意識の中、俺は必死に懇願する。
「この下に……俺を……俺を助けてくれた人がいるんだっ。助けて、助けてっ。誰かあの人を助けて!!」
そこまで叫んだあと、意識はぷっつりと切れた。
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