69 / 110
37-1
しおりを挟む
ルガーウルフ狩りを初めて半月近くが経った。依頼の期日まで約二カ月ほどだ。
なのにまだレア個体を一頭も見つけられていない。
夜の間に必死に探し回って、陽が登ると同時にテントに戻って寝る。
そんな暮らしが続いたある日だ。
──新月ノ夜ニ探セ。
眠っているとそんな声が聞こえた──気がした。
寝ぼけて辺りを見渡しても、いるのはセシリアだけ。
声は渋みのある男の声だったし、彼女ではない。
夢か。うん、寝よう。
新月──新月ね。
月の出ない夜じゃん。
んー、今って月はどんなだっけ? まぁいいや。
目覚めていつものように森を散策して秋の味覚拾い。それから適当に狩りをして、暗くなったら本番へ。
ふと夢の中の言葉が気になって空を見上げると、今夜は半月だった。
ただなんとなく……。
「うぅん。セシリア、半月ってあの向きだっけ?」
「ん? 下半月だよ。もうすぐ月が見えない、真っくぁなようになうね」
下半月……下弦の月ってやつか。
じゃあ新月に向かって月が欠けてんだな。
新月の夜に探せ──あれはどういう意味なんだ?
その日の晩も、レア個体は発見できず。
翌日眠っている間にまた夢を見た──いや聞いた。
──ルガーウルフノ変異種ハ、月ノ出ナイ新月ノ夜ニ現レル。
──ソレ以外ハ巣穴カラ出テコヌゾ。
「んー……声だけ聞こえる夢か……お告げかな?」
最近は早めに切り上げてくることが多かったせいで、暗いうちから寝て、昼前には起きるようになっていた。
今夜はルガーウルフ狩りを止めて、別のモンスターを狙おう。
先日の獣人たちを襲ったホブゴブリンだ。
奴ら、未だに獣人を探しているのか、時々丘の向こうの平原をうろついているのを見かけた。
集落まで三日の距離だ。そこまで出向いて行かれると大変なことになる。
「ということで、ホブゴブリン討伐をしようと思う。あいつらって確か光物が好きで集めてるんじゃなかったっけ?」
言ってから、それはゴブリンだったかなと思いだす。
「んー、分からない。でも退治すうの、賛成」
「よし。とにかく行ってみるか」
巣穴の場所は聞いてある。平原の北西部で、ちょうどこの森を突っ切った先あたりだ。
昼過ぎには移動し、森を抜けるのに三時間ほどかかった。
更に一時間ほど歩くと、山の斜面にホブゴブリンの姿を発見。
徘徊しているのではない。木々の隙間から、奴の背後に洞窟があるのが確認できた。
なのにまだレア個体を一頭も見つけられていない。
夜の間に必死に探し回って、陽が登ると同時にテントに戻って寝る。
そんな暮らしが続いたある日だ。
──新月ノ夜ニ探セ。
眠っているとそんな声が聞こえた──気がした。
寝ぼけて辺りを見渡しても、いるのはセシリアだけ。
声は渋みのある男の声だったし、彼女ではない。
夢か。うん、寝よう。
新月──新月ね。
月の出ない夜じゃん。
んー、今って月はどんなだっけ? まぁいいや。
目覚めていつものように森を散策して秋の味覚拾い。それから適当に狩りをして、暗くなったら本番へ。
ふと夢の中の言葉が気になって空を見上げると、今夜は半月だった。
ただなんとなく……。
「うぅん。セシリア、半月ってあの向きだっけ?」
「ん? 下半月だよ。もうすぐ月が見えない、真っくぁなようになうね」
下半月……下弦の月ってやつか。
じゃあ新月に向かって月が欠けてんだな。
新月の夜に探せ──あれはどういう意味なんだ?
その日の晩も、レア個体は発見できず。
翌日眠っている間にまた夢を見た──いや聞いた。
──ルガーウルフノ変異種ハ、月ノ出ナイ新月ノ夜ニ現レル。
──ソレ以外ハ巣穴カラ出テコヌゾ。
「んー……声だけ聞こえる夢か……お告げかな?」
最近は早めに切り上げてくることが多かったせいで、暗いうちから寝て、昼前には起きるようになっていた。
今夜はルガーウルフ狩りを止めて、別のモンスターを狙おう。
先日の獣人たちを襲ったホブゴブリンだ。
奴ら、未だに獣人を探しているのか、時々丘の向こうの平原をうろついているのを見かけた。
集落まで三日の距離だ。そこまで出向いて行かれると大変なことになる。
「ということで、ホブゴブリン討伐をしようと思う。あいつらって確か光物が好きで集めてるんじゃなかったっけ?」
言ってから、それはゴブリンだったかなと思いだす。
「んー、分からない。でも退治すうの、賛成」
「よし。とにかく行ってみるか」
巣穴の場所は聞いてある。平原の北西部で、ちょうどこの森を突っ切った先あたりだ。
昼過ぎには移動し、森を抜けるのに三時間ほどかかった。
更に一時間ほど歩くと、山の斜面にホブゴブリンの姿を発見。
徘徊しているのではない。木々の隙間から、奴の背後に洞窟があるのが確認できた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
111
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる