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6:無限水
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「さぁ、こちらです。あそこが私たちの仮住まいです」
「仮住まい?」
サソリから助けたのが姉のレイラ。
俺に弓を向けていたのが妹のアイラだ。
「私たちの村は、ここから西にあるオアシスにあるのよ。でもオアシスにモンスターが住み着いてしまって……」
「それで住民全員でここに避難してきたという訳なのです」
最後に現れたサソリからレイラを助けたことで、アイラの警戒心も少しは解けたようだ。
レイラは他の村人たちと一緒に、オアシスへ水を汲みに行っていたそうだ。
住み着いているモンスターは数日に一度、餌を取るためにオアシスを離れる。
「その隙に水を汲んでここまで運んで来ているの」
「私、途中で瓶を落して割ってしまって。それで急いでここに別の瓶を取りに戻ろうとして──」
「それでサソリの群れに?」
尋ねると、レイラは頷いた。
アイラはここに残って警護に当たっていたけど、サソリの群れを見つけて慌ててやって来たそうだ。
彼女たちの仮住まいはテントだった。
巨岩の影に天幕を張って、日中の日差しを避けている。そんな感じか。
俺は彼女たちのテントに招かれ、一息ついた。
そこでお互い自己紹介をすることに。まぁ二人の名前はもう分かっているのだけれど。
「かぐら、たくみ……さま。変わったお名前ですね」
「いや、さまはいらないよ」
「その鳥……ううん、もしかして子竜?」
アイラは俺の頭の上にいるドラゴンが気になっているようで、じぃーっと見上げている。
「あ、あぁ、そうだよ。こいつは古竜さ」
「ふん、娘よ。こりゅう違うだ」
「「え?」」
「我は可愛い赤ちゃんドラゴンではない! 我は古《いにしえ》のドラゴン種ぞ!」
なんだよ。可愛い赤ちゃんドラゴンって。
二人ともドン引きしてるだろ。
「ふむ。外が騒がしいな」
ドラゴンの言葉に、呆然としていた二人がはっとなる。
「あ、村の人が戻ったんだわ」
「姉さんが戻ってこないから、心配してるんじゃない?」
「そうね。出迎えに行ってきます」
レイラがテントを出ていくと、俺たちも彼女を追った。
人垣が出来ていて、水を汲んで来ただけにしてはなんだか仰々しい。
レイラとアイラの二人が人垣へと向かう。
暫くして戻ってくると、
「獲物を探しにオアシスを離れていたはずのワームが、すぐに戻って来てしまったそうなんです」
「気づくのが早かったから、村の人は無事だったけど。でも、水が……」
ワーム……あのミミズかぁ。
水がないとこんな砂漠じゃ、何日も持たないぞ。
「姉さん、水はあとどの位残っているの?」
「……今夜の分しか」
「くっ。やっぱりあのワームを倒すしか!」
「無理よアイラっ。他のサンドワームと比べても、一回り以上大きい亜種なのよっ」
亜種なんているのか。
オアシスに住み着いているというなら、倒さなきゃならないだろう。
モンスターの不在を狙っうにしろ、今日みたいに水が汲めないことだってあるだろうし。
とりあえず今は──
「水なら俺が提供するよ」
「「え?」」
まずはカートをポケットから取り出した。
「キャ──蓋はこうやって開けます。使い終わったら、開ける時とは逆方向に回せば、蓋はしまります。空になった容器は、俺の所に持って来てください」
プラゴミの処分は、この世界では出来ないだろう。
ポイ捨てすれば環境汚染にもなりかねない。
「ほ、本当にこのまま飲めるのですか?」
「えぇ、大丈夫です。料理に使う事も出来るし、洗いものにも使えますから」
飲料調理用として家族の人数×二本ずつ、ひとまず配った。
そのほかの用途で使う水は──
「ここの瓶に水を溜めればいい?」
「は、はい」
「いっぱいどうなってるの? なんでそんなに水の容器がポンポン出てくるのよ」
「はは、は。企業秘密ってことで」
そういうと二人は首を傾げた。
「ドラゴン、手伝ってくれよ」
「なぜ我が……キャンプ飯を所望するぞ!」
「あー、はいはい。あとでな」
クーラーボックスからひたすらペットボトルを取り出す。
「ごめん、レイラとアイラは蓋を開けるの手伝って貰えるかな?」
「は、はい」
「わ、分かった。でも開けるだけでいいの?」
「あぁ。あとはドラゴンがやってくれるからさ」
蓋を開けたペットボトルの水は、ぷかぷか浮かんで瓶の中へ。
もう本数が分からないほどのペットボトルを開け、十個の水瓶がようやく水で満たされた。
「はぁ、終わった……。あ、ゴミはこの中にお願いするよ」
「ゴ、ゴミ? この容器ゴミなの?」
「ん? どうだよ。まぁ水を入れるのに使えなくもないけど、こう、ほら」
俺はペットボトルを潰して見せた。水のペットボトルは簡単に潰れるんだよなぁ。
こうなると元の形に戻すのは無理だろう。
「って訳で、簡単に潰れてしまうんだ」
ゴミは全部、キャンプ用のダストボックスに入れる。
消耗品はカートに戻すと補充されるのに対し、ダストボックスの中に入れたものは消滅する。
鑑定してみると【環境に優しいゴミ箱。無限に入れられる】とあった。
「き、消えました。なんて不思議なアイテムなのでしょう」
「凄いっ。どんどん入るわ」
二人は楽しそうにペットボトルを入れまくった。
『おい、主よ。これは念話だ』
念話? 頭に直接響く声はドラゴンのもの。
二人に聞かれるとマズいことなのか?
『主の世界から持って来た物は、出来ればあまり人に見せぬ方がいいだろう』
この世界だと規格外なものばかりか。
いや、無限にゴミを収集できて、無限に出てくる飲食物は地球でも規格外だけどさ。
『どうしてもと言う時には、マジックアイテムだと説明するがいい。まぁマジックアイテムにしても高価な品だ。窃盗目的で近づく者もいよう』
ドラゴンには分かったという意思表示で頷いてみせた。
「仮住まい?」
サソリから助けたのが姉のレイラ。
俺に弓を向けていたのが妹のアイラだ。
「私たちの村は、ここから西にあるオアシスにあるのよ。でもオアシスにモンスターが住み着いてしまって……」
「それで住民全員でここに避難してきたという訳なのです」
最後に現れたサソリからレイラを助けたことで、アイラの警戒心も少しは解けたようだ。
レイラは他の村人たちと一緒に、オアシスへ水を汲みに行っていたそうだ。
住み着いているモンスターは数日に一度、餌を取るためにオアシスを離れる。
「その隙に水を汲んでここまで運んで来ているの」
「私、途中で瓶を落して割ってしまって。それで急いでここに別の瓶を取りに戻ろうとして──」
「それでサソリの群れに?」
尋ねると、レイラは頷いた。
アイラはここに残って警護に当たっていたけど、サソリの群れを見つけて慌ててやって来たそうだ。
彼女たちの仮住まいはテントだった。
巨岩の影に天幕を張って、日中の日差しを避けている。そんな感じか。
俺は彼女たちのテントに招かれ、一息ついた。
そこでお互い自己紹介をすることに。まぁ二人の名前はもう分かっているのだけれど。
「かぐら、たくみ……さま。変わったお名前ですね」
「いや、さまはいらないよ」
「その鳥……ううん、もしかして子竜?」
アイラは俺の頭の上にいるドラゴンが気になっているようで、じぃーっと見上げている。
「あ、あぁ、そうだよ。こいつは古竜さ」
「ふん、娘よ。こりゅう違うだ」
「「え?」」
「我は可愛い赤ちゃんドラゴンではない! 我は古《いにしえ》のドラゴン種ぞ!」
なんだよ。可愛い赤ちゃんドラゴンって。
二人ともドン引きしてるだろ。
「ふむ。外が騒がしいな」
ドラゴンの言葉に、呆然としていた二人がはっとなる。
「あ、村の人が戻ったんだわ」
「姉さんが戻ってこないから、心配してるんじゃない?」
「そうね。出迎えに行ってきます」
レイラがテントを出ていくと、俺たちも彼女を追った。
人垣が出来ていて、水を汲んで来ただけにしてはなんだか仰々しい。
レイラとアイラの二人が人垣へと向かう。
暫くして戻ってくると、
「獲物を探しにオアシスを離れていたはずのワームが、すぐに戻って来てしまったそうなんです」
「気づくのが早かったから、村の人は無事だったけど。でも、水が……」
ワーム……あのミミズかぁ。
水がないとこんな砂漠じゃ、何日も持たないぞ。
「姉さん、水はあとどの位残っているの?」
「……今夜の分しか」
「くっ。やっぱりあのワームを倒すしか!」
「無理よアイラっ。他のサンドワームと比べても、一回り以上大きい亜種なのよっ」
亜種なんているのか。
オアシスに住み着いているというなら、倒さなきゃならないだろう。
モンスターの不在を狙っうにしろ、今日みたいに水が汲めないことだってあるだろうし。
とりあえず今は──
「水なら俺が提供するよ」
「「え?」」
まずはカートをポケットから取り出した。
「キャ──蓋はこうやって開けます。使い終わったら、開ける時とは逆方向に回せば、蓋はしまります。空になった容器は、俺の所に持って来てください」
プラゴミの処分は、この世界では出来ないだろう。
ポイ捨てすれば環境汚染にもなりかねない。
「ほ、本当にこのまま飲めるのですか?」
「えぇ、大丈夫です。料理に使う事も出来るし、洗いものにも使えますから」
飲料調理用として家族の人数×二本ずつ、ひとまず配った。
そのほかの用途で使う水は──
「ここの瓶に水を溜めればいい?」
「は、はい」
「いっぱいどうなってるの? なんでそんなに水の容器がポンポン出てくるのよ」
「はは、は。企業秘密ってことで」
そういうと二人は首を傾げた。
「ドラゴン、手伝ってくれよ」
「なぜ我が……キャンプ飯を所望するぞ!」
「あー、はいはい。あとでな」
クーラーボックスからひたすらペットボトルを取り出す。
「ごめん、レイラとアイラは蓋を開けるの手伝って貰えるかな?」
「は、はい」
「わ、分かった。でも開けるだけでいいの?」
「あぁ。あとはドラゴンがやってくれるからさ」
蓋を開けたペットボトルの水は、ぷかぷか浮かんで瓶の中へ。
もう本数が分からないほどのペットボトルを開け、十個の水瓶がようやく水で満たされた。
「はぁ、終わった……。あ、ゴミはこの中にお願いするよ」
「ゴ、ゴミ? この容器ゴミなの?」
「ん? どうだよ。まぁ水を入れるのに使えなくもないけど、こう、ほら」
俺はペットボトルを潰して見せた。水のペットボトルは簡単に潰れるんだよなぁ。
こうなると元の形に戻すのは無理だろう。
「って訳で、簡単に潰れてしまうんだ」
ゴミは全部、キャンプ用のダストボックスに入れる。
消耗品はカートに戻すと補充されるのに対し、ダストボックスの中に入れたものは消滅する。
鑑定してみると【環境に優しいゴミ箱。無限に入れられる】とあった。
「き、消えました。なんて不思議なアイテムなのでしょう」
「凄いっ。どんどん入るわ」
二人は楽しそうにペットボトルを入れまくった。
『おい、主よ。これは念話だ』
念話? 頭に直接響く声はドラゴンのもの。
二人に聞かれるとマズいことなのか?
『主の世界から持って来た物は、出来ればあまり人に見せぬ方がいいだろう』
この世界だと規格外なものばかりか。
いや、無限にゴミを収集できて、無限に出てくる飲食物は地球でも規格外だけどさ。
『どうしてもと言う時には、マジックアイテムだと説明するがいい。まぁマジックアイテムにしても高価な品だ。窃盗目的で近づく者もいよう』
ドラゴンには分かったという意思表示で頷いてみせた。
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