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7:オアシスの主は食べられない
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「おぉ、おおぉぉぉ。それはなんだ、それはなんだ!?」
「なんだって言われると……ライスバーガー?」
焼きおにぎりを半分の厚みに切り、フライパンで焼いたステーキと青葉を挟んで焼いただけのものだ。
「二人もどうぞ」
ライスバーガーの他に、サラダも用意した。まぁキャベツと人参の千切りに、茹でたブロッコリーを添えただけのものだけど。
「助けてくださったうえに、貴重な水も分けていただいたのに。このうえ食料まで……」
「心配しないで。気ままな一人旅だし」
「我!」
「あー、一人と一匹旅」
「旅……ど、どこから来たのか、聞いてもいい?」
アイラは興味津々といた様子で、ライスバーガーを頬張りながら訪ねて来た。
どこから──チラりとドラゴンを見ると、また頭の中に声が響いた。
『迷い人であることは、極力話さぬ方がいい。そもそも人間に迷い人と言っても、理解は出来ぬであろうがな』
迷い人のことは周知されていないのか。
『北の山脈を越えた地から来た、とでも言うがいい。砂漠には特有の資源がある。それを手に入れたら、北へ戻るつもりでいたとでもな』
助かる。
ドラゴンに教えて貰った通りのことを二人に伝えた。
「サンドパールのことでしょうか?」
『そうだ』
「あぁ、そうなんだ」
「じゃあ、狙っているのはサンドワームの亜種……なのね」
え……なんでそうなるの?
「はあぁぁ!? サンドワームの目玉が、サンドパールだってぇ!?」
「うむ。奴らにはな小さな目玉がいくつかあるのだが、砂に潜るため退化して皮膚の下に埋まってしまっておる」
「聞きたくない情報だ」
「まぁ聞け。亜種になるとな、水場を好むようになる。そして皮膚の下にあった目玉が、皮膚の表面に出てくるのだ」
想像しただけで気持つ悪い。巨大ミミズに目玉があるってことだからな。
「その目玉は虹色に輝き、美しいとされている」
「されているって、まさか確認されていない未実装アイテムとかいうんじゃ」
「みじっそうが何のことか知らぬが、実在するものだから安心せい。我が興味なくて見たことがないだけだ」
サンドワームかぁ。
オアシスに居座ってる奴だから、探す手間は省ける。倒したほうがいい奴だし、そのつもりでもあったけど……。
ん?
「お前、もしかしてわざとサンドパールの話を俺にさせたのか?」
「さぁ、なんのことやらのぉ」
こいつ、わざとだ。
「亜種のサンドワームはこれまで主が見て来た奴の数倍の大きさだ」
「うえっ」
「皮膚は毛に覆われ、その毛には麻痺性の毒があるが……まぁ主には関係ないな」
「サソリといい、麻痺好きだな砂漠のモンスターは」
「生きたままじっくり喰うのが好きなのだろう」
聞きたくなかった、それ。
「まぁとにかくデカいからな。主の筒鈍器でなうまくダメージを与え難いかもしれぬ」
「え、無敵テントが通用しないのか……困るな」
「ぶよぶよだしの。打撃は効果が薄い。というかテントでモンスターを殴り飛ばす奴も大概だな」
ぶよぶよとか嫌なワードだなぁ。
けどそうなると、対策を練らなきゃな。
「なにか弱点はないのか?」
「鑑定で実際に見て見ろ。明日、オアシスに行けばよかろう」
そう言うと、ドラゴンはシュラフの上にゴロンとなった。
二人の姉妹のテントに泊まってくれと言われたが、さすがにそれは辞退。
自前のテントで眠ることにした。
ランタンの明かりを消そうとした時、
「お、起きてる?」
この声はアイラか?
「どうした?」
「あ、うん……あの、旅の話……聞きたくて」
「え、旅の?」
ど、どうしよう。この世界を旅なんて、実際はまだし始めたばかりで森と砂漠しかしらない。
おーい、ドラゴーン。
助けを求めるようにシュラフで胡坐をかくドラゴンを見る。
『主、南の森以外の、緑が豊かな地を知っているか? その娘は生まれてから一度も砂漠を出たことがないだろう』
砂漠しかしらない……アイラが聞きたいのは、緑豊かな土地のこと?
「え、えっと。北部の山脈を越えると、草木がいっぱいあってね──」
父方の実家は農家で、結構な田舎にある。田んぼや畑、山や川の風景をアイラに話して聞かせた。
些細な話題にも、彼女は目を輝かせた。
「じ、じゃあ、海は見たことある?」
「あぁ、あるよ」
「そ、それじゃあ……海って本当にしょっぱいの?」
おぉー、海を知らない子あるあるネタだな。
「本当さ。めちゃくちゃしょっぱいよ。もしアイラが海を見る機会があっても、絶対に飲まないように。余計に喉が渇くことになるぞ」
「きっとたくさんの塩が入ってるのね。砂漠では塩なんて、高級品だけど」
そっか。
内陸部だと塩は貴重なんだな。
その後もアイラに「あれは見たか」「これは本当にそうなのか」と尋ねられ、当たり障りのない程度に答えるのが続いた。
夜は冷える。焚火台を出して薪をくべ、火を点けて暖を取る。
アイラは俺の話に耳を傾け、子供のように目を輝かせた。
きっと彼女は、砂漠の外の世界に興味があるのだろう。
長い時間二人で話をしていたが、焚火の火が小さくなってきたところでお開きになった。
その翌日──
アイラの案内でオアシスへと向かう。
「あれよ」
「うえぇぇ……予想以上にデカァ」
「おぉ、立派なサイズだのぉ」
オアシスの池、というのかな? それをぐるりと半周するミミズ改め毛虫がいた。
【サンドワーム・亜種】
サンドワームが突然変異して進化したもの。
皮膚の表面は毛に覆われ、その毛には麻痺性の毒が流れている。
刺されると体が麻痺し、生きたまま喰われることになるだろう。
火が弱点ではあるが、体が大きいため火球魔法では火傷程度のダメージしか
与えられない。
肉はぶよぶよで食べられたものではない。
最後の一行はいらないから!
けど、弱点は火か。
火球魔法がダメなら、それ以上の範囲を一度に燃やせるならどうだ?
「なんだって言われると……ライスバーガー?」
焼きおにぎりを半分の厚みに切り、フライパンで焼いたステーキと青葉を挟んで焼いただけのものだ。
「二人もどうぞ」
ライスバーガーの他に、サラダも用意した。まぁキャベツと人参の千切りに、茹でたブロッコリーを添えただけのものだけど。
「助けてくださったうえに、貴重な水も分けていただいたのに。このうえ食料まで……」
「心配しないで。気ままな一人旅だし」
「我!」
「あー、一人と一匹旅」
「旅……ど、どこから来たのか、聞いてもいい?」
アイラは興味津々といた様子で、ライスバーガーを頬張りながら訪ねて来た。
どこから──チラりとドラゴンを見ると、また頭の中に声が響いた。
『迷い人であることは、極力話さぬ方がいい。そもそも人間に迷い人と言っても、理解は出来ぬであろうがな』
迷い人のことは周知されていないのか。
『北の山脈を越えた地から来た、とでも言うがいい。砂漠には特有の資源がある。それを手に入れたら、北へ戻るつもりでいたとでもな』
助かる。
ドラゴンに教えて貰った通りのことを二人に伝えた。
「サンドパールのことでしょうか?」
『そうだ』
「あぁ、そうなんだ」
「じゃあ、狙っているのはサンドワームの亜種……なのね」
え……なんでそうなるの?
「はあぁぁ!? サンドワームの目玉が、サンドパールだってぇ!?」
「うむ。奴らにはな小さな目玉がいくつかあるのだが、砂に潜るため退化して皮膚の下に埋まってしまっておる」
「聞きたくない情報だ」
「まぁ聞け。亜種になるとな、水場を好むようになる。そして皮膚の下にあった目玉が、皮膚の表面に出てくるのだ」
想像しただけで気持つ悪い。巨大ミミズに目玉があるってことだからな。
「その目玉は虹色に輝き、美しいとされている」
「されているって、まさか確認されていない未実装アイテムとかいうんじゃ」
「みじっそうが何のことか知らぬが、実在するものだから安心せい。我が興味なくて見たことがないだけだ」
サンドワームかぁ。
オアシスに居座ってる奴だから、探す手間は省ける。倒したほうがいい奴だし、そのつもりでもあったけど……。
ん?
「お前、もしかしてわざとサンドパールの話を俺にさせたのか?」
「さぁ、なんのことやらのぉ」
こいつ、わざとだ。
「亜種のサンドワームはこれまで主が見て来た奴の数倍の大きさだ」
「うえっ」
「皮膚は毛に覆われ、その毛には麻痺性の毒があるが……まぁ主には関係ないな」
「サソリといい、麻痺好きだな砂漠のモンスターは」
「生きたままじっくり喰うのが好きなのだろう」
聞きたくなかった、それ。
「まぁとにかくデカいからな。主の筒鈍器でなうまくダメージを与え難いかもしれぬ」
「え、無敵テントが通用しないのか……困るな」
「ぶよぶよだしの。打撃は効果が薄い。というかテントでモンスターを殴り飛ばす奴も大概だな」
ぶよぶよとか嫌なワードだなぁ。
けどそうなると、対策を練らなきゃな。
「なにか弱点はないのか?」
「鑑定で実際に見て見ろ。明日、オアシスに行けばよかろう」
そう言うと、ドラゴンはシュラフの上にゴロンとなった。
二人の姉妹のテントに泊まってくれと言われたが、さすがにそれは辞退。
自前のテントで眠ることにした。
ランタンの明かりを消そうとした時、
「お、起きてる?」
この声はアイラか?
「どうした?」
「あ、うん……あの、旅の話……聞きたくて」
「え、旅の?」
ど、どうしよう。この世界を旅なんて、実際はまだし始めたばかりで森と砂漠しかしらない。
おーい、ドラゴーン。
助けを求めるようにシュラフで胡坐をかくドラゴンを見る。
『主、南の森以外の、緑が豊かな地を知っているか? その娘は生まれてから一度も砂漠を出たことがないだろう』
砂漠しかしらない……アイラが聞きたいのは、緑豊かな土地のこと?
「え、えっと。北部の山脈を越えると、草木がいっぱいあってね──」
父方の実家は農家で、結構な田舎にある。田んぼや畑、山や川の風景をアイラに話して聞かせた。
些細な話題にも、彼女は目を輝かせた。
「じ、じゃあ、海は見たことある?」
「あぁ、あるよ」
「そ、それじゃあ……海って本当にしょっぱいの?」
おぉー、海を知らない子あるあるネタだな。
「本当さ。めちゃくちゃしょっぱいよ。もしアイラが海を見る機会があっても、絶対に飲まないように。余計に喉が渇くことになるぞ」
「きっとたくさんの塩が入ってるのね。砂漠では塩なんて、高級品だけど」
そっか。
内陸部だと塩は貴重なんだな。
その後もアイラに「あれは見たか」「これは本当にそうなのか」と尋ねられ、当たり障りのない程度に答えるのが続いた。
夜は冷える。焚火台を出して薪をくべ、火を点けて暖を取る。
アイラは俺の話に耳を傾け、子供のように目を輝かせた。
きっと彼女は、砂漠の外の世界に興味があるのだろう。
長い時間二人で話をしていたが、焚火の火が小さくなってきたところでお開きになった。
その翌日──
アイラの案内でオアシスへと向かう。
「あれよ」
「うえぇぇ……予想以上にデカァ」
「おぉ、立派なサイズだのぉ」
オアシスの池、というのかな? それをぐるりと半周するミミズ改め毛虫がいた。
【サンドワーム・亜種】
サンドワームが突然変異して進化したもの。
皮膚の表面は毛に覆われ、その毛には麻痺性の毒が流れている。
刺されると体が麻痺し、生きたまま喰われることになるだろう。
火が弱点ではあるが、体が大きいため火球魔法では火傷程度のダメージしか
与えられない。
肉はぶよぶよで食べられたものではない。
最後の一行はいらないから!
けど、弱点は火か。
火球魔法がダメなら、それ以上の範囲を一度に燃やせるならどうだ?
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